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医師が語る、40代からの健康診断で必ずチェックすべき「4つの数値」

2024年07月04日 公開

森勇磨(産業医/内科医)

健康診断の要注意項目

理想の肉体への「改造」に挑むなら、まずは自分の身体の状態を把握しておきたいもの。年に一度の健康診断はその絶好の機会だ。ところが、忙しさに紛れて「健診を受けっぱなし」のビジネスパーソンは少なくない。『THE21』2024年8月号では、要注意項目を放置して後悔しないために、「せめてここだけは」というポイントを、産業医の森勇磨氏に教えてもらった。(取材・構成:林加愛)

※本稿は、『THE21』2024年8月号特集「50代からの『肉体改造』入門」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

健診データは、せめて 「ここだけ」見よう

健診データで必ずチェックすべき4項目

40~50代ともなると、年1回の健康診断の結果にいくつか要注意ポイントが出てくる方がほとんどでしょう。ところが残念なことに、多くの方がそれを放置しています。その結果大病に至ったケースを、私は数多く見てきました。 そんな事態を避けるには、皆さんが予防の意識を高めなくてはいけません。

では、それを阻んでいるものは一体何でしょうか。

原因の一つは、健診データの「情報量の多さ」だと考えられます。多忙な方ほど、「細かいデータをじっくり見る時間はない」「数値が覚えられない」と感じる傾向があるようです。

産業医の立場から言えば、健診データはすべて重要で、丹念に見ていただきたいのが本音です。しかし、皆さんのハードルを下げ、自分の健康状態を最低限把握していただくためにも、「せめてここだけは」という基本ポイントをお伝えしましょう。

必ずチェックしていただきたいのは、①血圧②コレステロール値③血糖値④尿酸値です。

①~③は、放置すると血管を詰まらせる危険が高まります。血圧が高いと血管壁が傷み、血糖値が高ければ、やはり糖分で血管壁が傷つきます。悪玉コレステロール値が高いと「プラーク」という脂肪の塊が血管に付着して血管が狭くなります。そうした結果、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高くなるのです。

④の尿酸値は、痛風および尿路結石リスクの指標です。どちらも①~③ほど深刻な病気ではありませんが、尿酸値の悪化は、身体の各所で尿酸が蓄積しているサインでもあります。痛風や尿路結石になると激痛を伴いますし、結晶が腎臓に付着する「痛風腎」になると、慢性腎臓病や腎不全を引き起こす可能性があります。

また、尿酸値が高いほど高血圧や糖尿病リスクが高まるというデータも。尿酸が活性酸素を生み出すことで、動脈硬化を招くからだと考えられます。

 

血圧は「上」、 脂質は「悪玉」に注目

次は、「細かくて覚えられない」と言われがちな数値の目安について。

①の血圧に関しては「上140以下、下90以下」が基準値ですが、2つ数字があるのさえ煩雑に感じる方は、「上が140を超えたら危険」とだけ覚えてください。

②の脂質関連は、総コレステロール・中性脂肪・HDL(善玉)コレステロール・LDL(悪玉)コレステロールのすべてが重要な情報ですが、あえて一つに絞るならLDLコレステロールです。140以上は要警戒、180を超えると薬が必要、200を超えると本当に危険です。

③の血糖値は「60~110」が基準値。ただし、健診でわかるのは、あくまで「測った瞬間」の値です。 より正確に糖尿病リスクを反映するのは、「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」という指標です。

これは1~2カ月間の血糖値の平均値で、「5.7」以上なら糖尿病予備軍、「6.5」以上なら糖尿病とされます。 検査機関によってはHbA1cが検査メニューに入っていないこともありますが、自宅用の「採血キット」を使えば、個人レベルでも計測できます。

④の尿酸値はシンプルに、「7を超えたら危険」と覚えておきましょう。前述の通り、痛風のみならず、腎疾患や生活習慣病のリスクが上がっている印なので要注意です。

 

