2016年10月14日 公開
2023年05月16日 更新
「グローバル化の時代」「世界で活躍するには」と考えると、どうしてもまずは語学力を気にしてしまう。だが、それよりも先に身につけるべきことがある。
本間 私は、自分で「日本人的な性格だな」と思うことがあります。たとえば、言葉に出さなくても、相手がわかっている思い込んでしまうこと。小さなことでも「ありがとう」と口に出したほうがいいと思うのですが、つい忘れてしまうこと。こういう「日本人的な性格」をどうしたら「グローバル的な性格」に変えられるでしょうか?
戸塚 たしかに、「ありがとう」は日本人も言いますが、向こうの人のほうがより「ありがとう」が全面に出てきますよね。日本人がよく使うのは「すみません」という言葉で、感謝と謝罪の両方の気持ちを含んでいる便利な言葉です。感謝の気持ちを表すときには「ありがとう」を使うようにするだけでも、どんどん前向きになっていけると思います。
本間 あとは、初対面のときにはシャイな部分が出てきてしまって、なかなか踏み込めないという状況がよくあります。
戸塚 それは「モード」を変えた方がいいですね。日本人と接するときのモードと外国人に接するときのモードを頭の中で切り替える。「すみません」より「ありがとう」を使おうというのもその一つ。あるいは、控え目でいるよりはニコッと笑って自分を出したほうがいいとか。
切り替えるといっても、瞬間的に切り替えようとするとむずかしいものです。だから、これも海外への飛行機の中で切り替えるとか。「今日は海外の方と会う可能性があるな」と思う日には朝からあらかじめ「スイッチ」を入れておくとかするといいですよ。
先ほど握手会に海外からファンの方がいらっしゃるという話もありましたが、これからは日本にいても外国人と接することがどんどん増えていくでしょう。それにともなって、「モード」を切り替える機会も増えていく。すると、私たちの性格も徐々に変わっていくでしょうね。でも、今のところは基本的に控えめな日本人同士でコミュニケーションをしているので、突然変えるのは難しいと思っておいた方がいいと思います。
本間 グループ全体で話し合うときに、意見は持っているのに、言おうかどうかすごく迷ってしまうときがあります。
戸塚 意見を言ったら反対されるかもしれないし、自分の言うことが間違って、グループを間違った方向に導いてしまうかもしれない。そんなふうに思いますよね。
でも、それも受け入れて発言するのが「リーダーシップ」なんです。自分が正しいと思ったことをみんなに伝える。反対されてもいいやと思って言ってみる。失敗したら「ごめん」と言う。
それが積み重なってどんどん成長していくんです。人数が多いなかで、みんなで意見をまとめていくのは大変だとは思いますが。
本間 そこでも「日本人的な性格」が出ているなと感じてしまうんですよね。「これを言ったら傷つく人がいるかもしれない」と思うと、言えなかったりします。
戸塚 それなら、意見を言うときに理由を明確にするといいですね。「私はこうだと思います。なぜならば……だから」という理由がはっきりしていると相手も納得しやすい。一方、反対するときにも、「嫌いだから反対」といった感情論ではなく、「理由が違うと思うから反対」と言えるわけです。
理由=根拠をはっきりさせた上で意見を言い合うようにすれば、人と人とがぶつかり合うのではなくて、理由と理由とがぶつかり合うことになります。人と人がぶつかり合ったら傷つきますが、理由と理由はいくらでもぶつけあっても大丈夫。YESとNOがはっきりしている英語のコミュニケーションでは、相手を傷つけないために根拠をぶつけあうわけです。日本語でのコミュニケーションでも、学ぶべきところですよね。
本間 私たちはどうしても、意見を言い合うことにそれ以外の感情を挟んでしまうことが多いですね。
戸塚 日本語で話しているときは理由がふわふわっとしていることが多いですよね。なんとなく好き、なんとなく嫌いとか。
本間 英語は主語・述語・目的語がはっきりしていますけど、日本語は主語を省いてもなんとなく伝わったりします。そういうことの積み重ねなんでしょうか。
戸塚 だと思います。だから、自分たちが日本のことをどれだけ海外に発信できるのか、を確かめるときも、まずは日本語できちんと説明できているかどうかをチェックしなくてはいけません。「これはこうなっています。なぜならば……だから」と。そうしておけば、後で外国語を勉強すればいくらでも世界に発信できますから。
つい「英語が苦手だから言えない」と思いがちだけれども、実は日本語ではっきりと説明ができていないことがすごく多い。日頃から日本語でもはっきりと論理的に話すことを意識していると、外国の方とコミュニケーションするときにすごくスムーズですよ。
根拠を明確にする思考は、目標に向っていくうえでも大事です。今は二人とも、目の前のお仕事をがんばるので精一杯かもしれません。でも、いずれ仕事の方向を決めなければいけないときが来る。そこで明確な理由がないと流されてしまいます。A、Bという2つの仕事があって、なんとなくAを選ぶ人と、「私はどうしてもブロードウェイの舞台に立ちたいから」という明確な理由を持ってAを選ぶ人。何年かするとどんどん差がついていきます。自分の意見と、明確な理由を持っていることは英語力より大事なことです。
日下部 どうしたらちゃんと自分なりの意見と理由を持てるようになりますか?
戸塚 仕事をするなかで、「なぜ、私は今これをやっているんだろう」と常に理由を探すこと。そして、その理由を一言で言えるかどうか試してみる。一言で言えなければまだ理由が曖昧なので、もっとはっきりした言葉にする努力をしましょう。
本間 これからは、いつも理由をしっかり考えて一つひとつの仕事に取り組むようにします。
次のページ
ローカルだからこそ、グローバルなチャンスがある >
更新:11月24日 00:05