2017年07月01日 公開
著書『鬼速PDCA』が8万部超えのヒットとなっている冨田氏。PDCAと聞くと「今さら?」と思われがちだが、多くの企業では鬼速どころか普通のPDCAすらきちんと回っていないと冨田氏は見る。その原因と改善策、さらにPDCAの意外な効果についてお話をうかがった。〈取材・構成=塚田有香、写真撮影=中條未来〉
野村證券で数々の営業記録や最年少記録を樹立し、若手の頃から圧倒的な成長スピードを実現してきた冨田和成氏。2013年に設立した㈱ZUUでは、目指すゴールの一つを「2038年に時価総額100兆円」と定め、ますます加速度的にビジネスを拡大させている。そんな冨田氏が、「個人も組織も十倍速で成長できるフレームワーク」として提唱するのが「鬼速PDCA」だ。従来のPDCAと何が異なるのだろうか。
「『PDCAならすでに実践している』という企業は多いでしょう。しかし現実には、PLANの段階で5割の人がPDCAサイクルから脱落し、DOで3割が脱落。CHECKへたどり着く前に、8割が脱落しているというのが私の印象です。つまり、せっかく何かトライしても、効果の検証がされていない。多くの企業で、仕事が“やりっぱなし”になっています。
私は、PDCAの“A”を『ACTION(改善)』ではなく『ADJUST(調整)』と定義しています。改善のみならず、期日の伸長や計画の継続・中止など、さまざまな調整が必要だからです。ただし、的確な調整は、前段階に的確な検証があってこそ。検証がなければ調整もできず、結局なんの結果も出せずに、“P”や“D”にかけた時間や労力がムダになってしまいます」
なぜ、PDCAの要であるCHECKが実行されないのか。理由は、個人が抱える仕事を「重要度」と「緊急度」のマトリクスで整理すると理解しやすい。
「ほとんどの人は、『重要・緊急領域』の仕事に大半の時間を奪われています。常に目の前の仕事で手一杯で、PDCAを回すべきだとわかっていても、検証まで行き着けないのです。“C”を実行するためにはまず、前段階の“D”を棚卸しし、『DOの中に捨てられるものはないか?』を考える必要があります。
とくにマネジャーは、緊急度の高い領域に惑わされず、『重要・非緊急領域』にかける時間の確保に努めるべきです。ここには、部下の育成や仕事の仕組み作りなど、中長期的なタスクが該当します。そしてこの領域にこそ、チームが抱える課題を解決する突破口があるのです。緊急案件に追われる部下を上司が手伝えば、現場はラクです。でも、それは一時しのぎでしかありません。それよりも、『部下が緊急の仕事に追われない仕組み』を考え、この課題を早期解決すべく時間を使うほうが、結果的には部下を助け、チームの生産性も上がります。上に立つ者の役目は未来を作ることであり、部下がPDCAを回すための環境作りは大切な仕事です」
更新:11月25日 00:05