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アンケートに形式的なことをあれこれ書かせようとする会社は、沈む

2019年11月12日 公開
2024年12月16日 更新

小宮一慶(経営コンサルタント)

質問項目で分かること

小宮一慶

 例えば、就職したいと考えている会社が、将来性がある良い会社なのか。取引先の会社は、これから成長が期待できるのか。いまはネットで調べれば、簡単になんらかの情報を得ることができるが、それは「誰か」の知見やものの見方だ。それを参考にしながらも、自分自身で実際にその会社のよしあしを見抜く”確かな目”を養っていくことが大事だと、経営コンサルタントの小宮一慶氏は言う。具体的には、どこをどう見ればいいのか。一例を教えてもらった。

※本稿は、小宮一慶著『伸びる会社、沈む会社の見分け方』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

 

答える気が一瞬で失せた航空会社のアンケート

 その会社がお客さま第一の姿勢かどうかは、アンケートの質問項目を見るだけでも分かります。

 アンケートに答えていただくというのは、お客さまにとって基本的に面倒くさいこと、煩わしいことなのです。そこをお願いするわけですから、なるべく負担のないようなものであることが大事な条件です。

 ところが、そこが分かっていない会社は、せっかくアンケートを取るのだから、いろいろなことに答えてもらおうと欲張るのです。

 とくに、高い費用を払ってマーケティング会社に依頼したりすると、あれもこれもと要素を詰め込んだ、実に面倒極まりないアンケート用紙ができ上がります。どれかに○をつけるだけにしても、いちいち真剣に答えようとするお客さまはそうはいません。回収率はすこぶる悪く、有益な結果も得られずに終わります。

 アンケートは、お客さましか分からないこと、判断できないことを、それも、簡単に答えられるものでお願いするべきです。

 あるとき、飛行機の機内で配られたアンケートに、「どこからお乗りになりましたか」「到着地はどこですか」という質問項目があって、これはまったく乗客の立場になっていないと一目で分かりました。その機に乗っている人は、全員、出発地も到着地も同じに決まっています。アンケートを取る側がちょっと工夫すればいいだけで、お客さまに書かせるようなことではありません。その項目を見ただけで、アンケートに答える気が失せてしまったことを覚えています。

 

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著者紹介

小宮一慶(こみや・かずよし)

経営コンサルタント、小宮コンサルタンツ代表

1957年生まれ。京都大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。米ダートマス大学タック経営大学院にてMBA取得。91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年、名古屋大学経済学部客員教授に就任。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。著書に『「金利上昇」に勝てる経営』(ビジネス社)ほか多数。

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