2017年07月27日 公開
2017年08月16日 更新
2000年の立ち上げ以来、「つぎのアタリマエをつくる」という目標を掲げ、実現不可能と言われていた後払い決済ソリューション「NP後払い」を提供してきたネットプロテクションズ代表、柴田紳氏。今や年間流通総額は1,400億円にのぼり、利用金額・ユーザー数ともに右肩上がりを続けている。その驚異的な実行力と成長ペースに、さぞかしIT企業然としたクールな企業、CEOなのだろうと思いきや、取材してみると雰囲気は予想外。日本初のビジネスモデルの実現過程はもちろん、その組織創りのこだわりまで、斬新で快活な“ネットプロテクションズ流”を聞かせていただいた。
――まずは日本初の後払い決済サービス「NP後払い」について教えてください。
柴田 私たちが提供する「NP後払い」は、その名のとおり、ネットショッピングにおいてユーザーが「商品を受け取った後で支払いできる」サービスです。ユーザーの商品受け取り後にネットプロテクションズ(以下NP)が請求書を発送、コンビニ・銀行・郵便局でお支払いしていただけます。商品到着後の支払いのため安心ですし、支払窓口が多いので便利だとご好評いただいています。
一方、加盟店舗側のメリットとしては、NPが料金の未回収リスクを保証します。ネット通販において未回収リスクがないというのは売上向上に直結しますし、大変喜んでいただけています。
――未回収リスクの保証は確かに魅力的ですが、一体どうしてそんなことが実現できたのですか?
柴田 最初は、話を持ちかけたお店の方からも「賭けてもいい、その事業モデルは実現できないだろう」なんて言われていました。結果的に実現できた理由は、逆説的ですが、「少額大量の未回収リスクを積極的に請け負ってきたから」だと言えます。
どういうことかと言うと、1つには、少額のリスクを大量に請け負っていれば、大数の法則でリスクが安定化してきます。最初は大変ですが、数を請け負っていればそのうち平均値に落ち着いてくるわけです。そしてもう1つ、支払い歴のある優良なリピーターが増加するにつれ、未払い率は低下していきます。
この2つの法則が働くことにより、積極的にリスクを請け負うことでリスクが安定、そのうちに無理なく未払い保証ができるに至りました。現在では7割以上がリピーターですので、未払いリスクはかなり下がっています。
――なるほど。スタートから3年かけて後払いサービスを軌道に乗せられるわけですが、まったく新しいサービスを実現するにあたって、他にどんなご苦労がありましたか?
柴田 のちほどお話しする当時の会社の状況が苦労の根源ではありましたが、事業面で言えば、「①どうすればショップさんが利用してくれるか」「②どうすればお客様のリスクを請け負えるか」「③物量が上がってきたとき、オペレーションコストが跳ね上がるのをどう処理するか」という3つの課題を同時並行で解決していくのがとにかく大変でした。
①については先ほど述べたとおり「未回収リスク保証? 実現できたらいいけど、絶対無理だよ」と言う人も多かったですし、②についてはリスクが安定するまではとにかく我慢、③については工数を減らし、コストを下げないと事業として成り立ちません。
しかし、それらの課題をクリアして目指すサービスを実現できれば、ユーザーにも店舗にも絶対に喜んでいただけることはわかっていましたので、とにかくすべての仕事を自分でやってでも実現するぞという気持ちは強かったですね。
――今でも「社内にやったことのない仕事はない」とうかがっています。
柴田 そうですね、社内にある仕事はほとんどすべて経験していると思います。営業はもちろん、スタート当時は土日の与信審査なんて誰もやってくれませんから、それも自分でやっていました。最初に契約してくれたお客様のことは今でもよく覚えています。埼玉の奥地でネット通販の副業をされていた方のところへ営業に行きました。その方がお客様第1号です。
あとはこの頃から、ブランディングに非常にこだわっていました。たとえば今、後払いをやる会社は増えてきましたが、当社の督促状が一番「きつくない」書き方なのではないかと思います。言葉を選ばずに言えば、脅すような文面のほうが回収率はいいのですが、創業当時からそういった言い回しは極力使わないようにしていました。返済に詰まった人が脅されるような文面を受け取ったら、金輪際その会社のサービスは利用したいと思いませんよね。そういった点も考えに考えて、自分で督促状の文面を考えたりもしていました。
次のページ
実現できると信じていたのは 自分1人だけだった >
更新:11月22日 00:05