
「こうあるべき」「こんなことではいけない」といった固定観念は、この社会にいくつも蔓延している。それらが自由な発想を奪う「マインドブロック」になると、日米両国でマインドセットコーチとして活躍する井添結琴氏は指摘する。知らず知らずのうちに私たちの足を引っ張る「マインドブロック」の正体について、井添氏の書籍より紹介する。
※本稿は、井添結琴著『自分を変える戦略書 アメリカの億万長者に学んだ成功のマインドセット 』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集したものです。
気づきにくいマインドブロックに、「文化的な刷り込み」があります。
あなたも考えてみてください。私たちは生まれた瞬間から、目に見えない型にはめられ始めます。
「皆と同じようにしなさい」
「目立つことはやめなさい」
「失敗したら恥ずかしい」
「空気を読みなさい」
「迷惑をかけてはいけない」
「他人様からお金を受け取ってはいけない」
こうした言葉は、多くの日本人が子どもの頃から繰り返し聞かされてきた「生きるためのルール」です。
幼少期からの価値観や社会的プレッシャーは、無意識のうちに「自分はこうでなければならない」という制限を生み出し、大人になった後にも行動や挑戦の幅を狭めてしまう原因となります。
文化的常識の名のもとに形成される固定観念は、生まれた瞬間から自然に刷り込まれているため、その枠の中にいることすら気づかないまま生き続けてしまうのです。
そして、私たちが育ってきた日本の文化や教育の中にも、知らず知らずのうちにマインドブロックを形成してしまう要因が数多く潜んでいます。ここでは、特に日本人に多く見られる、典型的なマインドブロックの原因をいくつか見ていきましょう。
「出る杭は打たれる」という同調圧力は、多くの日本人の心に深く刷り込まれてきました。学校でも社会でも「和を乱さないこと」が美徳とされ続け、その結果「周りと違うことをしたら叩かれる」という恐れが、強い固定観念として根づいています。
その制限は、私たちから〝個性を表現する力〟を奪います。そして、新しい挑戦を心の奥で望んでいても「浮いたらどうしよう」という不安を生み出し、行動を止めるブレーキとなってしまうのです。
そんなときこそ「違いこそが新しい価値を生み出す」という視点に、意識的に立ち戻ってみてください。そうすることで、自分らしさを〝強み〟へと変えていくことができるようになります。
「失敗は恥」という価値観も日本に根強く存在しています。子どもの頃からテストの点数や成績によって「間違えること=価値が低い」と教え込まれた結果、大人になっても「失敗したら恥ずかしい」という思い込みが抜けず、新しい挑戦を避けてしまう人は少なくありません。
しかし本来、失敗は避けるべきものではなく、むしろ挑戦の証であり、成長の過程そのものです。「空気を読む」「迷惑をかけてはいけない」という美徳も、一見すると周囲への思いやりのように見えますが、行きすぎると自己犠牲へとつながります。
小さな頃から「他人に迷惑をかけてはいけない」と繰り返し言われることで、相手の顔色をうかがい、自分の意見を飲み込み、断れない性格を作り上げてしまうのです。
その結果、「自分の本当の望みがわからない」という状態に陥りやすくなります。ここで大切なのは、他人を思いやることと、自分を抑え込むことはまったく別物であるという理解です。
日本独特の「自己卑下の文化」も大きなブロックを生みます。小さい頃から「自慢してはいけない」「調子に乗るな」と言われ続けることで、「自分の強みを口にすること=悪いこと」と思い込んでしまうのです。その結果、自己肯定感が育ちにくくなり、自分の可能性を正しく認められないまま大人になる人が多いのです。
しかし、謙虚であることと、自分を卑下することは同じではありません。自分の価値を正しく認めることこそが、むしろ他者への貢献の出発点になります。
「お金の話は卑いやしい」という価値観も、日本特有の刷り込みの1つです。お金をもらったら、大人たちは「すみません」と言う。そんな姿を幼少期から見て育つと、お金を受け取ること自体に罪悪感を覚えるようになります。
