2016年10月14日 公開
2023年05月16日 更新
AKB48の新たな姉妹グループとして、1月に劇場デビューしたNGT48。新潟から全国へ、そして世界へと羽ばたくためには、ダンスと歌以外にも学ぶべきことはたくさんある。
48グループの未来を担う若きメンバーたちが、異分野のプロ、エキスパートに教えを請うこの連載。第4回のテーマは、「世界で活躍するには」。16歳の本間日陽さんと14歳の日下部愛菜さんは、当たり前のように「世界」を相手にしなければならない世代だ。ハーバード・ビジネス・スクールで学び、ゴールドマン・サックス、マッキンゼーと世界の舞台で活躍してきた戸塚隆将氏に、グローバルに通用する考え方と行動の秘訣を学ぶ。<取材・構成=鈴木初日、写真撮影=永井浩>
アイドルにとっても、今や「世界に打って出る」という選択肢は無視できない時代。戸塚氏は、まだ10代の2人に「世界」を意識することの重要性を強調する。
戸塚 新潟にはスキー場がたくさんありますよね。昨年の12月に私も新潟のスキー場に行ったのですが、今は海外からの観光客、特にアジア各国やオーストラリアからの観光客がとても多い。私が学生の頃のスキー場の光景と比べると別世界です。むしろ東京よりもグローバルな感じがしました。その意味で、新潟は世界に向けて発信していくうえですごくチャンスがあるんじゃないか、と思うんです。
本間 私は新潟で育ったので、新潟に外国人の方がたくさんきてくれるのは嬉しいです。たしかに、スキーだけではなくて、新潟県は各地域に特色がありますから。
戸塚 いろいろな魅力がありますよね。それを活かしていきたいところですね。
日下部 NGT48は地域密着をテーマにして活動しています。まず新潟県全体の方に知っていただいて、次に日本全国に広まって、さらに世界に飛んでいけるようなグループになる。それがNGT48のテーマだと私は思っています。だから、そのためにはどうすれはいいだろう? というのは考えます。
戸塚 なるほど。まず新潟で一番になって、次に日本で一番になって、それで世界への扉が開く。……と、考えがちですよね。
日下部 違うんですか?
戸塚 実は、世界を狙うのと日本での活躍を狙うのは必ずしも同じ方向ではないんです。
たとえば、日本一のアイドルグループになるために、紅白に出ることを目標にする。では、紅白に出たら次はブロードウェイに呼ばれるか。あるいはハリウッドの映画産業から声がかかるかというとそうではないですよね。逆に、日本一になれなくても、向こうの視点で魅力のあるアイドルグループは声がかかるかもしれない。
だから、世界を目指すのであれば、いまから「グローバルな舞台で活躍するにはどうすればいいか」を頭のどこかで意識しながら頑張れるといいと思います。
もちろん、まずは目の前のところで、地元のファンをつかむというのは大事ですよ。同時にグローバルな意識を今のうちから持ってほしいと思うんです。
日下部 去年の10月に、韓国で開催されたフェスティバル(『アジアソングフェスティバル 2015』)に日本のアーティストの中でNGT48だけが出演したんです。まだCDデビューもしていない、活動をはじめて間もない私たちが呼んでいただけたこと、そもそも海外の方から知っていただいていることにびっくりしました。
だからステージに出る寸前まで、緊張と不安がありました。「結成して間もない私たちがこんな大きなフェスティバルに出演していいのか」「応援してくれる方がいるだろうか」「ブーイングの方が多いんじゃないか」……ネガティブな気持のほうが多くて、みんなステージに出る直前まで怖くて泣きそうだったんですよ。でも、ステージに出たらお客さんがすごく盛り上がってくださって。日本語で「かわいい」という声が聞こえてきたり、私たちが手でハートをつくるだけですごく喜んでくださったりとか。
戸塚 なるほど。海外のファンの人が興味を持つのは、日本のファンが興味を持つところとは違ったりします。そのポイントが日本人である私たちには必ずしもわからない。だから、アンテナを張っておいて、相手が興味を持ったポイントをさぐる。「これがいいのかもしれない」と思ったらそこに食い込めばいいんです。
