
手を変え品を変え部下に声かけをしているのに、なかなか思うようにチームが動いてくれない......。その理由の一つに「リーダーの覚悟が見えていない」ことがあると、五十嵐剛氏は指摘する。では、「覚悟」とは具体的にどういうことか。部下にかけるべき言葉を教えてもらった。
※本稿は、五十嵐剛著『任せる勇気』(三笠書房)から一部抜粋・編集したものです。
部下へどのように覚悟を見せるか。それは「責任の所在」を明らかにしてあげるだけです。
「責任は私がとる」
この一言を、必ず伝えましょう。
そもそも日本は、長らく根付いてしまった「失敗をしてはいけない文化」からの脱却が今、急務となっています。
1979年に出版された、アメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルの著書『Japan as No.1』が、日本で一世を風靡したことをご存じでしょうか。日本の高度経済成長の要因を分析し、アメリカへの教訓として書かれた本です。
実際、1980年代までの日本には勢いがありました。当時、私はまだ入社数年目の平社員でしたが、「思ったことはやってみろ」という挑戦奨励の風潮が、たしかに存在していました。
しかし、バブル崩壊とともに経済成長がシュリンクし、企業は内向きに、そして過剰なまでに守りの姿勢に入っていきます。
「前例にないことはしない」
「リスクがあったらやめさせる」
「手順書、チェックリストでミスを予防する」
細かな手順や前例主義に縛られ、結果的にあらゆる企業で「挑戦できない空気」が蔓延してしまったのです。
予防線を張ること自体を否定するつもりはありません。
しかし、組織内の「挑戦できない空気感」は放置するべきではありません。
前例主義に陥っている組織では、新しいアイデアは芽を出す前に摘まれ、優秀な人材は挑戦の場を求めて外に出ていってしまいます。残った人も「言われたことだけをやる」ようになり、組織の活力はどんどん失われていく。
やがて、変化に対応できない硬直した集団として、市場競争から取り残されてしまうのです。
では、どうすればこの空気感を壊すことができるのか。
その鍵を握るのが、まさにリーダーの「責任宣言」です。
「責任は私がとる」というリーダーの意思表示こそが、「失敗を恐れる文化」にわずかながらも風穴を開け、停滞した組織を動かす起爆剤になります。
実際に挑戦するのは現場であり、メンバーです。
そんな彼らの「失敗したらどうしよう......」という不安の大部分は、このリーダーの覚悟の一言で手放すことができるのです。
さらに、今は未来予測の難しいVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代です。何が正しく、何が普通なのか。正解も常識も日々変わっていきます。
例えば、私が入社した頃のNECでは、汎用コンピューター「ACOS」という自社開発製品が主流でした。情報は社内で独占され、古株社員ほど知識も経験も豊富。社外の人より詳しくて当然、という時代でした。
しかし、今やNECも「OPENシステム」での提供が多くなっています。つまり情報は誰でもアクセスできるものとなり、場合によってはクライアントや若い世代のほうが詳しい、という逆転現象が起きているのです。
「リーダーのほうがノウハウを持っている」時代は、もはや過去の遺物なのです。若い人も、必要な情報を得られ、手軽にノウハウを学ぶことができます。
つまり、すでに仕事を任せられるだけの素養は持っている、ということ。素養のある人を活かさない手はありません。
ただし、そのためには「若いうちの失敗であれば、少しくらいは許容する」という挑戦地盤が不可欠です。
だからこそ、「私が責任をとる」と明言しましょう。
たとえ公言しなくても、何かトラブルが起これば、リーダーであるあなたは責任をとるしかありません。それなら最初に宣言してしまったほうが、自分の覚悟も決まりますし、何よりもかっこいいじゃないですか。
更新:05月30日 00:05