2017年09月14日 公開
冨澤社長は2年ほど前からフランスにある開発拠点に常駐している。一般的に、欧米諸国のほうが生産性の高い働き方をしていると思われがちだが、冨澤氏によれば「決してそうとは限らない」という。
「日本とフランスでは、仕事に対する考え方がまったく違います。国民性があまりに違うので、互いを理解するために社内講習会を開いたほどです。
講師によると、日本人の生きる理由や働く理由は、名誉や地位や家族のためとのこと。私自身は同意できませんが、たしかに一般的に言われがちなことです。
一方、フランス人にとっての生きる理由や働く理由は、自由と自由時間と美食だというわけです。にわかには信じられず、フランス人の幹部に『そうなの?』と尋ねたら、『え、日本人は違うの?』って(笑)。
つまり、フランス人にとって仕事は二の次で、自由時間や美食のほうが大事。『定時後は仕事の電話やメールに対応しなくていい』という法案まであるのです。目標管理もほとんどしない。その意味で、生産性は日本のほうが高いと思いますね」
このやり方ではロボット業界では勝てない。そう危機感を抱いた冨澤社長は、日本流マネジメントの導入を図った。
「ソフトバンクとしてやるからには、世界で圧倒的ナンバーワンのロボットカンパニーになるという目標があります。フランス人が大事にしている価値観を尊重しながら、世界で勝つためには働き方を変える必要があると言い続けました。
たとえば仕事を頼むとき、『これ、やっておいて』だけでは、フランス人は怒ります。なぜその仕事をその人にやってもらう必要があるのか、相手にわかるよう説明する必要がある。相手をリスペクトする気持ちが重んじられます。
また、日ごろの感謝なども折に触れ口にしないと、こちらの言うことだけ聞いてくれというわけにはいきません。
社員への『ありがとう』など、日本では端折っていた部分もあり、簡単ではありませんでしたが、2年かけて彼らの意識はだいぶ変わりました。今では、幹部クラスなどバリバリ働いています」
最後に、冨澤社長が個人的に取り組む時短の工夫を聞いた。
「万人にはお勧めできませんが、私はメモを取りません。取る必要がないと考えているからです。もし忘れたとしたら、それほど重要ではなかったということだと割り切っているのです。
また、社内メールの文章は短くて、1行か2行です。文章を書かずに転送することもあります。普段からコミュニケーションをとっているので、社員は文章なしでも私の意図を理解してくれていると思っていますが、困っていないか一度確かめたほうがいいかもしれませんね(笑)」
《『THE21』2017年8月号より》
更新:11月22日 00:05