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断り方にもコツがある! 職場によくいる 「面倒なあの人」のトリセツ

2025年07月15日 公開

井上智介(精神科医/産業医)

どんな職場も、完璧な人ばかりではない。中には、「他人の悪口ばかり言う」「ことあるごとに自慢や自分語りをしてくる」といった、「どうにも気持ち良くつきあえない面倒な人」もいるはず。しかし職場では、そうした人ともうまくつきあわねばならない。そのためのコツを、産業医で精神科医の井上智介氏に聞いた。

※本稿は、『THE21』2024年8月号より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

面倒な人の5類型とその対処法

会社で働く以上、職場にいる様々な人と協調しながら仕事をこなしていくことが不可欠。その中には、どうにも関係がうまくいかない「面倒な人」がいるものです。プライベートと違い、職場ではそういう人ともつきあっていかなければなりません。この記事では、そんな人とのつきあい方をご紹介します。

ひと口に面倒な人と言ってもその内実は多種多様です。そこで今回は、大多数の人が「厄介だな」と感じる人に絞り、次の5つのタイプに分けてお話ししていきましょう。

―――――――――――――
①人の悪口ばかり言う人
②自慢話やマウンティングばかりしてくる人
③ハラスメントが激しい人
④無茶振りしてくる人
⑤責任転嫁をしてくる人
―――――――――――――

いかがでしょうか。皆さんの頭の中にも、当てはまる上司や同僚の顔が浮かんだかもしれませんね。ここからは①から順番に、そういう人が抱える心理的背景やつきあい方を解説していきます。

 

他人を攻撃するのは潜在的な不安があるから

まず①の「人の悪口ばかり言う人」ですが、こうした人は心の中に潜在的な不安や劣等感を抱えている場合が多いもの。第三者を落とすことで、自分の評価を相対的に上げようとしているのです。

もしくは、とにかく「社員の誰もが平等に扱われ、同じように働くべきだ」という観念が行きすぎてそうなっている人もいます。何かが平均値より劣る人や、逆にできすぎる人に対して「足並みを乱している」と感じ、歪んだ正義感で粗探しをするようなタイプです。

いずれにせよ、こういう人と協調していくには、相手の「心情」にのみフォーカスすることが重要です。その人の気持ちには共感したフリをしつつ、悪口には興味を見せない。これがちょうどいいでしょう。「悪口仲間」と思われないように注意しなくてはいけません。

例えば、業務システムの更新を受けて「前のほうが便利だった。ほんとあの部署の人たちは......」と言われたら、新システムの使いにくさについては共感しつつ、悪口部分はスルーするようなイメージです。

次に②の「自慢話やマウンティングばかりしてくる人」ですが、これも背景としては、悪口・陰口と大差ありません。相手にいつか抜かれるかも、という恐怖を抱えているからこそ、相手に直接「自分が上」と、示しておきたくなってしまうんです。

とはいえこのタイプの場合、敵意の矢印が自分に向くわけですから、①のように表面を取り繕う必要はありません。しんどいのなら相手にせず、距離を取るのがベストです。人によって得意不得意は違いますから、たとえその自慢やマウントが「刺さる内容」でも気に病む必要はゼロ。むしろ、「抜かされそうで不安なのかな?」などと内心で見下してみて、余裕を取り戻すのも一案だと思います。

そして、5類型の中でも特に深刻な問題につながるのが、③の「ハラスメントが激しい人」ですよね。こういう人には、前の二つとは比にならないほど悩まれる方もいるでしょう。

特に厄介なのが「悪意があるわけではない」という人。実はこちらのほうが多数派です。相手がどう感じるかを考えられない、言わば「想像力のない、自己愛や自己顕示欲ばかりが強い人」と言えるでしょう。

しかし、このタイプが上司になってしまったら、心理なんて気にしている場合ではありません。うまく距離を取ることを最優先にしてください。単に接触回数を減らすだけでも、メンタルの回復が見込めます。

 

自分を傷つける人からは手を尽くして距離を取れ

「面倒な人」からうまく距離を取るコツ

とにかく距離を取れ、という話を続けてしまいましたが、実はそれにもコツがあります。まず、物理的な距離と精神的な距離を両方確保すること。言い方を変えれば「関係性の濃度を薄めること」が肝心です。

例えば、メールを送るときにあえて同僚や上司をCCに入れたり、個人チャットではなく複数人のチャットで話したりするだけでも濃度は薄まります。また、コロナ対策で在宅勤務が制度化したという人は、ぜひ活用していきましょう。顔を合わせる日が1日減るだけで、ずいぶん楽になるものです。

