
「任せたほうがいい」と分かっていても、つい口を出してしまう―
※本稿は、西原亮 著『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』(ダイヤモンド社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「任せるより、自分でやった方が早い」
「任せたのに、結局クオリティが低くて私が巻き取ってしまった」
初めて部下を持ったとき、誰もがこの壁にぶつかります。
私自身、コンサルタント時代も、家業を継いだ当初も、「任せる」と言いながら、部下のやり方が気になって口を出し、最後には「もういい、貸して!」と仕事を奪い取ってしまった経験がたくさんあります。
その結果、部下は「どうせまた仕事を奪われる」「言われた通りにやればいいや」と思考停止になり、私はいつまでもプレイヤー業務から抜け出せませんでした。
まさに「負のループ」にはまってしまったのです。
なぜ、多くの上司は部下に仕事を任せられないのでしょうか?
部下の能力不足?いいえ、違います。
上司である私たちが、「任せる技術(設計図)」を持っていないからです。そこで、部下に仕事を任せ、チームを回すために不可欠な「5つの技術」をお伝えします。
「お客様窓口のクレーム対応、任せたよ」
これは任せているのではなく、「丸投げ」です。任せる仕事の範囲があいまいになると、部下は独自の判断で動きます。それが上司の想定とズレるので「なんでそんな対応をしたんだ!」と感じてしまうのです。
任せるときは、「部下が決めていい範囲」と「相談すべき範囲」を明確に線引きしなければなりません。
×あいまいな任せ方:「クレーム対応は任せる」
○範囲を限定する:「配送ミスや遅延に関するお詫びは、君の判断で進めていい。ただし、『金銭的な補償』や『商品品質』に関わるクレームが来たら、自分で判断せずに必ず私に相談してくれ」
こうすることで、部下は「ここまでは自分でやっていいんだ」と安心してアクセルを踏むことができます。
新しい業務を任せるとき、上司はつい「最短期間」での成果を求めてしまいます。
例えば、「SNSでの集客を任せる。3ヶ月でフォロワー1万人を目指してくれ」といった具合です。
しかし、部下に短期的な成果を求めると、すぐに上司には焦りが生まれ、少しでも数字が悪いと「やっぱり任せられない」と介入する原因になります。
育成とは、時間を投資することです。
「最初の半年は試行錯誤の期間でいい。数字は出なくていいから、勝ちパターンを見つけてくれ」と、「待てる期間」を提示してください。期間に余裕があれば、上司も「失敗も経験のうち」と腹をくくることができ、部下の仕事を奪う頻度が激減します。
任せた仕事に関しては、「強制的な相談タイム(1on1)」をスケジュールに組み込んでください。上司の「何かあったら言って」は機能しません。部下は「こんなことで上司に時間を取らせていいのか」と遠慮するからです。
例えば、「毎週金曜の13時から15分間」。この時間は、進捗報告ではなく、「困りごとの相談」だけに使います。さらに、事前に「今週の判断に迷ったこと」「解決したい悩み」を1行でもいいのでドキュメントに書いてもらいます。
「相談のアポを取る」というハードルをなくし、定期的に軌道修正を行うことで、大きな事故を防ぎながら部下に任せ続けることができます。
部下が仕事を任されるのを怖がるのは、自分の仕事の価値を「成功か失敗か」だけで捉えているからです。
しかし、上司であるあなたが真っ先に伝えるべき、部下の仕事の最大の価値は別にあります。
それは、「上司の時間を空けること」です。
多くの上司はこの事実を言語化していません。そのため部下は「自分が成果を出さなきゃ」とプレッシャーに潰されそうになります。
そうならないためにも、部下にはこう伝えてください。
「この仕事を任せる一番の目的は、私の時間を空けて、私が未来の仕事(重要案件)に取り組めるようにすることだ。だから、たとえ完璧な成果じゃなくても、君が動いてくれているだけで、私にとってはすでに価値があるんだよ」
このように部下の仕事の価値を言語化するだけで、部下のプレッシャーは「貢献感」に変わります。
「自分でやった方が早い」と仕事を巻き取るのは、部下が提供しようとしている「時間の価値」を否定する行為です。まずは彼らがつくり出してくれた時間に感謝し、その価値を言葉にして伝えてあげてください。
任せる技術として最も重要なのは、部下に「最後までやり切った(完了した)」という経験を積ませることです。
どんなに小さなタスクでも、自分の責任でゴールテープを切らせる。その積み重ねだけが、次の大きな
仕事を任せられる自信をつくります。
もし部下が溺れそうになっていたら、仕事を小さな範囲に分解して渡し、自力で泳ぎ切らせてください
(下図)。
仕事を「奪う」のではなく「分解」する。それが、部下を潰さずに仕事を任せる上司の行動です。

更新:08月14日 00:05