
部下とのすれ違いは、能力ではなく言葉が原因かもしれない。
※本稿は、西原亮 著『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』(ダイヤモンド社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「もっときれいに資料を修正して」
「なるべく早くやっておいて」
日本人が最も多用し、上司と部下の間に最も深刻な「認識のズレ」を生む言葉。それが、「形容詞」と「副詞」です。
これらの言葉は、自分の頭の中にあるニュアンスを伝えるのに大変便利です。
しかし、部下に指示を出す際、この便利な言葉を使った瞬間に、ズレは確定すると思ってください。「きれい」や「早い」の定義が、他人と一致することはないからです。
具体的に見てみましょう。
■「もっときれいに資料を修正して」
○上司の意図:ミニマリストのように、余計な色を削ぎ落としてシンプルにしてほしい。
○部下の解釈:パステルカラーを使って、もっと華やかに装飾してほしい。
○結果:「全然違う!派手にしろなんて言ってない!」
■「なるべく早くやっておいて」
○上司の意図:今日の15時くらいまでには欲しい(お客様への中間報告があるから)。
○部下の解釈:今週の金曜日の18時まででいいかな(他にもタスクがあるし)。
○結果:「まだできてないのか!遅すぎる!」
このように、形容詞と副詞は「解釈の余地」が無限大であるため、使った瞬間に100%の確率で認識のズレを生んでしまうのです。
では、なぜ上司はリスクのあるあいまいな言葉を使いたがるのでしょうか?
それは、具体的な数字や条件を決めることに「ストレス」を感じているからです。
「金曜の18時まで」と言い切るには、勇気がいります。
「もし無理だったらどうしよう?」「部下を追い詰めないか?」「自分の見積もりが甘かったら?」。
そうした迷いや責任から逃れるために、「なるべく早く」という便利な言葉に逃げ込み、「いつまでにやるべきか」の判断を部下に丸投げしているのです。
しかし、その「一瞬の逃げ」が、あとで何倍ものストレスになって返ってきます(下図)。「ちゃんとやってるかな?」「まだ出てこないな」という不安が、上司の脳内メモリを食い潰し続けるからです。

具体的な言葉にするということは、上司が自分で決断をするということです。決断のコストを上司が先払いすることで、その後の「待つストレス」や「やり直しの手間」はゼロになります。
「形容詞・副詞」を使いそうになったら、すべて具体的な「数字・固有名詞」に翻訳してください。
■上司のための翻訳リスト
×「なるべく早くお願いします」
○「明日の14時までに提出してください」
×「丁寧に対応してください」
○「お客様の話を遮らず、メモを取りながら聞いてください」
×「いい感じにまとめておいて」
○「A4・1枚で、箇条書きでまとめてください」
×「随時報告してください」
○「毎朝10時と、夕方17時にチャットをください」
「形容詞」と「副詞」を捨てること。それは、部下への指示をクリアにし、お互いのストレスをなくすための、上司としての作法であり「責任」なのです。
更新:08月10日 00:05