たとえば、そこらへんにある自動販売機。あれは我々にとってはただの自動販売機なんですが、海外からくる人は「こんなに高性能な自動販売機は珍しい」というので写真を撮るわけです。
こんなふうに、「海外の人はこういうことに興味を持つのか」という発見があったら、それをヒントに海外で通用する強みを考えていけばいい。だから、韓国に行ったときのことを思い出してみて、向こうのファンの人たちが何に興味を持ってくれたのかをメモしておく。それをもとにみんなで話し合ってパフォーマンスに活かしてみるとかね。
本間 そういえば、韓国に行ったとき、女性のファンがすごく多かったです。黄色い声援だったのが珍しく感じました。これが世界でライブをしている感じなのかなって。
戸塚 女性のファンが多かったのはなぜでしょう? ひょっとすると、たとえばですが、韓国の女性は日本の女性がどんなお化粧をしているのか、どんなファッションをしているのか、興味を持っているのかもしれない。その延長で、日本のアイドルにも興味があるのかもしれないですね。そんなふうに考えてみればいいんです。
いずれにしても、活動をはじめたばかりの頃から、いきなり海外でパフォーマンスできるなんて、今までのアイドルにはない貴重な経験ですよね。
本間 いつかはNGT48として、海外でもライブを開催できたらいいなと思っているんですが、私たちが世界で活躍していくために、なにが必要でしょうか。
戸塚 まずは、先ほどお話したように、海外のファンを最初から意識しておくということですよね。早い段階から世界で活躍するんだという視点を持ち、海外のファンは何を求めているのかを意識しておく。そうすると、たとえば「パフォーマンスをどうやって高めようか」と考えた時に、日本で人気があって成功しているアイドルの真似だけをするのではなくて、海外のアーティストから学んでみよう、といった発想も出てきます。まずは最初から世界を意識する、というのが大事です。
次に、日本のアイドルらしさを大事にすること。日本のアイドルだからこそ、海外で読んでもらえる理由があるはずだからです。海外でも通用するためには、基本的な語学力があるとか、世界のことをよく知っていることも大事です。同時に、日本のこと、あるいは地元新潟のことをよく知っているということもいっそう大事になってきます。
本間 学校でも教わったことがあります。海外にホームステイするときは、日本の文化を知ることがホストファミリーにとっては喜ばしいことだから、日本についての知識をちゃんと伝えるようにしなさいって。やっぱり、海外に行くからこそ日本についての知識が必要なんですね。
戸塚 その通りです。もしかすると、韓国でパフォーマンスしたときにファンの皆さんがすごく興味を持ってくれたのは、パフォーマンスの中に日本らしさを感じたからなのかもしれませんね。海外のファンが求めている「日本のアイドルらしさ」はどこなのか、にアンテナを張る。そこをどんどん強化していくということが大事です。
その上で、NGT48は新潟発ということで、それをどうやって海外のファンに訴えていくのかを考える必要もあります。
本間 私たちの衣装には天然記念物のトキ(新潟県の「県の鳥」に指定)をイメージしたものがあります。NGTといえばこの衣装、というトレードマークのようになっているんです。活動を通じて、新潟の魅力を世界に発信できたらいいなと思います。
日下部 私は、新潟の名物のなかには、海外の方に好かれる食べ物が多いのかなと思っています。お米とか笹だんごとか、日本らしい食べ物で有名なものが新潟にはたくさんあるので。
戸塚 たしかに、海外では「日本といえばおいしい食事」といイメージがあります。なかでも新潟というと、おいしいものがいっぱいありますよね。
ここでも、自分たちがおいしいと思うものと、相手がおいしいと思うものは違います。日本人が美味しいと思うものと外国の人が美味しいと思うものは違う。こちらがおいしいと思ったものを押し付けるのではなくて、相手がおいしいと思うものはなにかを考えて、それを届けてあげることが大事です。
更新:11月24日 00:05