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雑務を他人に任せる人ほど評価される? 3万人を分析した著者が気づいた間違い

木暮太一(一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事)

「仕事ができる人の頭のなか」

「仕事ができる人」と聞くと、業務効率化や時短に秀でた人を想像するかもしれない。しかし、本当にそれだけが重要なのだろうか?木暮太一氏の著書『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)より解説する。

※本稿は、木暮太一著『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

仕事ができる人は、任せるのがうまい人?

ぼくが社会人1年目だったときの話です。ぼく自身は周囲が驚くほどダメ人材でしたが、それでもなんとか「成果」を出そうと長時間労働を自主的にしていました。できることが少ないので長時間労働でカバーしようとしていたんです。

一方で、同じ部署の先輩たちは、仕事ができて、かつものすごく忙しく動き回っていました。当時のぼくからは、みんなが超人に見えました。そして、どれだけ業務を効率化させているんだろうか?どんな仕組みを持っているんだろうか?なんでそんなに結果が出せるんだろうか?と考えていました。

当時読んでいた仕事術の本には、「自分ができることは自分でやり、他人に任せられることはどんどんまわりに任せていこう」と書いてあったので、ぼくも人に任せて効率化させよう、無駄な業務を見極め排除しよう、などと考えていました。

でも、これがいけなかった。このときぼくがやっていたのは本当に「筋違い」だったんです。

あるとき、超優秀な先輩のHさんが、「仕事術」の理論と真逆のことをやっているのを目にしたんです。そのHさんは、毎日朝7時前には出社し、終電まで会社にいる超ハードワーカーです。しかも、ものすごく優秀で、部内の全員から信頼されていました。こなしている仕事の量は、少なく見積もっても当時のぼくの20倍程度あったように思います。大げさではなく、それくらいスーパーマンな方でした。

でもある日、Hさんが会議資料をファイリングする手伝いをしていたんです。資料作りではなく、出力した資料に穴をあけ、ファイリングする雑務です。言葉を選ばずに言えば、ファイリングなんてぼくのような下っ端にやらせておけばいいタスクです。そして実際、入社1年目~3年目のメンバーが呼ばれてファイリングをするように指示を受けていました。

そこに、ものすごく忙しかったであろうHさんも来て、一緒に作業をしてくれたんです。

「Hさんは一体なにを考えているんだろう......?」ぼくは不思議で仕方がありませんでした。仕事術の理論で言えば、これはHさんがやるべきことではありません。しかし、彼は率先して手伝っていたんです。

実は、ここに「仕事ができる人」の本質がありました。しかし残念ながら、ぼくはその意味に気づくことができませんでした。

 

仕事ができる人は、負荷を減らしてくれる人

業務効率化や時短、生産性向上の視点で考えると、どうしても単純作業や人に任せられる仕事は誰か他の人に任せるという発想になりがちです。たしかにそれも必要かもしれません。でも、単に仕事を人に任せれば「仕事ができる人」になるかというと、そうではありません。むしろ逆です。

実際、仕事を右から左に受け流しているだけの人は、仕事ができる人とは思われないでしょう。自分は何もせず人に任せてばかりの人は反感を食らい、逆に評価を下げてしまうと思います。

ここに仕事ができる人が共通して持っていた、重要な認識があります。結論を言うと、「仕事ができる人」とは、「相手の負荷を減らせる人」です。ぼくは3万人以上のビジネスパーソンを見てきました。業界はさまざまですが、仕事ができる人は例外なく「相手の負荷を減らすこと」を考えている人でした。

「相手の負荷を減らす」には、大きく分けて2つあります。1つ目は「相手の脳内ストレスを減らすこと」、そして2つ目は「相手のタスクを肩代わりすること」です。

まずは、相手の脳内ストレスを減らせれば、「仕事ができる」と評価されます。脳内ストレスとは「考えなきゃいけない」「理解しなければいけない」「覚えておかなければいけない」「伝えなければいけない」など、仕事をするうえで脳にかかる負荷のことです。

嫌な思いをしているわけではないですが、考える・相手の話を理解する・大事なことを忘れずに覚えておくなどは、それなりに大変でエネルギーが必要です。この脳にかかるストレスを減らしてくれる人は「仕事ができる」と評価されるのです。

話をわかりやすく整理して伝えたり、相手が動きやすいように整えたりしてあげられれば、相手の脳内ストレスが減ります。また、あなたが締め切りを守り、段取りよく仕事を進めれば、相手はスケジュールどおりに進めることができ余計な気を遣わずに済みます。これも相手の脳内ストレスを減らすことになります。

忙しい人であればあるほど「考える」「気を遣う」「心配する」など労力がかかることを減らしたいと感じています。あなたがそれを減らせれば相手の負荷は減ることになります。

逆に、延々と論点がズレた話をしたり、何度も同じ指摘をされてしまったり、言われないと行動できない人は、相手の脳内ストレスを増やしていることになります。

だから「仕事ができない人」と思われてしまうわけです。そのうえで、本来相手がするべきタスクを肩代わりしてあげることが相手の負荷を減らすことになります。

プロフィール

木暮太一(こぐれ・たいち)

言語化コンサルタント・作家・一般社団法人教育コミュニケーション協会 代表理事

14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。『リーダーの言語化』『すごい言語化』(ともにダイヤモンド社)ほか、著書68冊、累計195万部。

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