2025年01月24日 公開

資格や語学の勉強を始めてみたものの、三日坊主で終わってしまった......そんな人にぜひ知ってほしいのが「海外塾講師ヒラ」氏。顔出しNGの謎めいたスタイルで配信する動画で、数多くの小中高生を勉強にのめり込む「勉強依存」にしていると話題の動画配信者だ。最近は社会人の視聴者が急増しているという。その独自のモチベーション・アップ法を聞いた。(取材・構成:石澤寧)
※本稿は、『THE21』2024年2月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集したものです。
「仕事だけ」に集中していればなんとかなった時代は終わり、リスキリングや副業などで、社会人も常に「勉強」を続けることが必要な世の中になりました。この先「稼ぐ力」を維持し、高めていくためにも、新しいスキルや資格の勉強が必須です。
とはいえ、「仕事だけでも忙しいのに、勉強まで手が回らない」「正直、やる気が出ない」という人も少なくないでしょう。そんな人でも勉強せずにはいられなくなる「勉強依存」になる方法があります。
「勉強依存」とは、勉強になんの抵抗感もなくなり、勉強時間を自分から勝手に増やすようになっていくブースト状態のこと。私はこれまで指導したほぼすべての生徒をこの「勉強依存」にすることで、彼らに、「300点台だった定期テストの点数が450点越えへアップ」「偏差値60台から70越えへ」「学年順位1位獲得」といった、以前では考えられなかった好成績をあげさせることに成功してきました。
もしあなたが望むなら、同じように勉強で人生を変えるほどの成果を出すことは夢ではありません。こう言うと、「子どもの勉強法は大人には通用しないのでは」と思う人もいるかもしれませんね。ですが、そんなことはありません。子どもでも大人でも、受験勉強でも資格の勉強であっても、「勉強の本質」は変わらないからです。
それは「できなかったことができるようになること」。「よし、できた!」は人にとって快楽であり、その瞬間に脳汁(アドレナリンなど、脳内麻薬の俗称)が滲み出てきます。気分が高揚し、テンションも上がります。これが「勉強麻薬」の効果です。
これによって、「あんなに嫌だった勉強を自分から進んでやるようになる」状態になります。こうした「勉強依存者」は、決して天才などではありません。彼ら・彼女らは、「問題集を10周」「毎日12時間勉強」といった、とてつもない勉強量をこなすことで、圧倒的な結果を出しているのです。
「量より質が大事では」と言う人もいますが、それは間違いで、たくさん勉強するから質が上がっていくのです。「圧倒的な結果を出す人は圧倒的な勉強をしている」。これは塾講師を10年以上勤め、SNSで数万人とつながってきた私が出した結論です。
その圧倒的な勉強量をこなす勉強依存者になるには、絶対に必要なものが一つあります。それは「覚悟」です。「誰よりも勉強してやる」というマインドの土台を固めたうえで、自らを勉強しなくてはならない状態に追い込み、結果にこだわった勉強をする。そうすることによって人生を変えるほどの成果を手にすることができます。その方法をこれからお伝えしましょう。
勉強に依存するためには、「勉強麻薬」の成分である①情熱、②密着、③達成、④環境という4つの要素が必要です。
例えば、将来プロ野球選手を目指す少年は、プロになりたいという強い気持ち(情熱)を持ち、常にバットとグローブを持ち歩いて(密着)、毎日練習しています。練習によってだんだんと技術が向上し(達成)、コーチをつけることで(環境)、さらに上手になっていきます。
このように4つの成分をすべて満たすことで、少年は野球に依存して、プロへの道を着実に歩んでいくことができるわけです。この4大成分の中で最も重要なのが「情熱」です。これがなければそもそも勉強できませんし、逆に言えば、やる気がないというのは情熱が足りないからです。
ではどうやって情熱を生み出すのか。まずは自分の「理想」を呼び起こしましょう。あなたがこの記事を読んでいるのも、達成したい何かがあるからだと思います。「仕事のスキルを上げて昇進したい」「部下から信頼されたい」「副業で本業以上の収入をあげたい」......自分の情熱が沸騰するものならなんでもいいのです。「よし!やるか!」となるものが一つでもあれば、情熱に火がつきます。そして「理想」を考えると、同時に「現実」が頭に浮かんでくるはずです。
理想が100だとしたら、いまの現実は20かもしれません。この80の差を見て、諦めずに一歩を踏み出せるかどうかで「あなたの未来」は決まります。では、理想と現実の差を埋めるにはどうしたらいいのか。カギになるのが「自問自答」です。
●自分は勉強してどうなりたいのか?→勉強して○○になりたい(理想)
●では今の自分はどうか?→今の自分は△△だ(現実)
