2016年04月15日 公開
2023年05月16日 更新
社会を変えるために、いかに効果的な戦略を選択していくか。それを考えると、アイドルだからこそとれる方法もある。
山口 前に、海外ボランティア留学をしてみたいと思って調べたことがあるんです。カンボジアとかを考えていたんですが、かなり費用がかかるし、留学している間にお金を稼げるわけでもないから、けっこうな額を貯めてからいかないといけなくて。
土井 そうですね。
山口 生活もあるので、やりたい気持があっても、追いつかない。そういうところは、社会貢献活動をやっている人はどうしているんだろうと思っていました。
土井 なるほど。それは多くの人が感じていることです。私の場合は、普段は「普通の」弁護士の仕事をやりながら、時間を作って難民の弁護をやったりしていたんです。だから、お二人もアイドルというお仕事があって一応の生活はなんとかなるという前提のもと、仕事以外の時間を社会貢献に使うという手もあります。でも、アイドルの仕事の一環としてでも社会貢献ができますよね。被災地でのイベントなどは、本当に素晴らしいことだと思います。
西村 私は、実現は難しいことかもしれないんですけれど、やってみたいことがあります。子供たちにアイドルの衣装を着せたり、メイクをしてあげたりする機会を作れないかなと思っているんです。小さい女の子はアイドルという職業や、かわいい髪型や衣装に憧れますよね。いろいろな事情で、それが難しい環境にある子たちに体験させてあげたいなって。
土井 とてもいいと思いますよ。それは、たとえば私たちがやってもあまり意味がない。アイドルがお手伝いをするからこそ、「本物」になるわけですよね。
苦しい立場に置かれている子供たちはたくさんいます。世界には、戦争で難民になっている子もいるし、平和な日本にもいろんな子がいます。
西村 施設に入っている子とか。
土井 そうですね。親がいない子や、親と暮らせない子、難しい病や怪我と戦っている子などもたくさんいます。そういう子に夢を叶えてあげる機会を作ってあげたら、生きる糧となる素敵な思い出になるかもしれません。
西村 私の家では親の方針で、長期休みになると、施設にいる子を3人くらい毎年あずかっていました。
土井 季節的な里親をやっていたのですね。素晴らしいご両親です。
西村 それで、長期休みの間だけでも家庭での生活をして、本当に喜んでくれて、施設に帰るお別れの時にはすごく泣いてしまったり……そういう経験があるので。
土井 なるほどね。西村さんにひとつお願いしていいですか。いつか日本のアンジェリーナ・ジョリーになってください。
西村 えっ、どういうことでしょうか(笑)。
土井 実は、ヒューマン・ライツ・ウォッチがやっている主要な活動の一つが、実の親と暮らせていない子どもたちのほとんどが施設に入所していますが、その子どもたちも、かわりの家族と暮らせる社会にしようという活動なんです。家族と暮らせるということは、学校に行けることと同じように子どもにとって当たり前の権利で、「子どもの権利条約」でも約束されていることです。
アメリカでは、アンジェリーナ・ジョリーのような有名人も含めて、里親や養親になることをよしとする風潮があります。日本では「そういう子は施設にいて当たり前」という市民意識なんですよね。それが反映して国の政策も遅れているわけです。「アメリカにはアンジェリーナ・ジョリーがいて、いいな」と思います。
今ははまだ若いですし、アイドルなので無理だと思いますが(笑)、いつか時期が来て「そういうのもありかな」って思えるようだったら、恵まれない子どもを里親として育てる、という選択肢をぜひ考えてみて、そのような生き方を世間に示してほしいです。もし自分では難しいとしても、そうしたメッセージを広げる活動を、お願いしたいです。
西村 はい、考えてみます。
山口 私がアイドルになった理由の一つは、音楽は世界共通で、言葉の壁はあっても音楽なら共有できるからです。アイドルとして歌やダンスの技術を磨いて、それで少しでもみんなの心をつなげたらいいなと思うんです。
土井 私がボランティアで行っていたエリトリアは、アフリカでも最貧国でした。でも、そういう場所にも音楽は必ずあります。たとえお金がなくても、歌えばいいし、踊ればいいものですから。
音楽で人の気持ちは変わると思います。それは私たち一般人には難しいこと。山口さんの考えはすばらしいと思います。
更新:11月24日 00:05