2017年07月27日 公開
2017年08月16日 更新
――15年近くかけて胸を張れる組織になったNPの、今後の展望を教えてください。
柴田 サービスについては、ずっと溜めてきた水がようやくあふれ出したという感覚です。「NP後払い」をスタートしてから、累計ユーザー数1億人、導入店舗2万件超えに至るまでに蓄積された膨大なデータ、積み上げてきたお客様からの信頼、そして磨いてきたオペレーションノウハウ。これらを溜めて溜めて、あふれた水から「atone」が生まれたように、これからも新しいサービスやシステムがどんどん湧いてくるでしょう。
他社にはない蓄積があって、強いサービスがあって、いい社員がいる。こうなると、もう「自然に伸びていくな」という感じがあります。事業をどう展開していくかという大きなところから、1つひとつのサービスの細かい作りまで、やることは無限にありますが、今の組織ならば面白がってやれる自信があります。今後については、楽しみでしかたないという気持ちですね。
――では、集まった社員たちにとってはどんな会社でありたいとお考えですか?
柴田 実は、当社の理念「つぎのアタリマエをつくる」の中には、事業面だけでなく、組織の在り方のイメージも含まれています。NPは「これまでとは違う会社の仕組み」を実践し、それを世の中に提案して、アタリマエにしていきたいと考えているのです。
これまでとは違う、新しい会社の条件は、「成果を挙げること」「人がダイナミックに成長できること」そして「みんなが幸せであること」の3つです。これを本気で追求すると、今までの企業とはまったく違った仕組みになっていくと思っています。
――具体的にどんな新しい仕組みが考えられるのでしょうか。
柴田 たとえばうちの社員は、みんながみんな何かしら、仕事とは別に「個人的にこういうことをやってみたい」という意志、つまり「WILL」を持っています。社会課題を解決したいという思いの強い社員がたくさんいるのです。私は今後、そんな1人ひとりの「WILL」を、NPにいながら実現させてもらおうと考えています。
会社はビジネスで儲かることだけやっていればいいとは、私は思いません。いっそ、会社の中にNPOをやっている人がいたっていいと思っているのです。仕事は仕事で回せていれば、あとは社員1人ひとりが独自のリーダーシップを伸ばし、発揮できるようサポートする。そうすれば、社会を変えていくような動きをより豊富に起こしていけるでしょう。
そのためには、給与もベーシックインカムにして、ビジネス半分、NPO半分の人がいてもきちんと評価できるようにしたらどうだろうか、といったことも考えています。
――斬新ですが、本気度が伝わってきます。他にもユニークな施策などありますか?
柴田 当社には「ワーキンググループ」というものがあって、やりたい人がやりたいことをやれる仕組みになっています。採用や風土構築など、組織運営の根幹に関わるイベントも、毎回、挙手制でワーキンググループを作ってやっているのです。
こういったものを全部、社長とか人事がやってしまうと、社員は組織への愛着が湧かないし、面白くありません。だから、なるべく多くの社員が組織のさまざまな部分に触れられるよう、ワーキンググループ制度があるのです。
おそらく今、既に社員の半数くらいが採用を経験しているのではないかと思います。私も最終面接はしますが、前段階を見る社員から「あの人は通してくださいね」と指令が飛んできたりします。
――ベンチャー的な社風の組織に、ベンチャー気質の社員が多いということは、将来的にはそれぞれがNPで学び、独立して巣立っていくイメージでしょうか?
柴田 当社では、部署異動の希望も、本当に特別な事情を除いて100%通ります。ビジョンシートというのを半年に一度全員が書き、全社公開します。「自分はこういうキャリアビジョンを持っているので、そのために次はこの部署に異動したい」というのを開示するのです。社長の私は、それを実現しなければなりません。人を動かす動機として「WILL」に勝るものがないことは巷で言われているとおりですが、その前に、当社の社員は、強制したら絶対に動いてくれませんから……(笑)。
その代わり、当社の社員は、納得感があるときや「WILL」に沿っているときの動きは随一です。ベクトルを一にしながらそれぞれが強い意志を持つこの社員たちなら、まだまだたくさんの「日本初」「前人未到」「不可能とされていたこと」を実現できるだろうと思っています。
自走する組織を作りたいなら、自走できるだけの仕組みを整えなければいけません。そんな会社の仕組みを実現できれば、自立心が強く生意気なうちの社員たちも(笑)、案外辞めずにうちに居続けるのかなという気がしています。
《写真撮影:中條未来》
更新:11月22日 00:05