THE21 » キャリア » 「女性管理職が増えない...」 多様性に乗り遅れる会社に足りないものは?

「女性管理職が増えない...」 多様性に乗り遅れる会社に足りないものは?

田島ヒロミ(組織開発・人財育成コンサルタント)

「昭和型マネジメントは~」

かつては結婚を機に退職する女性が多く、管理職は男性中心だった。しかし令和では、女性管理職比率の公表や人的資本経営の推進を背景に、企業は育成のあり方そのものを見直す時代を迎えている。

※本稿は、田島ヒロミ 著『昭和型のマネジメントは本当にもう通用しないのか』(すばる舎)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

昭和の女性管理職の比率

昭和時代、女性の管理職はほとんどいませんでした。

ちなみに、私が勤めていた生命保険会社では、ほんの一握りの女性の営業所長がいました。その方はとても明るくエネルギッシュで、業績はいつもよかったです。本社では事務系の仕事をしている女性は多くいましたが、女性の課長はいなかったと記憶しています。

昭和時代はもともと雇用の際に、男性と女性で採用形態や職種が異なっている会社が多かったです。男性は異動・転勤のある総合職として採用される一方、女性は転勤のない事務系の専任職として採用されることが一般的にありました。

女性管理職が少なかった要因のひとつに、多くの会社では専任職から管理職へのキャリアパスが用意されていないこともあったように思います。

また、当時は社内結婚が多く、結婚すると女性は寿退社する風潮でした。これは男性が外で働き、女性は家で専業主婦として働くのが当たり前と思われていた時代背景のせいかもしれません。

 

令和の女性管理職の比率

その後、2016年の「女性活躍推進法」施行が大きな転機となり、企業における女性管理職の登用が本格的に進み始めました。この法律により、企業は女性管理職の目標数値を設定し、行動計画を策定することが求められるようになりました。

2020年代に入ると、ダイバーシティ経営やESG投資(環境・社会・ガバナンスの3つの要素を考慮して投資)の観点からも、女性管理職の増加をさらに推進されるようになり、各企業の取り組みが加速していきます。

また、2023年に人材の価値を高め、企業価値の向上を目指すために人的資本経営の開示が義務化され、上場企業では女性管理職比率の公表を求められるようになりました。

上場企業だけでなく、最近は私がコンサルティングを担当している中小企業の人事担当者からも、「官公庁の入札で女性管理職比率の報告を求められるようになり、社内で大きな問題になっている」と相談を受けました。

その企業では、女性管理職が現在ゼロであり、社長から早急な対応を指示されたものの、これまで管理職候補の女性をまったく育成してこなかったため、対応に苦慮しているようです。

そこで、その企業では将来の管理職候補として、マネジメント・リーダーシップ研修にも女性を積極的に参加させる方針を打ち出したようです。

このような環境変化もあり、令和の時代では女性管理職者が増えています。

 

男女関係なく働きやすい職場づくりを構築する

実際に私が各企業で新任マネジャー研修をすると、約2割が女性です。

女性マネジャーのみなさんは、発言が的確で能力が高い方がとても多いです。またグループディスカッションでは、共感力の高いコミュニケーションを発揮して、議論が活性化しているのをよく見ます。

もちろん、子育てをしながら管理職の仕事をしている方も多く、オンラインで研修を行うときには、自宅から参加されている女性マネジャーの画面に、ときどき小さなお子様が映り込んで微笑ましい雰囲気になります。

マネジャー業務と子育てを両立させている令和の女性マネジャーやリーダーは、本当にすごいなと頭が下がります。

ここで、とある企業で印象的な女性マネジャーの事例を紹介します。

研修で、そのマネジャーの部下の女性が、職場での取り組み事例などを積極的に発表してくれました。そして、いまどき珍しく「私はマネジャーになってみたいです」と話していました。私はかなり興味を持ち、上司面談のセッションのときに、その女性マネジャーに尋ねてみました。

「研修で部下の〇〇さんがマネジャーになりたいと話してくれました。日頃どのような指導をされているのですか?」

すると、その女性マネジャーは、こう答えてくれました。

「特別な指導をしているわけではありません。いつも私は、マネジャーになってこんな良いことがあったと雑談風に話しています。たとえば、マネジャー研修に参加して、他部署の方と仲良くなってコラボレーションの企画を一緒に考えたとか、これまで出会わなかったような他社のマネジャーさんと知り合って、面白い話を教えてもらったとか、部下の〇〇さんが今までできなかったことができるようになるのを見て、うれしかったとか...」

とにかく目を輝かせて、うれしそうにマネジャーという仕事の魅力を語ってくれました。

部下にとって、普段から上司がうれしそうに本音で語ってくれることで、「私もやってみたい」というポジティブな影響を与えることができているのだなと感じました。

男だから、女だからといった性別に関係なく、誰でも同じように評価され、働ける環境を整備することが大事な時代です。

会社の大小も関係なく、そのような環境がつくられている会社ほど、上司・部下間で相互理解が深まり、組織全体のモチベーションアップにつながっていきます。

プロフィール

田島ヒロミ(たじま・ひろみ)

組織開発・人財育成コンサルタント

早稲田大学法学部を卒業後、生命保険会社に入社。営業・経理・事務システム企画・資産運用・コールセンター設立など、多様な業務に携わり、昭和流のマネジメントを部下としても管理職としても経験する。40代半ばには外資系生命保険会社へマネジャーとして転職。新商品開発や企業合併プロジェクトに参画し、ジョブ型人事制度のもとでマネジメントを実践する。50代で、長年のキャリアビジョンとして描いていた組織開発・人財育成の経営コンサルティング会社へ転職。現在は大手から中小企業まで幅広い企業を対象に、マネジメント・リーダーシップ・問題解決などのテーマで研修やコンサルティングを行っている。

THE21の詳細情報

関連記事

編集部のおすすめ

「女性だけじゃなくて全社員活躍」 誰もが働きやすい環境づくりのヒント

二出川真由美[室長]、野村由紀(サワイグループホールディングス㈱グループ人事部 ID&E推進室)

女性社員比率99% ホットヨガスタジオloIveが示す「パーパス経営」の揺るぎない成果

前川彩香([株]LIFE CREATE代表取締役社長)

女性営業に風当たりの強い時代でも...マネックス社長の「逆境を飛躍へ転換させる力」

清明祐子 (マネックスグループ[株]代表執行役社長CEO)

女性がもっと職場で活躍すべき理由と、そのために現場マネージャーができること

サラ・リュー(The Dream Collective代表取締役)