他には、リアクションを薄くしてみるのも一つの手。面倒な人に狙われてしまう方には、「職場ではとにかく愛想良く」と心がけている方が多いんです。邪険にしろとは言いませんが、合わない人に対しては返事を簡潔にし、目を合わせる回数を減らすなど工夫をしてみましょう。

また、よくあるのが、避けようとするあまり逆にその人のことが気になってしまうという失敗。あの人は今日の昼もどこかに行ったとか、今はどこの会議室にいるとか、常にそんなことを考えてしまうケースです。これでは心が休まりません。イヤだな、と思う人には極力無関心でいることが、つぶされることなく接していくコツなのです。

 

「断り文句」をいくつかストックしておこう

「無茶振り」の断り方

さて、続いて④の「無茶振りしてくる人」ですが、これも要するに、相手が何を求め、何を嫌がるのかわからない、想像力のなさが、そうした行動の原因になっています。

この類の人を相手にするときは「断る術」を知っておくことが何より重要です。そうでないとすべて引き受ける羽目になり、オーバーワークで自分がつぶされてしまいます。まずははっきり「NO」を言えるようになりましょう。

もちろん、断り方にもコツがあります。中でも最も大切なのが「断る理由をスッと自然に出せること」です。これこそ、相手に悪い印象を与えずに断る最大のポイントになります。

理由そのものはなんでも構いません。ベストは自分の抱えている仕事の量や内容をすぐ言語化して相手を納得させられることですが、別に「子どものお迎えがあるので」とか「友人と夕方から予定が」といったことでもOK。

残業や休日出勤が絡む頼みなら、「その日は先約が」くらいの具体度で大丈夫です。ある程度はウソを混ぜてしまっても問題なし。自分を守ることを最優先にしてください。可能なら、汎用性の高い「理由」をいくつかストックしておければより良いですね。

そのうえで、例えば「今日中ではなくて今週中なら」などと現実的なプランを提案してみたり、「すみません、次の機会にはぜひ」と申し訳なさそうにしたりしておけば、関係が険悪になるのも防げます。

最後に⑤の「責任転嫁をしてくる人」について。これは主に「自分が傷つきたくない、という気持ちが強すぎる人」と「自分がミスするわけないと思っている人」に分けられます。

このうち前者であれば、話せばわかってくれる人もいるのですが、やはりまずすべきは「証拠の保全」です。幸い最近はメールもチャットも普及しましたので、口頭での指示もメールで確認するなどしてテキストに残しておくのは鉄則でしょう。先述した「なるべく複数人のチャットで話す」という心がけは、この意味でもお勧めです。

 

誰もが、誰かにとって「厄介な人」になっている

「誰にでも好かれる」を目指さないこと

ここまで読んで「この対策を講じていたら、自分が『面倒な人』になってしまうのでは」と思われた方がいるかもしれません。しかし、そもそも「誰にも面倒がられない人」なんて、まず存在しないのです。

むしろ「自分は面倒な人ではない、自分は大丈夫」という思い込みのほうが、いずれあなたを「面倒な人」に変えてしまう恐れが高いと思います。将来ハラスメントをする側に回ってしまわないよう、ぜひ日ごろから自分の言動が相手を不快にさせていないかを考え、感謝や謝罪のコミュニケーションをまめに取ることを、改めて心掛けてください。

それができていれば、自分の心を守るための「多少の自己本位さ」はまったく問題ありません。先述した「面倒な人」はもちろん、そこまでではないけどどうにも相性が......という人のことも、自分優先で避けてしまっていいのです。

もちろん、そうすると相手もあなたのことを「なんだか面倒な人だ」と感じ、うっすら嫌うようになる可能性はあります。ですがむしろ、そういう人とはそのくらいの距離感でつき合うのが、お互い一番気持ち良く働けるのではないでしょうか。

八方美人になろうとせず、適度な「ラフさ」を持つことが、心穏やかに仕事に励むために重要なことなのです。

 

【井上智介(いのうえ・ともすけ)】
兵庫県出身。島根大学医学部を卒業後、臨床研修を経て、現在は主に産業医・精神科医として活動中。産業医としては毎月約30社を訪問している。「おおざっぱに(rough)笑って(laugh)生きてほしい」という思いから「ラフドクター」を名乗り、金髪アフロと赤メガネをトレードマークに発信活動にも注力。『「あの人がいるだけで会社がしんどい......」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。

 

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