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容姿の衰えの原因にも...「脳の老化が早い人」がしているNG習慣

2023年11月05日 公開

加藤俊徳(脳内科医/医学博士/加藤プラチナクリニック院長)

50代の脳

脳には1000億個を超える神経細胞が存在する。そして同じような働きをする細胞同士が集団を形成し、脳内に拠点(脳番地)を作っているのだ。脳内科医の加藤俊徳氏は、いつまでも若々しい脳でいるには「脳番地」の連携を強化することが重要だと指摘している。本稿では、中高年が気を付けるべき習慣について解説する。(取材・構成:塚田有香)

※本稿は、『THE21』2023年12月号特別企画『50歳を過ぎても若々しい人、一気に老け込む人』より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

脳の働きから見た中高年と若者の違い

海馬の使い方の違い

皆さんは「人間は加齢によって老化する」と考えているのではないでしょうか。しかし実際は、同じ50歳でも若々しい人と老けて見える人がいます。その違いはどこにあるかといえば、「脳の使い方」です。

年齢より若々しく見えるか、老けて見えるかは、外見だけで決まるわけではありません。ことあるごとに過去を振り返り、「なぜあのときにあんな失敗をしてしまったのだろう」と後ろ向きな考え方をする人は、30代や40代でも老けて見えます。

一方、常に未来へ目を向けて「きっと素晴らしい明日が待っている」と前向きに考える人は、60代や70代になっても生き生きと若々しく見えるものです。

なぜこのような違いが生じるのか。それは脳の中で記憶を司る「海馬」の使い方に原因があります。 海馬は約5cmの細長い形状で、前頭葉に近い前側の部分は新しい情報をインプットし、後ろ側の部分は古い情報を呼び出して再生する役割を担います。

つまり過去を思い出して後ろ向きなことばかり考える人は、海馬の後ろ側を優先的に使っているわけです。

人間は長く生きるほど、脳にたくさんの古い記憶が保存されるため、どうしても過去に目が向きがちです。それに対し、若い人は脳に保存された記憶がまだ少ないぶん、外から入ってくる情報をどんどん受け入れ、新しい記憶を作り出していきます。これが脳の働きから見た中高年と若者の違いです。

 

若い人の考えを否定すると、脳の老化が加速する

裏を返すと、新しい情報を何でもフラットに受け入れる習慣が身についていれば、実年齢は高くても若々しくいられるということ。

例えば自分より下の世代の人たちと積極的にコミュニケーションすることは、若々しさを保つことにつながります。年齢が離れた人は、自分や同世代の人とはまったく違うことに興味を持っているため、会話を通じて新しい情報にたくさん触れられるからです。

皆さんも職場の若い部下に話しかけてみれば、Chat GPTのような最新テクノロジーから人気急上昇中のアイドルまで、知らない情報が次々と飛び出すはずです。

その際に大事なのは、「なぜそれに興味を持ったのだろう?」と考え、相手を理解しようとすること。「アイドルの○○ちゃんが出ているホラー映画が面白いんですよ」と言われて、「そんなアイドルは知らないし、ホラーも興味がない」などと頭ごなしに否定するのは、脳を老け込ませる最悪のパターンです。

「その映画のどんなところが面白いの?」と興味を持って聞き返せば、相手は自分にとって未知の情報をたくさん与えてくれます。そのホラー映画を自分も観にいけば、より新鮮な情報が脳にインプットされます。

自分がまったく知らないことや理解できないことに出会ったときは、「自分の脳を若々しくするチャンス」だと考え、一から教えてもらうつもりで相手の話に耳を傾けることが大事です。

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脳の高次機能は中年期以降に成熟する >

著者紹介

加藤俊徳(かとう・としのり)

脳内科医、医学博士、 加藤プラチナクリニック院長

Toshinori Kato (株)「脳の学校」代表。 昭和大学客員教授。MRI脳画像診断・脳科学の専門家で、脳を機能別領域に分類した脳番地トレーニングや助詞強調音読法の提唱者。91年、脳活動計測「fNIRS法」を発見。95年から2001年まで米国ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI画像の研究に従事。発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、小児から高齢者まで1万人以上を診断・治療。『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)など著書多数。

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