2016年04月15日 公開
2023年05月16日 更新
アイドルになる前からボランティア活動にも関わってきたという山口さん。社会貢献活動についてのこんな疑問があるという。
山口 募金しても、実際にどこまで必要としている人に届いているのかな、というのがすごく疑問です。東北の復興のボランティアに参加していた時も、結構色んな所から募金があったと思うのですが、被災者の役に立っているのかな? と感じることもあったので、どこにどう使われているんだろう? って。
土井 とてもいい質問ですね。被災地復興については、私は直接関わっていませんが、山口さんの疑問は日本のNGOやNPO、市民団体に全般に対する重要な問いかけだと思います。
私たちは、もっとプロフェッショナルになって組織の透明性を高めていかなくてはいかないということです。企業や政府は透明性を高めるようにいわれて、不正会計でもしようものなら厳しい批判を受けます。それはNGOやNPOも本当は同じはずです。
日本の市民団体では、大きな不正が行われているということは今はまずないと思います。ただ、まだ小さくて、力がない団体が多いせいか、会計が素人的になっていたり、あるいは会計自体は明瞭でもそれをきちんと対外発信できていない、という部分があるかもしれません。
その点、アメリカはチャリティーの文化がすごく発達しているので、「チャリティーナビゲーター」という会計の透明性などを監査している独立組織があるときいています。そこが、あたかもレストランに星をつけるように慈善団体をランク付けしている。だから、寄付をしたい人は、いちいち各団体の財務諸表をチェックしたりしなくても、そこで格付けのいい団体を選べばいいようになっています。
山口 携帯会社でも、毎月料金から募金するプランがありますよね。私も募金しているのですが、本当に必要としている人に届いているのかな? というのが一番気になります。
土井 なるほど。もちろん多くの場合は届いてはいるでしょうが、お金を送るにしても事務処理をするための人件費がかかりますからね。オーバーヘッドというのですが、その必要経費はいったいどれくらいの割合なのか、といった疑問もあるでしょう。米国などでは各団体のオーバーヘッド率の比較もしばしばさrているようです。そういう情報がまだ日本では不足していますよね。
私たちも、オーバーヘッドの率を減らすようにいつも頑張っています。そうしたことも含めて、ちゃんと説明しないと山口さんのように善意で募金してくださっている人にも疑問が出てきてしまいますよね。「ちゃんと届いている」という実感を持ってもらえるためにも、さらに情報発信が必要ですね。活動をしている者として、山口さんに宿題をもらった気分です。
山口 いえ、そんな(笑)。
土井 私は20歳くらいから支援活動を始めたんですが、知れば知るほど「正しいことをやる」だけではなく「正しくやる」ということは重要だと思うようになりした。
たとえば、アフリカにはこの50年、日本政府も含め世界中から信じられないくらいのお金が援助という形で投入されている。じゃあ、援助を受けた国の人びとは豊かになっているのかというと、たった数パーセントしか必要な人に届いておらず、むしろ貧困率があがっているという指摘もある。お金を出せばいいというものではなく、届かないといけない。さらに、届け方も問題で、汚職が横行している国や、人々のためになる政治が行われていない国もある。そういう国の政府にお金を届けても、偉い人のポケットに入っているということも多く、援助のうちたった数パーセントしか必要な人に届いていないという指摘もある。
「清らかな心で支援をすればいい」ではなくて、結果が出るやり方は何なのかをプロフェッショナルに考えていかないといけません。そのことは常に考えさせられますね。
更新:11月28日 00:05