2021年03月03日 公開
2023年02月21日 更新
ただ、顧客リストの難しいところは、ただ集めて何らかのアプローチをすれば売上が上がる、というほど単純なものではないことだ。リストは、単なる名簿では意味がない。
顧客リストのお客さんに対して常にいろいろな働きかけをすることで、リストを活性化させ「生きた顧客リスト」にする必要がある。これを私は「リストを温める」と呼んでいる。
たとえば先述の石材店では、定期的にニューズレターを発行して顧客とのコミュニケーションを図るとともに、石材店であることを生かした各種イベントを定期的に開くことで、顧客との絆を培ってきた。
実は多くの企業が個人情報を活用しようとして失敗するのは、ここに原因がある。とりあえず顧客リストを作れということで、昔集めた顧客情報を引っ張り出してくる。たいてい、部門ごとにばらばらに取っているので、集約するだけでも一苦労だ。
そして、やっとの思いで集約し、商品の案内を出してみたところ、まったく反応なし。「やっぱり顧客リストなんて意味ないよ」と、それきりになってしまう。
自分が顧客の立場だったらどうかと考えてみてほしい。数年前に一度商品を買っただけの会社から、ある日突然DMが来て、それで何かを買おうと思うだろうか。
順序が逆なのだ。まず、温める。「仲良くなる」と言い換えてもいいだろう。たとえば有益な情報を定期的に提供したり、無料イベントに招待したりする。そうして仲良くなったあとに、「実はこんな商品があるのですが」とお勧めする。
それによってやっと、ごく一部の人が購買行動を起こしてくれるのである。私が主宰する「ワクワク系マーケティング実践会」では、顧客とのコミュニケーションのためのDMを「ニューズレター」と呼び、何かを販売するための「セールスレター」と区別している。
ニューズレターではとにかく、コミュニケーションを重視する。商品の紹介をしてもいいが、あくまで「お役立ち情報」くらいに留めておくのがポイントだ。このニューズレターは、顧客リストを温める強い武器になる。今日では、多くの会員企業がSNSを併用してさらなる温め活動にいそしんでいる。
しかし、多くの企業は顧客リスト集めにお金をかけても、顧客リストを「温める」ことにお金をかけようとしない。だが、それなくしてモノを売ろうというのは、いきなり人間関係のできていない人に「お金貸して」と要求するようなものだ。
さらに言えば、順番を間違えてはいけない。モノを売るために関係を深めるのではなく、あくまで、まずは信用や信頼を醸成することだ。その信頼関係あってこそ、人は「買ってもいいかな」という気持ちになる。
先ほど「社内の過去の顧客リストをただ集めても意味はない」という話をしたが、アプローチ次第でそれは、あなたのビジネスを守ってくれる宝の山に変わる。
三重県で住宅リフォーム・リノベーションを手がけるある企業は、コロナ禍において、過去の顧客リスト1600件にさまざまなアプローチを行った。
関係性を育むためのニューズレターを送り、各種イベントを行い、敷居を下げるため、粗大ごみの処分や庭のお手入れまでフォローする便利屋業務や網戸張り替えデリバリーサービスも始めPRした。
そうして、2020年3月からアプローチを始めた結果、コロナ禍にもかかわらず、前年比180%の売上となった。その他にも、宮城県にあるリフォーム会社では、自社の顧客リストにアプローチしたところ、即座に1200万円もの売上が上がったという話もある。
顧客リストは打ち出の小づち、「生きた顧客リスト」はさらにその何倍もの力を持った魔法の小づちなのである。
更新:11月22日 00:05