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40代で病魔に倒れ、キャリアがゼロに 「出世コースを外れた人生」をどう生きるか

2025年07月18日 公開

木村尚敬([株]経営共創基盤[IGPI]グループ共同経営者/マネージングディレクター)

修羅場のケーススタディ

40代を過ぎると、いつ大病を患うかわからないという現実と向き合うことになる。もし病によって、これまで築き上げてきたキャリアが突然断ち切られ、出世の道が閉ざされてしまったとしたら? 中間管理職として直面するかもしれない"修羅場"をどう乗り越えるか。書籍『修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問』より紹介する。

※本稿は、木村尚敬著『修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです

 

突然の病魔により、今までのキャリアがゼロに......

社内のエースとして順調に出世街道を歩んできた自分だったが、40代半ばのある日、突然、病魔に襲われた。なんとか現場復帰したものの、しばらくは長時間労働も飲酒も厳禁となってしまった。

とはいえ、「体育会系」の我が社では、長時間労働も飲み会の席での交渉も当たり前。チームを引っ張るべき自分がこの状況では示しがつかず、会社からも「もう少し楽な部署に異動しては」と持ち掛けられている。しかし、自分の今までのキャリアを無にするのはあまりにもつらい......。

 

キャリアのゴールが「出世」でいいのか?

ちょうど40代くらいで直面することの多い、極めて深刻な悩みです。私自身、20代の時に大病を患ったことがあるので、気持ちもよくわかります。

ただ、「キャリアが無になる」とありますが、キャリアとは「社内の出世」だけなのでしょうか。だとしたら、それはあまりにも視野が狭いと言わざるを得ません。

仕事の価値とは本来、誰に対してどんな付加価値貢献を提供したかということです。病気により今までと同じ方法でその価値を提供できなくなったのなら、別の形で価値を提供できないかをまずは考えるべきです。

もし、ユニークなマーケティング施策の立案が得意だったとしたら、その知見を活かして営業サポートに回るというのも一案です。そこでまた成果を上げれば、出世や報酬も自動的についてくるはずです。

出世欲が悪いとは言いません。しかし、出世が目的化すると、自分の出世を左右する経営陣や上司に頭が上がらなくなります。部下はそのあたりを非常によく見ていますから、そんな上司にはついていきません。

そもそも、上にこびへつらったところで、誰もがエスカレーター式に出世できるような時代はとっくに終わっています。結局、「どうやって貢献するか」を考えることが、出世の近道でもあるのです。

 

「自分の仕事の価値とは?」立ち止まって考える

この際に役立つのは、戦略立案で使う「3C」というフレームです。

「市場(customer)にはどんなニーズがあり」「自分(company)はどんなことができ」「それは競合(competitor)に勝てるのか」から自分の比較優位性を見出し、それを元にキャリアを描くのです。

それらを踏まえた結果、もし今の会社で貢献できる場がないというのなら、本当に貢献できる会社に転職するという選択肢もありでしょう。

あるいは「やっぱりこの会社が好きだ」というのなら、どうすれば会社に貢献できるかを改めて考えてみるべきです。それが本当の意味で「キャリアを考える」ことです。

これは本来、誰もが一度はどこかで考えておくべきことです。ただ、その前に病気になってしまったのだとしたら、「神様がくれた振り返りの機会」だと思うべきでしょう。

 

「何もない状況」が特殊なのだと考えよう

野球の、しかも古い話で恐縮ですが、80〜90年代に活躍した読売ジャイアンツの吉村禎章選手は、選手としての絶頂期に試合中の事故で大けがを負います。その後、1年以上のリハビリを経て復帰し、その後は代打の切り札としても活躍しました。

おそらく、「ケガをしたのは仕方がない。ならば、今後はどうやって貢献するか」を考えたのだと思います。見事な復活劇でした。

そもそも、人生にはいつ何時、どんな障害が待ち受けているかわかりません。それは自分自身のこととは限らず、親の介護かもしれませんし、家族の病気かもしれません。

そのたびに「なんでこんなことに」と文句を言うだけ時間の無駄。さっさとマインドチェンジを図るべきです。

先述したように私は20代で大病を患い、このケースと同じく「残業NG、お酒NG」の生活を10年ほど強いられました。当時は起業したばかりの一番忙しい時期でしたが、飲み会にはウーロン茶で参加するなどしてなんとか乗り切りました。

なんの問題もなく働けるという状況を、幸運で特殊なことだと思うべきなのです。そして、抗えない人生のハードルが現れた時、それに対していかに柔軟に対応できるか。人生は結局ケセラセラだ、と思える人が強いのです。

 

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