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部下に指示が伝わらない原因は? 「相手が正しく理解できる」言葉の選び方

2025年05月23日 公開

グロービス,嶋田毅(グロービス経営大学院教員)

相手に正しく理解できる伝え方

「言いたいことを言葉にする」のは容易ではありません。多くのリーダーが以下のような課題を抱えています。

・指示があいまい:わかりづらいから人が思ったように動かない
・考えがまとまらない:要領を得ないから相手に伝わらない
・話の内容がフワっとしている:説得力がないから相手に刺さらない

このような課題を解決するために、数々のビジネスリーダーを育成してきたグロービスが「言いたいことを、瞬時に伝わる言葉に変換する25のトレーニング」を紹介します。本稿は「相手が正しく理解できるように伝える」レッスンです。

※本稿は、グロービス,嶋田毅著『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

相手が「何をすればいいのか」理解できるような言葉を選ぶ

具体的表現と抽象的表現

ビジネスにおける問題解決は、多くの人を巻き込まなければならないシーンが多いものです。必然的に、その問題解決案を関係者が具体的にイメージできるよう言語化することが大切になるシーンが多々生じます。 

たとえばビッグワード(何かを言っているようで、結局は何も言っていないのと同じ言葉)を用いていては、相手が何をしたらいいかわからないことになってしまいます。「見直しをして」などは何も言っていないのとほぼ同じですし、「広告のクリエイティブを変更して」も、自由度が高すぎて何をしていいのかがわかりません。

相手の能力が極めて高い場合などは、多少アバウトに伝えても十分というケースもあるかもしれませんが、そうした場面は必ずしも多くありません。 

クリエイティブ変更のケースであれば、たとえば、「もっと人間の写真とキャッチコピーのサイズを大きくして、シンプルに伝えよう」、あるいは「顧客に訴求するよう、もっと実績の数字を前面に打ち出そう」などと指示すれば、相手の誤解も減ります。図2-3の比較を見れば、具体的な表現のメリットは一目瞭然でしょう。

具体的に言語化することのメリットはまだあります。 

まず、ここまで示したように関係者の間で共通の認識が共有されることで、「こんなつもりじゃなかったのに」といった手戻りを減らすことができます。ビジネスはスピードとの戦いですから、この点は非常に大切です。

また、しっかり言語化することは建設的な議論、ひいては解決策につながります。問題解決においては集合知、すなわち多くの人間の知恵によってより良い解決策が生まれる可能性が高まります。そのためにも、自身の考える解決策の案を具体的に示すことは有効なのです。

具体的に言語化を行う際の重要ポイントは、まずは「正確・明瞭」「相手に伝わる」です。そのうえで、問題解決という文脈に照らして、以下の点も注意するとより良い言語化につながります。

・冗長性がない 
・実現可能であることがイメージしやすい
・相手に余計なことを考えさせるような表現になっていない 
・可能な限りステークホルダー全員にとって好ましい解決策になっている

 

演習問題1

■設定

あなたはある企業の秘書室の責任者。現在は午前10時。いくつか予定外のことが起きた結果、常務のスケジュールを変更する必要が生じました。外出中の常務にその変更内容をショートメールで伝えないといけません。どのように伝えればいいでしょうか。

 

[NG例]
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Aさんとの面談の予定ですが、緊急のトラブル対応が生じたとのことで、今日の14時以降でないとダメなようです。
また、Bさんは体調を崩されたらしく、打ち合わせを後日に変更してほしいとのご連絡がありました。
さらに、C社さんとの商談は、先方の社長もご同席されたいとのことです。 
D社さんとの打ち合わせも、できれば15時以降に変更したいと連絡がありました。
そこで、私のほうで日程を調整したいのですがよろしいでしょうか。
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■回答例・解説

忙しい常務にこれをいちいち報告して指示を仰ぐのは冗長ですし、時間の無駄です。 
まだ慣れていないなどの事情がないのであれば、あなたの判断で最適なスケジュールを組んで常務に伝えるほうがいいでしょう。次は変更例です。

 

[OK例]
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本日の予定ですが、止むを得ない事情により、いくつか変更する必要が生じました。
Aさんとの面談は15時から、D社さんとの商談は16時からとさせていただきます。Bさんは体調を崩されたということで、本日はキャンセルとなります。
詳しくはスケジューラーでご確認ください。
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このくらいであれば、常務も今日の予定が頭にすぐ入るでしょう。C社の社長同席はスケジュール変更とは関係ないのでここでは割愛しました。伝える必要があると判断したなら、別途ショートメールで伝えれば十分でしょう。