このようにして、自分の理想と現実を日々確認するのです。一度理想を掲げても、毎日意識的に確認しないとそのうち忘れます。理想を忘れれば情熱は冷め、勉強する意欲もしぼんでいきますから、自ら情熱を燃やし続ける必要があるのです。
また、これによって「どうやって差を埋めようか?」と、理想と現実の差を埋める方法を探すようにもなります。自問自答の際には、勉強依存になるために絶対に必要だとお話しした「覚悟」を改めて思い出してください。
具体的には、①「何かを得るために何かを手放す覚悟」と、②「何がなんでも乗り越えるという覚悟」です。親にスマホを預けて勉強にすべてをささげ、合格に必要とされる膨大な数の問題演習に一つひとつ取り組んでいく......。そんな覚悟をもって勉強している子どもたちが、私の教え子には数えきれないほどいます。子どもでもできるのですから、経験豊富な大人のあなたにその覚悟ができないはずはありません。
「勉強麻薬」の第2の成分は、「密着」です。これを習慣化させると、ほぼ1日中勉強している状態が実現できます。具体的には、テキスト、ノート、単語帳といった勉強アイテムを肌身離さず持ち歩くのです。その際、次の4ステップで順番に実践していきます。
ステップ①集める
ステップ②絞り込む
ステップ③常備する
ステップ④時間を倍にする
スマホを常に持ち歩いていじっていると、それなしではいられなくなるように、人は触れているものに依存します。ですから、あなたが依存するべき勉強アイテムをすべて集め、机の上に並べてみるのが①集めるです。しかし、それらすべてを持ち歩くことはできませんから、②絞り込むが必要になります。その際、勉強の効果が成果に反映されやすい「ハイリターン」なものと、すぐに手をつける必要がある「緊急性」の高いものを優先します。
勉強アイテムが5つあるとしたら、1位~5位を決めるイメージです。順位を決めるのが難しい場合は、触れている時間がより長いものを優先します。そして、順位を決めたら、第1位の勉強アイテムだけを残し、他のアイテムは場所を移します。こうして極限まで絞り込み、その一つに集中して勉強するのです。
まず一つの教科書をクリアし、次は別の教科書、とこなしていくうちに、いつの間にか多くのことができるようになっていきます。勉強とは、この「集める→絞り込む」の連続です。この優先順位づけができずあれもこれもと手を出した結果、どれも中途半端になり、成績が伸びない受験生を数多く見てきました。
絞り込んだ一つが完璧にできれば「完璧にする方法」が身をもってわかります。あとはそれを横展開すればいいので、スピードが爆発的に上がります。自信もついて、精神的なストレスもなくなります。
そして、一つに絞り込んだ勉強アイテムを③常備する。ただ身近に置いておくだけでなく、体の感覚を使って密着させてください。例えば、「英単語帳を見ながら、声に出して覚える」「自分の声で録音した暗記事項を聞く」など、「見る」「言う」「聞く」「触れる」といった感覚を使って体にしみ込ませていきます。
また、「手帳で予定を確認したら必ず単語帳を見る」など、密着させた勉強アイテムを使用するタイミングを決めておくことも重要です。これで「密着」が成功します。
そして、最後に密着レベルを跳ね上げるのが、④触れる時間を倍にするです。スマホやゲームに依存するのは触れる時間が長いからです。勉強も、密着させて触れ続ける時間を増やすことで、勉強依存がより強化されます。具体的にはこれまでの倍の時間触れてください。
「倍の時間取るのは難しい」という人は、スキマ時間を活用してはいかがでしょうか。「電車に乗っている30分」「バスが来るまでの10分」「お風呂が沸くまでの15分」といった細切れの時間をかき集めて、勉強アイテムに現在の倍の時間触れることを目指してください。
ちなみに、密着させたアイテムを手放すタイミングは、九九レベルで即答できるくらい完璧になったときです。見た瞬間に答えが出る状態になったら、次の密着アイテムに変えてください。受験や資格試験は人生を変えるものですから、それを可能にする密着アイテムは人生を変えるためのツールです。いつでもどこでも一緒の「相棒」という感覚を持てば、より愛着を持って触れ続けられるはずです。
「勉強麻薬」の成分の3つ目は「達成」です。より詳しく言えば、「自分でできた経験をつくること」です。これは人間の本能をガツンと直撃しますから、この経験を積み重ねて勉強に依存しないことはあり得ません。
「本能をガツンと直撃する」のは、欲求が満たされるからです。言い換えれば、「ハマる」ということであり、「勉強が欲を満たしてくれるもの」になれば、勉強にハマりこんでいきます。
ハマるためには、欲を満たして脳内で快楽物質を出すことが必要になりますから、そのために、「自分でできた経験=達成」を増やすのです。特に、「自分で決めた課題」が「自分でできた」際には、最も欲が満たされ「勉強依存」がさらに進みます。
