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血圧を下げるには減塩だけでは不十分? 医師が語る「カリウム摂取」の重要性

渡辺尚彦(高血圧専門医)

高血圧

高血圧対策といえば、多くの人がまず「減塩」を思い浮かべるでしょう。実際、日本でも減塩を意識している人は少なくありません。しかし、それでも血圧が思うように下がらない場合、別のアプローチが必要になることがあります。

高血圧専門医の渡辺尚彦氏は、その解決策のひとつとして「カリウムの摂取」に注目すべきだと語ります。なぜカリウムが血圧に関係するのでしょうか。書籍『血圧を下げるのに減塩はいらない! ナトカリ比であなたの血圧は下がる』より、その理由を解説します。

※腎機能がステージG3b以上に低下している方はカリウムを体外に排出しにくく、高カリウム血症など重篤なリスクがあるため、摂取は自己判断せず必ず医師の指示に従ってください。

※本稿は、渡辺尚彦著『血圧を下げるのに減塩はいらない! ナトカリ比であなたの血圧は下がる』(アスコム)より一部抜粋・編集したものです。

 

血圧を下げる方法は「減塩」だけでは不十分

血圧を下げるための方法といえば、多くの人はまず「減塩」を思い浮かべると思います。

たしかに、塩分の摂取量を減らすことは、血圧を下げるための大きな柱であり、生活習慣病対策の基本中の基本です。

実際に、日本において高血圧が問題視されるようになった1960年代から今に至るまで、厚生省は減塩運動を強く推し進めてきました。

現在でも、厚生労働省は「成人男性が1日あたり塩分7.5g未満、成人女性が塩分6.5g未満」を目標に設定した啓発活動を行っています。

ちなみに、日本血圧学会では「1日塩分6g未満」、WHO(世界保健機関)では「1日の塩分摂取量は5g未満」を推奨しています。

目安量に多少はあれども、血圧をコントロールして健康を保つために塩のコントロールが重要なことは、すでに社会の常識として定着しています。

しかし、2023年時点で高血圧患者は国内に約610万人、実際の有症者数は4300万人もいると推計されています。

減塩の重要性は広く知られているにもかかわらず、日本の成人の2人に1人が潜在的に高血圧リスクを抱えているのです。

なぜ、これほど多くの人々が高血圧のリスクを抱え続けているのでしょうか。

その理由のひとつとして考えられるのが、「減塩だけではじゅうぶんではない」という現実です。

血圧を下げるために減塩は重要ですが、それと同じくらい大切な要素があります。しかし、その重要性はまだ一般には認知されていません。

では、その重要な要素とはいったいなんでしょうか?

それこそが「カリウム」です。

 

カリウムが高血圧対策の有効打となる決定的な理由

カリウムは、ナトリウムやカルシウムなどと同様に、私たちの体にとって欠かせないミネラルのひとつです。

その役割は非常に多岐にわたり、細胞内の水分量や血液のバランスを調整することから始まり、神経が情報を伝えるための電気信号のやり取り、心臓をはじめとする筋肉の収縮、さらにはエネルギー代謝に至るまで、私たちの生活のあらゆる場面で重要なはたらきをしています。

カリウムがじゅうぶんに体内に存在することは、健康な心臓のリズムを守り、筋肉の動きをスムーズにし、日常生活での疲労感を防ぐことにつながります。

カリウムは、ほぼすべての食べ物に含まれているのですが、とくに野菜や果物に豊富に含まれています。

ほうれん草、バナナ、じゃがいも、りんご、みかんなどは、手軽に摂取できるカリウム源として知られています。また、豆類や魚、肉類、乳製品にもカリウムは多く含まれており、日々の食事から自然に摂取することが可能です。

なぜ、血圧を下げるのにカリウムが重要かというと、食塩の主成分であるナトリウムを体外に排出するはたらきがあるからです。

ナトリウムは、体内の水分量や血圧に影響を与えるため、過剰に摂取すると血圧が上昇しやすくなります。

しかし、カリウムをじゅうぶんに摂っていれば、体はナトリウムを尿として排出しやすくなり、血圧の安定につながるのです。

つまり、たとえ塩分を多く含む料理を食べてしまったとしても、同時にカリウムをしっかり摂取していれば、血圧への悪影響をある程度防ぐことができるのです。

ただし、腎機能が低下している人については少し話が変わってきます。

具体的には、腎機能がステージg3b以上に進行している人は、不要なカリウムをうまく体外に排出することができません。そのため、血液中のカリウム濃度が上がってしまい、最悪の場合には高カリウム血症を起こしてしまうおそれがあるのです。

高カリウム血症になると、吐き気や手足のしびれ、脱力感、不整脈といった体の不調があらわれるほか、最終的には心不全などの重篤な病気も誘発します。

すでにかかりつけの医師等から注意を受けているかもしれませんが、腎機能が低下している人はカリウムの摂取を独断でおこなわず、くれぐれも医師の指示を仰ぐようにしてください。

カリウムの血圧への影響は、かなり昔から研究者の間で注目されてきました。

しかし、大規模かつ国際的なエビデンスとして示されたのは、1980年代に行われた共同研究「INTERSALT(インターソルト)研究」によってです。

この研究では、世界52か国、1万人を超える人々を対象に食事や血圧を調査し、ナトリウム摂取量だけでなく、ナトリウムとカリウムの比率が血圧にどのように影響するかを分析しました。

その結果、「ナトリウムの摂取量よりも、ナトリウムとカリウムの比率が血圧に強く関連している」という事実があきらかになったのです。

高血圧の原因は単に塩分の摂りすぎだけではなく、カリウムの摂取不足も大きな要因としてかかわっているのです。こうした考え方を基に広まったのが"ナトカリ比"という概念です。

 

プロフィール

渡辺尚彦(わたなべ・よしひこ)

医学博士、高血圧専門医、医学博士

日本歯科大学生命歯学部内科客員教授・同大学病院内科臨床教授、前東京女子医科大学東医療センター内科教授。専門は高血圧を中心とした循環器病。
1952年、千葉県生まれ。1978年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業、1984年、同大学院博士課程修了。1995年、ミネソタ大学時間生物学研究所客員助教授として渡米。1987年8月から連続携帯型血圧計を装置し、以来、365日24時間血圧を測定。現在も引き続き連続装着記録更新中。高血圧改善のための生活上のポイントを「渡辺式血圧を低下10カ条」にまとめ、「渡辺式血圧を低下音頭」を作詞作曲するなど、楽しく、わかりやすい指導には定評がある。『血圧を下げる最強の方法』『ズボラでもみるみる下がる 測るだけ血圧手帳』(アスコム)など著書多数。

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