 

演習問題2

■設定

あなたはある企業の部長。部下のE課長とMBO(目標管理)の面談をすることになっています。あなたの会社ではいくつかの成果目標のほかに、1つ能力開発目標を盛り込むことになっています。 

E課長は部下の動機づけが必ずしもうまくないとあなたは感じ、Eさんの部下からもそのように聞いています。
そこで、Eさんの能力開発目標に動機づけのスキルを上げることを盛り込み、そのうえで、具体的な方策のヒントをEさんに示したいと考えています。

 

■回答例・解説
あまり効果的ではない例から見てみましょう。

 

[NG例]
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Eさんもわかっていると思うけれど、Eさんの大きな課題は部下の動機づけだ。
そこで、その能力を上げるために、もっと部下とのコミュニケーションの時間を増やして彼らの状況を正しく把握するように努めてくれ。
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言っていることは正論ではあるのですが、「彼らの状況を正しく把握する」がアバウトで、何をコミュニケーションしていいかわからない可能性があります。 

ここはもう少し詳細に解決策の案を示すほうが、Eさんもイメージが湧きやすいでしょうし、より生産的な議論につながるでしょう。「自分にもできる」と思ってもらえることも大事です。それを意識し、もう少し嚙み砕いて言語化してみました。

 

[OK例]
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Eさんもわかっていると思うけれど、Eさんの大きな課題は部下の動機づけだ。そこで、その能力を上げるために、以下の3つのポイントを意識して彼らとコミュニケーションしてほしい。
 
第一に、彼らが何にやりがいを感じているか確認してほしい。どんな時に達成感を感じるかとか、何をやっている時が嬉しいかとか、まずはそれを聞いてほしい。その際、ワークライフバランスなども視野に入れるといいな。
 
第二に、現状の不満を確認してほしい。「不満を教えてほしい」と言っても彼らも言いづらいだろうから、「何か希望はあるかな」とか「自分にこうしてほしいと期待することはあるかな」などと聞くといいと思う。オープンに話ができる環境自体が部下のモチベーションにも良い影響を与える。

もう一つは、きめ細かなフィードバックだ。その都度でもいいし、定期的に1on1ミーティングなどを設けてもいいと思う。
成果が出たら褒めてほしいし、逆に改善点などもしっかり伝えることが大切だ。部下のためになるからそれをしているという意識を持って、それを部下にも伝えてほしい。

それがEさんに対する信頼にもつながる。 
慣れないうちは大変かもしれないけれど、これは意識すれば必ずできることだ。私もサポートするよ。
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世の中にはさまざまな動機づけの理論があります。それを学べばより包括的な案が出せるかもしれませんが、まずはこれくらい具体的に実行してもらいたい内容を伝えれば、E課長のスキルは伸びるでしょう。

 

■コツ・注意点 

解決策は、演習問題2の例のように、具体的な例やエビデンスを示したり、その案がなぜ効くのか、あるいはどのような効果が期待できるのかを示すことができれば、相手の納得感を高めることができます。

また、状況にもよりますが、さらに具体的な行動計画やステップなども同時に示せれば、より理解度は高まります。ただし、あまり先走りしすぎると修正が必要な時に大変になるので、適宜関係者と議論しながら一緒に作り上げるというアプローチを併用するとよいでしょう。

 

【グロービス】
グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。

「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。
さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

企業サイト:
グロービス:https://globis.co.jp/
グロービス経営大学院:https://mba.globis.ac.jp/

 

プロフィール

グロービス

グロービスは1992年の設立以来、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業展開を進めてきました。

「ヒト」の面では、学校法人としての「グロービス経営大学院」ならびに、株式会社立のスクール「グロービス・エグゼクティブ・スクール」「グロービス・マネジメント・スクール」、企業内研修事業を行うグロービス・コーポレート・エデュケーションとeラーニングやオンラインクラスのほか定額制動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォーム、「カネ」の面では、ベンチャー企業への投資・育成を行うベンチャー・キャピタル「グロービス・キャピタル・パートナーズ」、「チエ」の面では、出版事業ならびにオウンドメディア「GLOBIS 学び放題×知見録」により、これを推進しています。

さらに社会に対する創造と変革を促進するため、一般社団法人G1によるカンファレンス運営、一般財団法人KIBOW による震災復興支援および社会的インパクト投資を展開しています。

企業サイト:
グロービス:https://globis.co.jp/
グロービス経営大学院:https://mba.globis.ac.jp/

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