
ハーバードでの挫折を乗り越え、MITでMBAを取得。その後、
※本稿は、真田幸光氏とPHP研究所の共同運営サロン「経済新聞が伝えない世界情勢の深相~真田が現代の戦国絵図を読む~」より内容を一部抜粋・編集したものです。
ーー山田さんは、ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)の両方でMBAを取得しています。東京銀行でも、両校のMBAを取って帰国した人は、山田さんだけだったと思います。
【山田】最初に留学したのはハーバードでした。ハーバードではMBA課程の1年目が終わるタイミングで相対評価による選抜があるのですが、私はそこで落とされてしまい...。
銀行からは「2年間でMBAを取得すること」と辞令を与えられていたため、残り1年で学位を取れる大学を探さなければならなくなり、そこで入りなおしたのがMITのビジネススクールです。
結果、残りの1年でMBAを取得。ハーバードのMBAも、後に銀行に特例を認めてもらい、追加の留学期間で取得しました。
ーーハーバードではケースメソッドが中心で、MITは講義形式が中心だと聞きます。実際に両方で学び、どちらが役立ったと感じますか。
【山田】ハーバードはほぼすべての授業がケースメソッドです。ケースメソッドとは、現実の経営事例(ケース)を教材にして議論を行いながら、“現実と同等の状況で意思決定を行う”訓練を積み重ねることで経営スキルを修得する経営教育です。
翌日に授業が3つあれば、3つのケースを想定して準備しなければなりません。その際、学生はスタディグループを作って協力しながら準備します。日本人は英語を読む速度が遅いため、グループへ入れてもらいにくいこともあり、人間関係の難しさもありました。
ーーMITはいかがでしょうか?
【山田】MITでもハーバードのケース教材を使います。しかし、教員がケースディスカッションを進めることに慣れていない場合、結局は「重要なポイントはこれです」と説明する講義形式になりがちです。
ファイナンスなどの基礎知識を学ぶなら、講義形式のほうが理解しやすいと思います。例えば、ディスカウントキャッシュフローのような計算をケースだけで学ぶと、基礎をわかっていない学生がメチャクチャな式を出したりして議論が違う方向へ進み、結局、何を学ぶ授業だったのか分からなくなることがあります。
一方、ケースメソッドは実社会に近いという長所があります。
外資系企業の会議では、発言すればするだけ評価されます。最後に議論をまとめる発言ができれば高く評価されますが、議論が自分の予想どおりに進む保証はありません。そのため、発言回数を確保しようと、最初や2番目に話す人もいます。
また、内容を十分理解していなくても上司へアピールするために必ず話す人や、時間がないのに発言を続ける人がいるのも、ハーバードの教室と同じ光景です。
外国人が3分の1、あるいは半数ほどいる会議では、ケースメソッドで鍛えられた経験が役立ちました。議論が本筋から逸れそうな時に軌道修正し、限られた時間で結論へ導く力につながったと思います。
ーーハーバードやMITで学ばれた経験から、日本の教育でも取り入れたほうがよいと思う方法や制度はありますか。
【山田】日本の教育では、落ちこぼれを作らないこと、勉強できる子をもっと伸ばすこと、どちらも重視している印象があります。そのような日本の教育に比べると、アメリカの教育では学習が遅れている子のフォローは不足しているかもしれません。
私は父の転勤で、12歳から15歳までアメリカで暮らしました。
渡米直後の私は英語の読み書きができず、問題自体は解けるのに、問題文の英語が理解できないので正解できないことがよくありました。例えば数学のテキストに分数や小数が出てきて、「大きい順に並び替える」問題かと思って答えたら「小さい順に並び替える」問題だったり...。
そのため勉強が苦手なクラスに入れられ、学習が遅れているアメリカ人の生徒と机を並べて勉強をすることになりました。「授業は理解できるのに英語がわからない」自分が「英語がわかっているのに授業が理解できない」生徒と一緒にされていることに疑問を感じていました。
その一方で、アメリカの「得意な部分を伸ばす」教育は徹底しています。
アメリカの高校では、生物や化学などで良い成績を取ると、高校在学中に大学の単位を取得できます。この単位は全米どの大学に入っても有効で、高校時代に取得した単位の授業をスキップして、2年生の授業から出席することができます。
付け加えると、アメリカの大学では教授が学生と面談する「オフィスアワー」を設けていました。学生はその時間に教授を訪ね、質問や相談をします。
ーー日本の大学にもオフィスアワーはありますが、学生があまり来ません。
【山田】アメリカでは、普段から教授へ相談していることが、成績評価の際に多少有利に働くという意識もあったかもしれません。それでも、学生が教授との接点を積極的に作る文化はあったと思います。
ーー外資系企業と日本企業の両方を経験されている山田さん。日本経済が輝きを失い、相対的に衰退した原因を、どのように考えていますか。
【山田】私が勤務経験のあるコカ・コーラやスターバックスにはアメリカ本社があり、本社の方針を各国へ導入しようとします。
その際、日本側は最初に「日本は違う」と説明しようとする傾向があります。初めて日本へ来た外国人は、「日本は特別だ」という説明を繰り返し聞かされ、嫌になってしまうこともあるほどです。
違いから話し始めると、相手も身構え、日本側も防御的になります。私がコカ・コーラで市場調査や経営企画を担当した時は、「日本の消費者も基本的にはアメリカの消費者と同じです。ただし、少し違うところもあります。家で靴を脱ぐとか」という順序で説明し、相手が身構えないよう工夫をしていました。
かつて日本の製品品質や接客が欧米より優れていると言われた時期がありました。その成功体験から、外から学ぶことを忘れてしまったように感じます。流行だけをまねるのではなく、本質を学び、盗み、ヒントを得る姿勢が弱くなったのでしょう。
例えば、iPhoneに使われる基礎技術の多くは、日本企業も持っていたと言われています。しかし、それらをユーザーが使いやすい一つの商品にまとめる発想と実行力が不足していました。
海外から学べることが多くあったにも関わらず、それを日本流にうまく調整して取り入れるのではなく「日本は違う」と退けてしまったことが停滞の原因でしょう。
ーー日本は、従来の仕組みをすべて否定するのではなく、良いところを残し、悪いところを捨てる知恵を働かせるべきでした。株式の持ち合いなどにも、悪い面だけでなく、企業の長期的な関係を支える良い面があったと思います。
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更新:08月03日 00:05