8000歩までは、歩けば 歩くほど寿命が延びる

数値に不安要素があった場合、共通の対策は肥満の解消、つまり食事と運動が二本柱です。ご自身の食生活と運動量の「大まかな現状把握」をしましょう。

運動に関しては、「身体活動レベル」に着目。これは職種によって個人差が大きく出ます。「デスクワーク」「営業の外回りや家事など立ち仕事も含む仕事」「立ち通しの現場仕事」のいずれに該当するかが、一つの目安です。後者になるほど、仕事中の運動量は増えます。

1日の歩数も確認しましょう。デスクワークの方には2000歩以下の方も多く、明らかに運動不足。アメリカで1万5000人の女性を対象にした研究によると、約8000歩までは、歩けば歩くほど寿命が延びたそうです。ですから、8000歩を目標に運動量を増やすのが得策です。

とはいえ、ジョギングなど新しいことを急に始めると、続かない傾向があります。無理なく習慣化するなら、いまの生活の延長線上で考えるのがコツ。通勤時にエスカレーターを使わない、電車やバスをひと駅前で降りて歩く、などの工夫をしましょう。

 

食生活改善の鍵は 「たんぱく質」にあり

4つの数値の改善策は食事と運動

食習慣に関しては、多くの方が「質」の話=「何を食べると良いか悪いか」のみに着目し、「量」が盲点になりがちです。つまり、食べ過ぎている方が多いのです。

野菜であれ何であれ、摂取量が多すぎれば太りますから、腹八分を心がけるのが基本。そのためには、「ゆっくりよく噛んで食べる」「無理に完食しようとしない」習慣が有効です。 そのうえで、質の調整を。

生活習慣病予防には、塩分・脂質・糖質を控えるべきであることはすでにご存じだと思います。尿酸値が高い方は、ビールやレバー、魚の干物などに含まれる「プリン体」の摂取を控えましょう。

逆に、「足す」べきものもあります。たんぱく質は体内組織、とりわけ筋肉の原料になります。筋肉量の落ちてくる40代以降、意識的に増やすべき栄養素です。

必要な摂取量は、体重と、身体活動レベルが目安になります。デスクワークの方なら体重×1g。つまり50kgなら1日につき50gが必要です(立ち仕事もあるなら×1.3、立ち詰めなら×1.6で計算しましょう)。

たんぱく質というと肉が連想されがちですが、近年、植物性たんぱく質の重要性が注目されています。動物性たんぱく質の摂取量が多いと糖尿病リスクが上がるのに対し、植物性なら下がるというデータも。動物性と植物性を「1:1」にするのが、理想のバランスです。

動物性たんぱく質は、牛肉・豚肉よりも鶏肉に多く含まれます。魚ならさらにベター。オメガ3脂肪酸が含まれ、心臓病発症率を下げることもわかっています。 摂りやすさで言えば、乳製品もお勧めです。忙しい朝のメニューにチーズや牛乳、ヨーグルトなどを足すだけで、摂取量を増やせます。

植物性では、豆腐や納豆などの大豆系食品が高たんぱく食品の代表格です。意外なところでは、アボカド、エンドウ豆、アスパラガス、芽キャベツなどの野菜もたんぱく質が豊富です。 もちろん動物性より含有量は落ちますが、その上で「1:1」を意識すると、必然的に大豆系や野菜を多く摂ることになります。つまり、自然にバランスの整った、ヘルシーな食事になるのです。

忙しい方ほど、この法則を意識して、長く健康に働ける身体を整えましょう。

 

著者紹介

森勇磨(もり・ゆうま)

産業医/内科医 MEDU(株)代表

神戸大学医学部卒業。藤田医科大学病院救命救急病棟勤務、(株)リコーの専属産業医を経てPreventive Room(株)を設立、予防医学の普及を目指す。正しい医療情報を発信すべく、2020年よりYouTubeチャンネル「予防医学ch/医師監修 ウチカラクリニック」を運営。現在、チャンネル登録者数は77万人超。主な著書に『40歳からの予防医学』(ダイヤモンド社)がある。

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