石井昭人([株]ツナグ. 代表取締役)

なぜローソンでは、現場発の挑戦が次々と生まれたのか。石井昭人氏が語る企業風土と、起業に懸けた思いを紹介する。
挑戦を促すローソンの企業風土
ーーローソンに移籍されるにあたって、セブンイレブンとの違いで驚いた点はありますか?
【石井】ローソンに移籍して驚いたのは、現場の社員に挑戦させようという風土が根付いている点です。
ナチュラルローソンというブランドをご存じですか?あれは実は、現場社員のアイデアから生まれたものなんです。
ーーえ!?そうなんですか!
【石井】そうなんです。この事例だけでも、挑戦を受け入れる風土がわかりますよね。失敗することよりむしろ、挑戦しないことに対して叱責されるような企業でした。
私が役員になった後、ある会議の場で「ちょっと今は失敗できない状況なので...」と進言してしまい、経営陣からこっぴどく叱られたことがあります。
「リーダーたるあなたが失敗できませんなんて言葉を使ったら、みんながそういった考えになってしまいますよ!」というお叱りは、今でも強く印象に残っています。
リスクを計算した新しい出店への挑戦
ーーローソンは非常に積極的な企業戦略を取られているということで、石井さんの専門分野である出店戦略においても、大胆な戦略を取られた実例を伺ってもよろしいでしょうか?
【石井】例えば、1つのビルの別の階に複数店舗を出店したことがあります。
日本にはすでに無数にコンビニが存在し、飽和状態であると指摘され続けています。ただそれでも、人々は新しいものを求めますから新規出店を続ける必要があるので、こういった手を打つ必要があるんです。
この「1つのビルへの複数出店」戦略ですが、私はやってよかったと思います。
というのも、ビルの上層階に出店した店は、すべてセルフレジだったんです。当時はまだセルフレジが浸透しきっておらず、お客様も慣れていないという状況でした。そんな時期に完全セルフレジの店舗を展開し、お客様に慣れていただけたことは、回りまわってよい影響を与えられたのではと自負しています。
60歳での再起業と株式会社ツナグ.の設立
ーー現在はローソンを退社され、出店戦略や営業戦略のアドバイスを行う㈱ツナグ.を設立されました。その理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
【石井】冒頭でも申し上げましたが、私は20代で独立に失敗しています。それ以降、心のどこかで「いつか必ずリベンジする」という思いを抱いていました。そのリベンジが、ツナグ.の設立なんです。いわば、自分の人生における最後の宿題です。
ーー事業において最も力を入れている部分はどこでしょうか?
【石井】ローソン在籍時代、いろいろな業種業態の方とお付き合いをさせていただき、「出店をしたいけど、やり方がわからない」というお悩みを多く聞いていました。
もう一つ、特にスタートアップの中小企業や若手の経営者の方々から、「いい商品、いいサービスはできたのに売り方がわからない」「人脈がなくてとっかかりがつかめない」という相談も多かったです。当時はローソンの社員という手前、そういう方に対して何もできなかったのが心残りでした。
なので、やっぱりこの二つに対してきちんと伴走をしながら、一緒になって成功に向かえるようなビジネスができないかなっていうふうに考えて立ち上げたのがこの会社でした。
ーーノウハウを持たない若手経営者に、ご自身の知見を伝えていらっしゃるんですね。ご著書の中でもそういった内容が盛り込まれているのでしょうか?
【石井】はい。私自身、この本の執筆過程を経て自分自身の理論を整理することができました。また、流通・小売りに限った話ではなく、ビジネス全般に通じる内容となるよう心掛けました。業界を問わず、あらゆるビジネスマンに手に取っていただきたいです。