
ある企業のアンケートでは、「無能なリーダー」の特徴として多く挙がった回答は「責任を取ろうとしないリーダー」だったそうです。つまり、逆説的に考えれば、「いざというときに責任を取ってくれるリーダー」が求められている、ということ。では、リーダーはその意思表明をどう見せることが適切なのでしょうか。
※本稿は、五十嵐剛著『結果を出すチームのリーダーがやっていること』(すばる舎)から一部抜粋・編集したものです。
普段は偉そうなことを言っているのに、何か困ったことがあると部下に責任を押しつけ、逃げるようなリーダーの下では誰も働きたくありません。
一方で、実際の職場のリーダーがいざというときに矢面に立ち責任を取ってくれる人なのかどうかは、いざそのときにならないとわかりません。気にしている人が多いのに、実際どうなるかはわからないので、不安に感じているメンバーが多いということでしょう。
不安を感じながらの仕事では、パフォーマンスは上がりません。メンバーのやる気を引き出しパフォーマンスを上げるためには、「このリーダーは、いざというときにも逃げずにしっかり責任を取ってくれそうだ」とメンバーに感じさせることが必要です。
それには、プロジェクトの開始時などに、リーダーが「このプロジェクトの全責任は、リーダーである私が負う」と明言することが有効です。メンバーを疑心暗鬼にさせないために、自身が最終責任者であり、何か問題が起こったときには責任を持って対応することを保証するのです。
この宣言を最初にすると、チームのメンバーはリーダーが逃げに入ったときの自らの保身を考える必要がなくなります。安心して、心置きなく実力を発揮できるようになるでしょう。
また、リーダーへの信頼感も醸成されます。
大戦期の米国大統領ハリー・トルーマンは、大統領執務室の机に「the BUCK STOPS here!」と記したプレートを掲げていたことで有名です。日本語に意訳すると、「俺が最終責任者だ!」といったところです。
たらい回しや責任逃れをするつもりがないことを座右の銘として周囲の人に明示し、強いリーダーシップで第二次大戦での勝利を米国にもたらしました。私たちもこの故事に習い、最終責任者が自分であることを、リーダーとして堂々と宣言しましょう。
こうした宣言には、メンバーのやる気や実力を引き出すのと同時に、リーダーが自分自身のモチベーションやパフォーマンスを高められる効果もあります。何しろみんなの前で宣言するのですから、任された仕事に対する覚悟が固まります。
プロジェクトを失敗に終わらせず、首尾よく成功を手にするためにはどうすればいいのか、またどこが一番重要なクリティカルパスなのか、などポイントを押さえた見方ができるようになります。
自分のためにも、チームのためにもなりますから、リーダーたる者は積極的に「全責任を取る宣言」をしてください。
全責任を負うことと、仕事を抱え込むということとは別物です。全責任を負うためにも、メンバーに役割を与え、与えた役割や仕事を自分が奪うことはしない、メンバーに任せる、あくまでもリーダーは役割指示を与えることに徹します。
これを、私は「役割指示に徹する宣言」と呼んでいます。
役割指示に徹する宣言は、「リーダーがメンバーの能力を信じている」と暗に示していることにもなります。
リーダーにそこまで言われれば、メンバーも意気に感じて、自分たちの成果不足でリーダーに失敗の責任を負わせられない、と考えます。自分たちをこんなに信じてくれるリーダーなんだから、なんとかその期待に応えたいと思うのです。
多くのリーダーは、メンバーの前ではつい完璧な人間になろうとしてしまいます。「自分はリーダーである」という気負いが暴走している状態です。
しかし、そもそも完璧な人間なんていません。
仮に完璧に見える人がいたとしても、そういう完璧超人には近寄りがたさを感じてしまいますから、そういうリーダーにメンバーは気楽に相談できません。
「あの人は、欠点のないところが欠点だ」という表現もあります。完璧すぎる人を見ると、そうでない人はイヤ味すら感じてしまうのです。親近感が湧かず、どうせ自分の気持ちなどわかってもらえないだろう、などとも思われがちです。
このように完璧すぎる人には人望が集まりにくいのですが、その人にわかりやすい欠点が一つでもあると、一気に周囲の人の受け止め方が変わります。「あの人は仕事ではすごく優秀なのに、実はおっちょこちょいなところもあるよね」と。
人というものは、誰しもどこかで人とつながりたいと思っています。そのつながりの感覚を生むのは、ちょっとした共感です。
リーダーが完璧になんでもこなしてしまうと、メンバーは手を出すことも、意見を言うこともできません。この状態ではメンバーの存在感はなくなり、とにかく黙ってリーダーの指示に従う、という受動的な組織になってしまいます。
チームにするには、リーダーも決して万能ではなく、弱いところ、できないところもあることをあえてメンバーに見せることが有効です。
更新:10月21日 00:05