2016年10月17日 公開
2023年05月16日 更新
心を掴むためには、ファン=顧客のニーズを知る必要がある。すなわち、ファンはなぜアイドルを応援するのか? という本質を押さえなければいけない。
塚越 実はこの対談のために、 AKB48Gのメンバーがファンに向けてどんなメッセージを発しているか、分析してみました。すると、人気があるメンバーは他とは全然傾向が違いました。
荻野 本当ですか? 教えてください!
塚越 人気があるアイドルというのは、ファンが何をしたくてアイドルを追いかけるか、わかっているんです。なんだと思いますか?
水澤 なんでしょう……?
塚越 自分が応援することによって、そのアイドルが注目されるとうれしい。「自分が支えているんだ」という力を感じたい。これを「コントロール幻想」と言います。
そういうファンにとって、「あなたが応援してくれたから、私は人気が出たんです」と言われるのが最高のご褒美です。だから、普通のアイドルは「頑張ります」と言うのに対して、人気のあるアイドルは「応援してください」「支えてください」「助けてください」という、ファンに力を感じさせるメッセージを送っているんですね。
銀座のホステスでも、人気の高い人はお客さんに「助けて」とか「私、どうしてもナンバー1になりたいので手伝って」と言いますね。実は、疑似恋愛的なやり方では続かないんです。「この子を応援してナンバー1にしてあげよう」という「養育欲求」を突いた人がナンバー1になれる。だから、派手なイメージがあると思いますが、実は売れっ子はアクセサリーもつけないですよ。
荻野 えっ! そうなんですか?
塚越 「アクセサリーも買えないのか。かわいそうに」と思わせた人がナンバーワンになれるんです。
話をアイドルに戻すと、ファンの方に「もっと上に行きたいから応援して」「次は千人と握手したいから手伝って」といったメッセージを発したほうがいいでしょうね。
そして「俺が応援してあげないと」と思ってもらうのが大事なこと。「この子は一人で頑張れるな」と思われてしまってはだめです。「俺の力で売れた」というのが男性は特にうれしいからです。さらに、達成欲求もあるから、ある程度まで関わりが深くなると、最後まで応援してくれる可能性も高いです。
水澤 そういう気持ちで応援してくださるファンの方に、「好き」と言うのはどうなんですか?
塚越 アイドルとしてはファンのことを愛していますというのは当然のことでしょうから、言った方がいいと思いますよ。言われて嫌な人はいないでしょうから。挨拶のように言えばいいと思います。
水澤 挨拶ですか。ファンの方にメールを送る(※)んですが、みなさんは自分とアイドルが1対1でメールをする感覚だと思うんです。その中で、毎日「好き」って言ったほうがいいんですか? たまに言われた方がキュンとするのかな……とも思ったりするんですが。
(※注:登録したメンバーからメールが届くモバイル向けサービス、「NGT48mail」。同様のサービスは他のグループにもある)
塚越 たしかに、「部分強化」といって、いつもご褒美を貰えるより、たまにご褒美を貰えるほうがよりハマりやすくなる、ということはあります。たとえばギャンブルにハマるのも部分強化。たまに当たるからこそ、嬉しさが忘れられなくなるわけですね。
ですから、「好き」といった言葉とは別に、たまにあげる「ご褒美」を作ったほうがいいかもしれません。アイドルとしてファンに「好き」「愛してる」と伝えることは、メディアを使ってもできること。それと、ファンとの一対一での対応は別にする。部
分強化は一対一のときにするわけです。それが、たとえば握手会での対応だったりするんでしょうね。そこまでできれば、ファンの方は離れないと思います。
荻野 なるほど……この間「総選挙」の新潟開催が発表されたばかりなので、いい時期に聞けました。
更新:11月24日 00:05