その結果、経済的な豊かさを追求することすら「恥ずかしい」と感じてしまうのです。ですが、本来お金は感謝と価値の交換です。正しく受け取り循環させることが、より多くの人を幸せにし、自分の人生も豊かにするのです。
「良い大学→良い会社=幸せ」というレール信仰も、多くの可能性を閉ざす原因となります。家庭や学校、そして社会全体から「いい学校への進学・就職の一本道」が理想だと刷り込まれた結果、多様な人生の選択肢が見えにくくなってしまいました。 その影響で、一度レールから外れることを極度に恐れ、自分の力で「本当に生きたい人生」を選ぶ勇気を失ってしまう人も少なくありません。
ですが、幸せの形は人それぞれです。自分の価値観に沿った選択をできる人こそが、本当の意味で豊かで幸福な人生を手に入れることができます。
このように、日本文化の中で「当たり前」とされてきた価値観や信念は、時にマインドブロックとして私たちの可能性を縛る「見えない鎖」となりえます。だからこそ、マインドセット改革においては、自分が育った文化に即したアプローチを取ることが欠かせません。
もちろん、全人類に共通する普遍的な理論を学ぶことも大切ですが、日本社会には独自の価値観や教育、無意識の刷り込みが深く作用しているため、日本人特有のマインドセットが形成される仕組みや傾向を理解することこそ、より効率的な自己改革への近道となるのです。
本書では、世界共通の理論を紹介するだけでなく、日本人が直面する、特有の「見えない鎖」を解き放つために最適化したアプローチも合わせてお伝えしていきます。
子ども時代の体験や、文化的な常識により刷り込まれたマインドブロックは、単に「考える」だけでは気づけないことがほとんどです。
しかし、深い層にこびりついたマインドブロックの存在に気づくための、とてもシンプルで効果的な方法が1つ存在します。
その方法こそが、「感情」に意識を向けることです。
前章でお伝えした通り、精神は大きく「心」と「意識」という2つの側面で構成されています。「心」には、出来事を感じ取り、その情報を身体に伝達する力があります。
マインドブロックがかかっているときとは、まさに可能性に制限がかかっている状態であり、それは同時に、本質的な自分の在り方からずれてしまっている状態です。
このとき心は、ネガティブな感情を通して「進むべき方向がずれているよ」と知らせる信号を身体に送ってくれるのです。
あなたの身体は、特定の状況に直面したとき、こんなサインを出していませんか?
・新しい挑戦を前に心臓がドキドキして一歩が出ない
・「失敗したら恥ずかしい」という声が頭の中で響く
・人前に立つと過去の嫌な記憶がフラッシュバックする
・なんとなくモヤモヤ・イライラして前に進めない
・行動しようとすると不安や恐怖を感じる
・「どうせ自分なんて……」という気持ちが湧いてくる
マインドブロックの中には、毎回ではなく、特定の状況下でのみ起動されるものもあります。
例えば、1対1や3〜4人の少人数であれば楽しく会話できるのに、30人の前に立った瞬間に頭が真っ白になってしまう。
取引先やお客様には堂々と説明できるのに、なぜか社内で上司に報告する場面になると言葉が詰まってしまう。
趣味の分野では積極的に学び、行動できるのに、いざ仕事に直結するテーマになると「失敗したら責任を問われる」と不安になり動けなくなる。
ブランド物や趣味には数万円を平気で使えるのに、「自己投資に10万円」と聞いた途端、「失敗したら無駄になる」と怖くなって踏み出せない。
SNSでは堂々と自分の意見を書けるのに、仕事での会議の場では手を挙げられない……など。
このように、マインドブロックがかかっていると、本来なら問題なくできるはずの行動に対しても、不合理に否定的な感情が生じ、ブレーキがかかってしまうのです。
これらの感情は決して悪いものではありません。むしろ、「ここに、あなたの進路を狂わせている隠れた思い込みが潜んでいるよ」と心が身体を通じて知らせてくれている、大切なメッセージなのです。
更新:01月25日 00:05