2016年10月17日 公開
2023年05月16日 更新
「2人とも、今話したようなことは、無意識にある程度はやれているはず」と塚越氏はいう。では、2人が今、特に悩んでいるのはどんなことなのだろうか。
荻野 私は人見知りはしなくて、握手会でもどんどん話せるんですが、会話にならないんです。一人で勝手に盛り上がってしまうところがあって。そこがダメなところかなと思っているんです。
塚越 ファンの方にどんな話をするんですか?
荻野 「今日の服、似合ってるね」とか「来てくれてありがとう」とかですね。
塚越 想像ですが、ファンの中には話すのが苦手な方も少なくないのでは?
荻野 はい。そうですね。
塚越 それなら、会話をリードしてあげるのはいいことだと思いますよ。その上で、オープンクエスチョンと言うんですが、イエスかノーか以外を答えさせる質問をしてみたら?「最近なにかいいことあった?」とか。質問という形でファンの方に興味を示すんです。
人は自分に興味を示してくれた人を好きになります。ところが、誰かに好かれようとすると、つい自分をアピールしようとしてしまいますよね。それで失敗することが多い。
特に、アイドルの世界では自分をアピールすることに懸命になっている人が多いのではないでしょうか。その中で、「ファンに興味を持つ」という姿勢は光るはずですよ。
「握手会で、アイドルが自分に興味を示して、質問してくれた」という体験は、たとえうまく答えられなかったとしても嬉しいはずです。相手がうまく答えられなくて困っているようだったら「私はね…」と話せばいいですし。
荻野 なるほど……(うなずきながら熱心にノートをとる)。
水澤 私は、つい最近の写真会(ファンとツーショット写真を撮るイベント)でのことなんですが。ファンの方に「また来てくれますか?」と聞いたら「別の子を推すことにしたから」と言われて、しょぼーんとしてしまって。
荻野 推し変ですね。
水澤 じゃあもう来ないんですか? って聞いたら「……たまに行くよ」。絶対来ないなって思ってしまって……。そういうときにどうすればいいんでしょうか?
塚越 指名替えですか(笑)。そういうときは「じゃあ、その子と私と両方に来て」と言う。「2人の女の子が自分を奪い合っている」という優越感を与えてあげましょう。
水澤 「2番目でいいから」って。
塚越 そうそう(笑)。恋愛関係だったら良くないことですが、アイドルなら、2番目でも来てもらっていれば挽回のチャンスがあるじゃないですか。「やっぱりいいな」と思い直してもらうチャンスは意地でも掴んでおいたほうがいい。
しょぼーんとしながらでも「私のところにも来てね。待ってるよ」「飽きたらまた戻って来てね」とかね。
水澤さんなら「疲れたら私のところに休みにおいで」と言うのもいいですよ。ライバルが若いメンバーだとしたら、なおさら包容力のある先生キャラで。来てもらうチャンスは意地でも離さない。
水澤 そうですね。あきらめてしまっていました。
塚越 次にがんばりましょう。絶対にあきらめてはダメ。一人でも逃さないという精神がないとナンバーワンにはなれません。
これはどんなビジネスでもそうですが、たとえ年に2回しか来ないお客さんでも、たまたま誰も来ない日にそのお客さんが来てくれれば売上はあがります。
お客さんになってくれたからには絶対に逃さない。その積み重ねが大事です。「総選挙」では、一票でも大事でしょうしね。
荻野 私たち、まだ足りないところばかりですか?
塚越 いえ、かなりできていますよ。
お二人とも売りのポイントがしっかりあります。荻野さんの「劇団おぎゆか」、水澤さんの先生キャラと、お二人とも「世界」を持っているのが素晴らしい。ファンの心理をもっと知れば、まさに盤石です。
荻野 うわー、嬉しいです! 私、「このままでいいのかな?」と悩んでいたこともあったんですが、今日お話をうかがって、これは続けるしかないなと思いました。絶対に誰にも負けないぞという気持ちにもなれましたし。ファンの方と会う機会を、もっと大事にしたいと改めて思いました。
水澤 私も、先生のお話をうかがって、ほかのメンバーとの差別化をがんばろうかなって思いました。
塚越 あとは、お二人は仲良しだと思うんだけど、メンバーのことを気にしていると負けちゃうから、ファンのことだけ考えるように。他の子のことを考えると、最後は勝ち残れないです。
荻野 他のメンバーをすごく応援しているファンの方が私のところに握手にくると、対応していても、気にしてしまうこともあります。もし私のことを好きになってくれたら「何で取ったの」って怒られちゃうかな、とか。
塚越 それは、トップを取るためにはいらない感情。「ファンのことしか考えない」という状態にしたほうがメンタルも保てると思います。そうしないと、最終的に心が折れてしまいますから。
私も陰ながら応援しますので、「てっぺん」をとってくださいね。
荻野 ありがとうございます!
水澤 ありがとうございます。今日はお仕事をだということを忘れるほど聞き入ってしまいました(笑)。
<『THE21』2016年6月号より>
更新:11月22日 00:05