まず、誤解されがちなことですが、今回「パワハラ防止法」という新しい法律ができたわけではありません。今ある法律に改正が加えられたのですが、その法改正の通称として「パワハラ防止法」という名称が使われているのです。
ちなみに、この点は2019年4月1日より施行された「働き方改革関連法」についても同様です。働き方改革関連法という新しい法律ができたわけではなく、労働基準法など従来の法律に加えられた改正の総称が「働き方改革関連法」と呼ばれています。
今回、ハラスメント関係で改正されたのは以下の4つの法律となります。
1 労働施策総合推進法
2 男女雇用機会均等法
3 育児・介護休業法
4 労働者派遣法
このうち「パワハラ防止法」と呼ばれるのは1の「労働施策総合推進法」の改正です。それに加えて他の法律を改正することにより、セクハラやマタハラなども含め各種ハラスメントへの対応強化を図る。これが今回の法改正の全体像です。
では、何がどう変わったのか。ざっくりと要点だけを挙げると、以下になります。
・すべての企業に対して、職場におけるパワハラの防止や相談についての対策の実施が義務づけられた
・法律とそれに基づく大臣指針により、「どのような言動が職場のパワハラになるのか」が明確に定義された
・国に対して、パワハラを含むすべてのハラスメントへの対策を、国の施策として行うことが義務づけられた
中でも大きなポイントが、職場におけるパワハラが法律で定義されるとともに、パワハラ防止対策が国と企業に義務づけられたということでしょう。
言うまでもなく、「パワハラ企業」というレッテルを貼られてしまうことのリスクは極めて大きなものがあります。そうしたリスクを考慮し、独自のパワハラ対策を進めてきた企業も少なからずありました。
ただし、それはあくまで全体の一部(厚生労働省の調査によれば約半数)。これが義務化されたことで、企業は否応なしに対策を進めなくてはならなくなったのです。
この法律は2020年6月1日から施行されます。つまり、この日までに対策をしなくてはならないわけです。
一方、中小企業のパワハラ対策の実施については、2022年3月末日までは「努力義務規定」、つまり「できるだけ実施に努めてくださいね」ということになります。2022年4月1日からは大企業と同じく「実施義務規定(強行規定)」となりますが、中小企業は大企業に比べ多少猶予があるのは確かです。
ただ、大企業というと社員数数千人の企業を思い浮かべるかもしれませんが、ここでいう中小企業とは中小企業庁の定めるもので、一般のイメージとは少々乖離しています。
具体的には、資本金3億円以下または社員数300人以下の企業が中小企業になります(小売業、サービス業、卸売業除く)。また、小売業なら資本金5000万円以下または社員数50人以下が中小企業となります。
つまり、社員数350人くらいの企業や100人くらいの小売業なら、「大企業」に入る可能性があるわけです。自分の会社がどちらに属するのか、確認しておきましょう。
更新:11月24日 00:05