そして、当然のことではありますが、改めて重要なこととして言っておきたいのが、「できた」で勉強を終えることです。お伝えしたように、勉強の本質とは「できなかった問題ができるようになること」ですから、そこに至らなければいくら時間をかけても勉強したことにはなりません。
逆に言えば、「できなかったとき」が、勉強において重要なタイミングということです。ではそのときどうするか。「問題解決策を複数持つ」のが打開策になります。例えば「A」という問題ができなかった場合、「解説をじっくり読む」「自分の言葉でノートにまとめる」「先生に質問する」「YouTubeで検索する」など、複数の方法が考えられます。このアプローチの数で、Aが解けるかどうかが決まります。
「解説をじっくり読む」ではよく理解できなかったけれど、「自分の言葉でノートにまとめる」をやったら頭に入った、といったように、様々な方法を試して、「自分だけの成功パターン」を確立するのです。そしてそれを必ず言語化してください。「ノートにメモする」でも、「スマホに音声入力する」でもなんでも構いません。
自分だけの成功パターンには再現性がありますから、ある勉強でうまくいった方法は、他の勉強法にも使える可能性が高い。こうして、うまくいった勉強法を残し、ダメだった勉強法は捨てることで、あなただけの勉強法が確立されていきます。
「勉強麻薬」の4大成分の最後は「環境」です。これは場所、人間、言葉の3つで決まります。勉強において「場所」が重要なのは皆さんおわかりと思います。リビングで勉強していたら、家族がテレビをつけて一緒に見入ってしまい、結局勉強できなかった、といった経験は多くの人にあるでしょう。
そうなってしまう原因は「細部」まで考えていなかったから。「場所」は重要なものですから、こだわる必要があります。具体的には、すべてのものに「根拠」をつけるのです。
●なぜその場所でないといけないのか?→家ではダレてしまうが、図書館なら周りが勉強モードなので集中できる
●なぜそれがそこにないといけないのか?→机の上は問題集とノートだけのほうが勉強しやすい
このように自分なりに根拠をつけながら「場所」について試行錯誤を繰り返すことで、やがて「自分に合った最高レベルの集中場所」が見えてきます。トイレに入ったら用を足すのと同じように、そこに行けば自動的に勉強できる、というオリジナルの場所を作り出してください。
次の「人間」ですが、勉強に依存できる生徒は、「指導者」、「勉強仲間」、「保護者」の少なくとも1人を必ず味方につけています。大人には保護者はいませんから、良い指導者につくか、勉強仲間をつくる、またはその両方が必要です。
しかし、人が出会う「人間」には、「運」という要素が関わりますから、周りにそんな人がいないという場合もあるでしょう。そうした際に、「運」に任せるのではなく、自分でできる「行動」があります。「どんな人が自分に必要か」を書き出すのです。
「○○を教えてくれる先生」「一緒に勉強してくれる仲間」「悩みに答えてくれる合格者」などと書き出していくことで、あなたの「理想」が明確になってきます。あとはリサーチして見つけるだけです。今は、YouTubeやオンライン教育動画のサービスなど、ネットを中心に教育環境が充実していますから、自分で自由に指導者が選べます。アプリを使って勉強意識が強い仲間と出会うこともできます。あなたの行動次第です。
そして「環境」の最後は「言葉」ですが、経験豊富なビジネスパーソンであれば、日頃から口ずさんだり目にしたりする言葉が、その人の行動に大きな影響を及ぼすことはご存じだと思います。「勉強依存」になる際も、この「言葉の力」を大いに活用します。
4大成分の「密着」とも似ていますが、「勉強に関する言葉」に常に触れ続けるのです。例えば、「資格試験に一発合格する」という目標を掲げたなら、寝ても覚めてもこの言葉に触れ続けます。一番目につくところに大きく紙に書いて貼っておいて、毎日見て、声に出すことを繰り返します。
そして「どうやったら一発合格ができるのか?」「どんな勉強法をどれくらいのスケジュールでやればいいのか?」「今の自分に足りないものは何か?」と、目標となる言葉の達成方法について考え続けるのです。
こうして一つの言葉に行動も思考も集中することで、勉強依存の流れがさらに加速します。理想を実現させる人は、いつだって理想を実現させる「言葉」に触れる習慣を持っています。その言葉の力を活用することで「勉強依存」は確たるものになり、また一歩、理想のあなたへと近づくことができるのです。
【海外塾講師ヒラ】
「授業オタク」の現役塾講師。各種SNSで勉強法を発信し続け、直接指導した生徒は約1,000人、YouTubeのチャンネル登録者数は21万人以上にのぼる。著書に『勉強嫌いでもドハマりする 勉強麻薬』(フォレスト出版)がある。
更新:01月25日 00:05