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アンケートに形式的なことをあれこれ書かせようとする会社は、沈む

2019年11月12日 公開
2023年02月24日 更新

小宮一慶(経営コンサルタント)

 

お客さまに「いちばんお聞かせいただくべきこと」は何か

 では、お客さまにいちばんお聞かせいただくべきこととは何でしょうか。

 それは、「満足されたかどうか」です。どんなにお客さまの立場になろうとして努力しても、実際にそのお客さまが満足されたかどうかは、その方に伺わなければ分かりません。アンケートでいちばん大事なのは、そこなのです。

 できるだけ項目を少なくして、お客さまがどう感じられたかだけを聞くのです。

 マーケティングの世界でレジェンドとして語られているアンケートの話があります。ホンダカーズ中央神奈川というカーディーラーで実施していたアンケートハガキ。それはとてもシンプルなものでした。

 サービス内容に対して満足いただけたかどうかを「満足」「普通」「不満足」の3段階で評価していただくというもの。

「普通」という評価を受けた場合、その会社では「何らかの不満があった」という認識になります。お客さまからのアンケートハガキは、全スタッフが閲覧する仕組みになっており、「普通」の評価を受けた人は、それがみんなに分かってしまうわけです。当然、従業員はみんな、お客さまにいかに満足していただくかということに集中するようになります。

 そのアンケートハガキは、質問項目は少なく、あとは「ご自由にお書きください」という余白を空けてあるものでした。普通、そういう書き込み欄は面倒くさがられるものなのですが、満足度の高いお客さまは、皆さんそこにいろいろ書いてくださるというのです。

 また、満足されるとハガキの回収率そのものも高くなるのだそうです。

 お客さまの満足度が上がると、その先には感動があります。感動すると、人はそれを誰かに話したくなります。満足度が高く、感動するようなサービスだと感じたら、多くの方から進んでいろいろご意見もいただけるのです。

 個人情報の保護ということが言われるようになり、今ではアンケートの実施にも注意が必要です。匿名になり、アンケートを通してお客さまとの心の交流を深めていくようなことは、なかなかできなくなっているかもしれません。

 昨今は、そのユーザーのウェブ上の行動履歴から興味や関心を持ちそうなことを広告として流すターゲティング広告も増えています。ものを売るために情報を得る方法は、どんどん進んでいます。

 だからこそ、何が本当にお客さまを喜ばせることになるのかを、より考えなければいけません。お客さまが満足されているかどうかという視点は、いっそう大事になります。

著者紹介

小宮一慶(こみや・かずよし)

経営コンサルタント、小宮コンサルタンツ代表

1957年、大阪府生まれ。1981年、京都大学法学部を卒業後、東京銀行に入行。1986年、米国ダートマス大学経営大学院でMBAを取得。帰国後、経営戦略情報システム、M&A業務や国際コンサルティングを手がける。1993年には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1996年、〔株〕小宮コンサルタンツを設立。『小宮一慶の1分で読む!「 日経新聞」最大活用術』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。

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