上司の悩みは人知れず深いもの。組織が歩む道を見据えながら、関連部署や部下にまで目を配らなければならない。とりわけ営業組織においては、成果創出と部下育成との両立が求められる。
営業組織における部下育成のためには「営業コーチング」が有効だが、日常会話の中で部下への問いかけを意識するだけでは、コーチングは定着しない。効果を得られないまま「指示型上司」に戻ってしまう可能性もある。上司がコーチングスキルを伸ばし続けるために必要なこととは何なのか?
部下育成に関して「正しく指導しなければならない」と意気込む上司は多いのではないでしょうか。
確かにそれが必要な場面もありますが、むしろ、部下の力を「引き出す」とか「次につなげる」という意識づけをする姿勢が求められる場面が多いことも事実です。
そうした意識づけを部下に反映できているかを確かめる方法を、3つご紹介します。客観的に見て、自分の部下指導が適切なのかを判断していただける方法です。
1つは、コーチングを1on1として定例化し、その場で部下からフィードバックを得られるようにすることです。
部下がコーチングの内容を理解しているかどうかも重要なポイントですが、より重要なのは「部下が次にとるべきアクションをどう考えたのか」です。
理解した先に、どのように行動に移すのかを、1on1で聞いてみてください。例えば、「今日の内容を踏まえて、次はどうしようと思う?」と。
コーチングを受けて理解した話と、それを踏まえてどんなアクションを起こせるか。営業活動において必要な情報の理解に留まらず、具体的な行動への落とし込みまで部下から確認できれば、自分のコーチングが有効だったと言えるでしょう。
また、1on1で「新しい気づき」があったかを部下に直接聞いてみることも、コーチングの有効性を測る尺度となりえます。例えば、「顧客に『自社視点』でどう提案するかばかり考えていましたが、『顧客視点』を持てたことで、違った角度からの提案の必要性に気づきました」という答えが返ってくれば、新しい気づきがあったと言えます。
それは、メンバーの熟練度や年次によって変えてもいいでしょう。経験値が低い若手なら週1回30分ほど時間をとることをお勧めします。キャリアのあるメンバーなら月1回でも十分です。
大切なのは、続けること。上司が話すことと部下の理解の食い違いを確認するなど、コーチングの理解を図るだけでも有効です。
フィードバックするテーマがないなら、5分でも十分です。部下の業務が順調に進んでいるなら、「すべて順調です」と答えをもらうだけでもいい。「順調だけれど、さらに加速させたい」とか、「ちょっとつまずきそう」といったことを見極めるだけでも、上司にとって有意義な時間です。
部下からしても、何かあった際に「1on1の時に相談しよう」とコミュニケーションサイクルを作れるので、その観点で言えば貴重な場になります。「最近どう?」のちょっとした声かけすら難しいオンライン時代においてはなおさらではないでしょうか。
ただ、1on1にも課題はあります。部下の適正な人数は7人程度まで。それ以上を1人で見るのはキャパオーバーです。
その場合は、自分の右腕となるメンバーに若手を見てもらいましょう。彼らを介して、ちゃんと部下の意見や考え、状況を吸い上げられる工夫が必要です。
1人の上司が見なければならない部下が多すぎる企業は「1on1以前」の問題で、思い切って組織を見直すことも検討してみてください。
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更新:12月04日 00:05