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「お客様を大事に」って具体的にはどういうこと? 曖昧な指示を明確にする方法

木暮太一(一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事)

「仕事ができる人の頭のなか」

仕事ができる人の言葉の使い方には、どのような特徴があるのだろうか?言語化力を高めるためにはどうすればよいのだろうか?木暮太一氏の著書『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)より解説する。

※本稿は、木暮太一著『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

たしかに、仕事ができる人は「言語化」が得意そう

拙著『すごい言語化』『リーダーの言語化』(ともにダイヤモンド社)はおかげさまでベストセラーとなり、より多くの方が「言語化」に注目してくださるきっかけとなりました。これまで言葉で表現してこなかったものを言葉にしよう、言葉で伝えなきゃいけない、という意識が強まっています。

そして、仕事ができる人は、言語化ができるイメージがあります。弁が立つし、表現も秀逸だし、例えたり表現したりするのがうまいです。それを見て「自分もあんな気の利いたことが言えたらなぁ」と羨ましく感じるかもしれません。

ですが、その感覚は忘れていただいたほうがいいです。というのは、弁が立っても、表現がうまくても、仕事ができる人にはならないからです。

仕事中に「うまいこと」を言う必要はありません。会議中にキャッチコピーを作る必要もほとんどありません。また、自分の感情を言葉にするにしても、それは感想文を書くためではありません。

言語化をする目的は、「相手の負荷を減らすため」です。

ぼくは、言語化を「明確化」と定義しています。言葉にすればいいわけではなく、うまい表現をすればいいわけでもありません。自分が考えていること、伝えたいことが明確にできていれば「言語化できた」、そうでなければ「まだ言語化できていない」です。

たとえば、「いい感じにやっておいて」という指示は言葉にはなっていますが内容がまったくわかりません。なので「まだ言語化されていない状態」です。言語化されていないので、「いい感じ」にするために何をすればいいかわかりませんし、成果物を「いい感じ」にすることもできません。

一方、「今回の資料は取引先企業に1回の提案で購入判断をしてもらうために作ります。大事なのは他社の成功事例だから、3社分の事例を入れて作ってください」と伝えれば、自分が思っている「いい感じ」を明確に示すことができます。

まず、ぼくらは自分たちが何を求め、何をしなければいけないかを明確に言葉にする必要があります。そしてさらに、仕事ができる人は自分の頭の中だけでなく、相手が考えていること・言いたいことを言
語化しています。

 

まず自分が使っている言葉に目を向ける

相手の頭のなかを言語化するために、まずは自分が言葉を正確に使う習慣をつけなければいけません。正確に言葉を使うと言っても、辞書的な意味を正確に把握しておけということではありません。自分の意図が相手に正確に伝わる言葉を使わなければいけないということです。

たとえば、形容詞や副詞は不明確で人によって解釈が異なります。「多め・少なめ」「早く・遅く」などは人によって程度が違います。そのため、できるだけ数字で表現しようと言われますね。「早めの対処が必要」ではなく、「○月○日までに」と数字に置き換えたほうが明確になります。

あいまいなのは形容詞や副詞だけではありません。ぼくらが何気なく使っている日本語にもこのような言葉はたくさんあります。たとえば、「ご配慮ください」「顧客とすり合わせをしてください」とは、何を指しているでしょうか?

おそらく相手はこちらの意図を正確につかむことはできないでしょう。そして意図していることが伝わらなければ「伝えた」ことになりません。

また、あいまいな言葉を使っていると、じつは自分が何も捉えていないことに気づけなくなってしまいます。「社会貢献」「相手の立場に立つ」という言葉がよく使われています。

でも、「社会貢献をする」をよくよく考えてみると、何をすることを指しているのかわかりません。さらに「相手の立場に立って顧客とすり合わせて社会貢献しよう」など、あいまいな言葉が連続すると、もはや何もわからなくなります。

しかし、これらの言葉は特に違和感なく多用されています。何も具体的な内容を指さない言葉ですが、自分でもそれに気づかないことがほとんどです。気づけないのは「言葉を正確に使っていないから」です。同時に、自分が使う言葉を自分で理解しないまま会話をしていると、相手が発したあいまいな言葉にも気づけなくなります。

「慎重に状況を見極めて、適切に対処いたします」
「課題を深掘りして、来期の計画に落とし込みます」

というフレーズでさえも「了解しました」と返事をしてしまうようになります。これらの文章は何も内容がありません。でも、それに気づけなくなってしまうのです。気づけないから質問も確認もできません。そしてあとから、「あれ......、誰が何をすればいいんだろう......?」となってしまうのです。

この状態を避けるために、まずは自分がどういう意味でその言葉を使っているのか、自分で明確に捉えておかなければいけません。そして、しっかり自分の意図を把握したうえで、それが伝わる言葉を選ぶ必要があるわけです。

「お客様を大事にしよう」と言うときは、あなたは何を指しているのか?
「組織風土を変えなければいけない」は、あなたは何を指し、何を伝えたいのか?

それを意識して考えるようにしましょう。とはいえ、最初は難しいです。ぼくらは漠然とした言葉を使うことに慣れてしまっているので、改めて「それってどういう意味?」と聞かれるとすぐに答えられません。

自分が指している内容を自分で理解するためには、まず「たとえば」で具体例を話すことをお勧めします。抽象的な言葉はどうしても漠然としてしまうので、「お客様を大事にしよう」ではなく、「たとえば、こういう状況では、お客様にこのように声掛けをしよう」などと伝えます。そうすることで、自分が考えていることが相手に伝わりやすくなります。

プロフィール

木暮太一(こぐれ・たいち)

言語化コンサルタント・作家・一般社団法人教育コミュニケーション協会 代表理事

14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。『リーダーの言語化』『すごい言語化』(ともにダイヤモンド社)ほか、著書68冊、累計195万部。

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