2016年10月17日 公開
2023年05月16日 更新
AKB48の新たな姉妹グループとして、1月に劇場デビューしたNGT48。新潟から全国へ、そして世界へと羽ばたくためには、ダンスと歌以外にも学ぶべきことはたくさんある。
48グループの未来を担う若きメンバーたちが、異分野のプロ、エキスパートに教えを請うこの連載。第5回のテーマは、ずばり顧客の心のつかみ方。ファンを増やすためには顧客との接点でどう振る舞うかが重要だ。心理カウンセラーであり、接客をはじめビジネスでの実戦経験も豊富な塚越友子先生にその真髄を学ぶ。<取材・構成=鈴木初日、写真撮影=永井浩>
握手会など、マンツーマンのコミュニケーションでファン=顧客をつかむことが重要になっているのが現代のアイドル。そのための方法論を、生徒役の2人はどのくらい意識しているのだろう。
塚越 素朴な疑問なんですが、AKB48グループでは「ファンの心をこうやって掴みましょう」とか、アイドルとしての作法、テクニックのようなことは習うんですか?
荻野 特に講習のようなことはないです。先輩たちを見習いながら、自分の個性を出していきます。
私の場合は、応援してくださるファンの皆さんを「劇団おぎゆか」と呼んでいます。「NGT48の荻野由佳」となると、やはり遠い存在になってしまうので。私が勝手に作った「劇団」の一員になってもらうことで、もっと距離が縮まると思ったんです。
塚越 ファンを一つのチームのようにして、親近感を出していこうということですね。それは心理学的にとても正しいです。今のアイドルはカリスマ性の一方で、「近い」という感覚をどれだけ起こせるか、そのギャップが重要。ファンのコミュニティを作ると、メンバーとして同調の心理が働いて結束力が高まりますから。
荻野 先輩で、SKE48の惣田紗莉渚さんというがいらっしゃって。惣田さんの握手は顔を近づけて、一切目線をそらさずに相手のことを見るんです。
塚越 すごいですね。
荻野 しかも、ファンの方との会話を心から楽しんでいるところがすごいなと思います。もちろん私も心から楽しんで握手会をやっているんですけど、惣田さんを見ると「あそこまでできるんだ」って。
塚越 惣田さんには、ファンは多いんですか?
水澤 握手会ではすごい行列ができています。
塚越 なるほど。実は、男性と女性では人を好きになるポイントが違うんです。
図書館の司書実験という有名な心理学の実験があって、図書館で女性の司書が男性の被験者に本を渡すときに、A群にはさりげなく手をさわる。B群にはさわらないで渡す。
出口で「今の司書さんの印象はどうですか」と質問すると、A群の印象はすごくよくて、B群は特に記憶にないという答えが多かったというんですね。つまり、男性というのはさわられるとそれだけで好意を持ってしまう。
水澤 えっ……。
荻野 そうだったんですね!
塚越 だから、握手会でも、ただの握手ではなくて、両手で握手するとか、手の甲や手首をさわるとか、接触を増やした方がいいということになります。
もちろん、やり方はそれだけではないですが、握手するのはみんな一緒だから、それ以上の印象を与えないと「ぞっこん」にはなってくれないですよね。
AKB48グループは、プラットフォームビジネスといって、参加しているメンバーたちが熾烈な競争をするビジネスモデルです。なにか工夫をしないと生き残れない。
次から次へと新しいメンバーが入って来るなかで、どうやって生き残るかを考えなければいけないのは、銀座でも同じです。なにか工夫をしないといけない。そこで、いま話したように接触を増やすというのは基本。その上で、自分のキャラクターを生かしていくことですね。
その点、水澤さんは保育士と幼稚園教諭の資格を持っているんですよね。それはすごく強いです。
水澤 えっ、そうなんですか?
塚越 結局、大人になっても「お子ちゃま」なんです、男性というのは(笑)。「よしよし」ってしてあげられる人が一番強い。だから、握手会に来る男性ファンを「みんな園児だ」と思えばすごい人気が出ますよ。
荻野 みんな園児……!?
水澤 「今日も登園できましたー!(拍手)」という感じですか?
塚越 そう(笑)。そこまでやるかどうかは別として、来ただけで褒められる、というのはうれしいと思います。
銀座のお店でも、「いらっしゃいませ」と迎えた後に、ママとか古株のお姉さま方が「偉い!」「助かる」「素晴らしい!」といった感じで、お客様を褒めるんです。来店してくれたことを褒める。ただ来ただけで褒める。それが10分くらい続くこともあります(笑)。鬱陶しいかもしれないですが、褒められて悪い気はしないですからね。
水澤 じゃあ、私も言ってみようかな(笑)。「来てくれてありがとう。素晴らしい!」って。
塚越 そんな男性ファンにくらべて、難しいのが女性ファンです。憧れの対象になる、「こんなふうになりたい」と思わせるものを持っているアイドルじゃないと人気を得るのは難しい。
だから、あまり綺麗すぎてもだめなんです。真似できないから。すごくかわいいんだけど、ファンの女性が「私もなれる」と思わせられるようなバランス。これは男性の心を掴むよりははるかに難しいです。
あとは、柏木由紀さんくらい男性に人気があれば、「モテるためのテクニックを学べる」という形で女性から注目される、という路線も狙えるかもしれませんね。
荻野 柏木さんからは「握手の時に目はそらしちゃダメ」と教わりました。目を見て話せば心は掴めるよって。
塚越 たしかに、じっと目を見て照れさせたらこっちのものです。「照れてドキドキした→好きなのかな?」という勘違い、「錯誤帰属」が起きますから。よく言われる、吊り橋で出会った二人はカップルになりやすいという「吊り橋効果」と同じです。
先輩たちが基本としてやっていることはぜひ真似したほうがいいですよ。必ず心理的に意味がありますから。
更新:11月21日 00:05