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「日本人は我慢して働いている」 仕事がつらい状態を脱するための3Cとは?

2025年02月20日 公開

藤井薫(リクルート HR統括編集長)

国際調査の結果から、日本では職場や仕事に不満を持ちながらも辞めることは考えず、「我慢しながら働いている」人が多いことがわかっている。一方で、リクルートの調査によると、50代のおよそ6割は転職経験者だという。我慢しながらいまの職場に留まり続ける人と、キャリアシフトに積極的な人は一体何が違うのだろうか。

※本稿は、『THE21』2024年3月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

同世代の中での二極化が進んでいる

いま50代の人々が就職したばかりの頃と比べると、現在の日本全体の社会構造は大きく変わりました。年齢別労働人口は逆ピラミッド型になり、商品やサービスは目まぐるしく入れ替わり、それらを提供する企業も海外資本になったり事業を売ってしまったりと、様々な形で企業や事業が短命化しています。

ビジネスパーソンのキャリアの考え方も変わりました。「仕事を一律化して、みんなで同じようなユニフォームを着て同じ時間に出勤して、同じだけ残業して横並びに昇進して幸せになっていた」のが30年前だとすると、いまは一人ひとり介護や子育てなど異なる事情を抱えて働いています。

そうした変化の中で、ミドルシニア世代の人々も、同じ仕事を連続的に積み重ねていけば確実な未来が見えた時代と違って、不確実で非連続な働き方やキャリア形成を強いられるようになっています。そのことに不安を覚えている人も多いでしょう。

ただ、シニア世代でもデジタル化社会にまったくついていけないと嘆く人もいれば、80代になってプログラミングを学び、スマホアプリをつくってしまうような方もいます。同じ世代の中でも、前向きにチャレンジする人と、不安に陥って身動きが取れなくなる人の二極化が進んでいるとも言えるのです。

 

終身雇用より「終身自在」50代の約6割が転職を経験

二極化の傾向は、転職の動向でも同じです。「50代で転職なんて現実的ではない」と言ってまったく活動しない方もいる一方、「いまこそチャンスだ」と言って、自分の経験や才能を活かせる転職先を積極的に探している人もいます。

実際、私たちが実施した転職や価値観に関する実態調査の結果からは、二極化が浮き彫りになりました(図③)。

50代で転職経験のある人は58%。一方、転職活動自体をまったくしたことがないという50代も、35.8%いました。転職経験のある50代では、4回以上転職を経験しているという人も29.7%に上ります。

また、いまの会社にずっといられるかどうかより、自由であることを重視する感覚を持つ人が年々増えています。この「終身雇用より終身自在」を求める傾向は若い世代だけでなく40代・50代も同様ですが、年代によって転職の際に重視する項目は少し違います。

50代以上になると、自分がそれまで培ってきたものを社会に役立てたいと考える人が多くなるのです。若い世代だと、親の期待もあって規模の大きな有名企業に入りたい、という人も多いかもしれませんが、ミドルシニアになると企業の知名度や規模は気にしないという人が多く見受けられます。

例えば大手ゼネコンで30年やってきたけれど、これからは地元密着型の中堅企業で地域に貢献していきたいとか。自分の能力が活かせるのであれば、お給料はそんなに高くなくてもいい、という方が多いのも、ミドルシニア世代の転職の特徴です。そういう意味で、ミドルシニアのキャリアシフトは、人材不足で困っている中堅中小企業からしてもチャンスだと思うことがあります。

また、別の調査でミドルシニア世代とほかの世代の差が大きかったのが、「大規模な製品やサービスの一部を担うよりも、小規模な製品やサービスの決定権を持てるほうが嬉しい」という項目を選ぶ人が多かったことです。裁量権を持って自分で自分のハンドルを握りたい、そう望むミドルシニアがとても多いことがわかります。

企業側もこうしたミドルシニア世代のキャリア観を重視して採用活動をすると、マッチングがうまくいくのではないでしょうか。

 

いまの仕事や職場が嫌でも会社を辞める気はない理由

現在の働き方に対する満足度

では、転職に積極的な人とそうでない人の違いはどこにあるのかといえば、環境の違いです。これは転職前の職場環境に不満があるかどうか、ということではありません。

社外に出た場合の自分の選択肢を具体的にイメージし、主体的に何かを選択する経験をたくさんできる環境かどうか、ということです。選択肢をたくさん持てる人、選択の経験をたくさん積んできた人ほど、転職に積極的なのです。

一方、転職なんて考えたことがないという人の多くが、いまの会社や仕事を積極的に選んで残っているわけではないようです。日本人は、ほかの国々の調査結果と比較しても会社に対するエンゲージメントが極端に低いという特徴があり(図④)、「みんなが我慢して働いている」のです。

会社の経営理念に共感しているわけではないし、仕事にのめり込んでいるわけでもない、給与も不満、人間関係にも不満。自分のスキルや才能が活かされているとも思っていない。だけど、会社を辞めようとも思っていない――これは、会社の外に出たところで、自分が何をしたいか、何ができるのかわかっていない人が多いからです。

実際、1万人に対する実態調査の結果では、「キャリア自律といっても自分のスキルや能力に対する評価基準もあいまいだし、どこでどんなことができるか自分でキャリアを考えるなんてできない」「勤め先のキャリアパスが不明瞭で、自分の未来も描けない」「将来のキャリア展望について上司と話をする機会なんてない」といった回答が多く見られました。

 

働く喜びを取り戻す「3C」とは?

では、転職するにしても、今の仕事を続けるにしても、仕事への前向きな気持ちを取り戻すためにできることはないのでしょうか。リクルートでは毎年5000人以上を対象とした「働く喜び調査」を約10年行なっているのですが、働く喜びを感じている人たちには、3つの共通項「3C」があることがわかりました。

1つ目のCは「クリア」。自分のやりたいことや持ち味がはっきりわかっていること。
2つ目のCは「チョイス」。持ち味を発揮できる仕事や職場を選択していること。
3つ目のCは「コミュニケーション」。顧客や上司、同僚と密なコミュニケーションを取り、自分が期待されていると感じられること。

転職活動を一度もしたことがないと、自分のキャリアを本格的に棚卸しする機会もないので、自分の持ち味を知らないまま50代になっている人も多いでしょう。その場合は、3つのCを逆回しにしてみましょう。

社内外の人とたくさんコミュニケーションを取り、得た情報をヒントに選択肢を広げ、その中からチョイスする経験を重ねていく。そうするうちに、自分の持ち味や、やりたいこと、 働くうえで重視する価値観がクリアになってくるはずです。

もちろん、ほかの選択肢も認識したうえで、いまの仕事を選択している人もいるでしょう。ですが、ずっと同じ仕事をしてきた人の場合、ほかの選択肢を知らないだけで、もっと自分が生き生きと働ける仕事があるかもしれません。少なくともいまあなたが「我慢して働いている」状態であれば、自分のやりたいことをクリアにすることは、そこから抜け出すための第一歩にはなるはずです。

 

【藤井薫(ふじい・かおる)】
リクルートHR統括編集長。1988年、リクルートに入社。以来、人と組織、テクノロジーと事業、今と未来の編集に従事。『B-ing』、『TECH B-ing』、『Digital B-ing(現『リクナビNEXT』)』、『Works』、『Tech総研』の編集、商品企画を担当。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長・ゼネラルマネジャーを歴任。2016年、リクナビNEXT編集長に就任(現職)、19年からはHR統括編集長を兼任(現職)。

 

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