THE21 » キャリア » 協和「ハイテクに投資して、通販だからこその『御用達経営』を実現する」

協和「ハイテクに投資して、通販だからこその『御用達経営』を実現する」

2019年05月07日 公開
2022年10月25日 更新

【経営トップに聞く】堀内泰司(協和社長)

【連載 経営トップに聞く】第17回 〔株〕協和代表取締役社長 堀内泰司

堀内泰司

 

 通販というと、あちらこちらから仕入れてきた商品をマスに向けて広告し、注文を集めるというのが一般的だろう。しかし、〔株〕協和が運営する『fracora』は、自社で企画した商品だけを販売して成長し、しかも、これからは顧客一人ひとりに向けた「御用達経営」の実現を目指すという。同社社長の堀内泰司氏に話を聞いた。

 

モノ単体を売るのではなく、顧客一人ひとりのストーリーを作る

 ――御社は『fracora』と『自然王国』の二つのブランドを展開されています。

堀内 自然王国では、調剤薬局やドラッグストアなどで『生しぼりしょうが湯』などの商品を販売していますが、売上げのほとんどは通販のfracoraが占めています。

 fracoraの商品は化粧品が約7割、サプリが約3割で、継続して使っていただくことで効果を実感していただくものですから、定期便でお届けする形で販売しています。スポットでご購入いただくこともありますが、8割以上が定期便ですね。

 ――どういう人が購入しているのですか?

堀内 99%が女性で、年代は50歳前後の方が多いです。「自立し自分の価値観を持ち、ポジティブに生きているミドルエイジのお客様のお役に立つ」と、ミッションにも掲げています。

 ――特に人気のある商品には、どういうものがあるのでしょうか?

堀内 『プラセンタエキス原液』など、原液の化粧品です。「原液美容」というコンセプトは、当社が初めて打ち出しました。他の化粧品にプラスアルファして使うもので、いま使っていらっしゃる化粧品を否定するものではないことも、広く受け入れられた理由の一つだと思います。

 ――御社が初めて打ち出したということは、御社が開発した商品だということですか?

堀内 当社はメーカーですから、販売している商品は自社で企画・開発したものです。ただ、当社だけではできないので、大学や他社と一緒になって開発しています。

 例えば『ミラブル』というシャワーでは、大阪にある〔株〕サイエンスと業務提携しました。ウルトラファインバブルという、すごく細かい泡を含んだ水流を出すシャワーです。1cc当たり約1,400万個もの泡が入っていて、それで顔を洗うと、肌に負荷をかけることなく、綺麗に洗えます。

 製造については、それぞれの商品に最も適した他のメーカーにお願いしています。当社がお金を使うのは、商品開発とシステム開発、売り方開発だけ。工場もコールセンターも物流もアウトソーシングして「持たざる経営」をしている、「知恵だけの会社」なんです。

 ――「売り方開発」というのは、具体的には?

堀内 商品の宣伝の仕方や、1度買っていただいたお客様に継続的に買っていただくための施策を考えることです。

 継続的に買っていただくための売り方は、今年2月に組織も変更して、本格的に変えました。例えばプラセンタエキス原液なら美顔プロジェクトチームというように、課題ごとにプロジェクトチームを作り、それぞれのチームの中でストーリーを作って、ストーリーとともに商品を売っていくことにしたのです。

 当社の売上げは、ここ3年ほど、約185億円で横ばいです。ここで伸び悩んでいるのは、商品をモノ単体で売ってきたから。そこで、ストーリーをつけて売っていく、新しい売り方を開発することにしました。

 ――「ストーリー」というのは、いったいどういうものでしょうか?

堀内 例えば、美顔プロジェクトチームで言えば、お客様にシャワーで洗顔したあとの肌をカメラで撮っていただいて、その写真を送っていただく。そして、その写真を分析して、「こういう原液を使うと、もっとよくなりますよ」とレコメンデーションをお送りする。実際に使っていただいたら、また肌の写真を送っていただいて、「こう変わっていますよ」と分析してお伝えする。このようにして、「オンリー・フォー・ユー」のストーリーを作るのです。

 ――一人ひとりの顧客に対して、商品を使う体験のストーリーを作るということですね。

堀内 そうです。

 従来の通販の会社は、極端に言えば、自分たちが売りたいものや気に入ったものを宣伝して、お客様に押しつけていたように思います。そして、たまたまヒット商品が出ると、会社の業績が伸びた。

 しかし、これからは違います。お客様一人ひとりのニーズを捉えて、それに合った商品やサービスを、リーズナブルな価格で、ジャストインタイムで提供することが一番大事。つまり、「押しつけ経営」ではなく、「御用達の経営」でなければなりません。ハイテクノロジーを使うことによって、これが可能になります。

 ――顧客一人ひとりとコミュニケーションを取るためのハイテクノロジーに投資している?

堀内 先ほど、お客様に肌の写真を撮っていただくという話をしましたが、スマホのカメらでは不十分なので、独自のレンズをスマホのカメラにつけて撮っていただいています。パートナー企業と、1年以上、一緒に実験を重ねました。

 また、肌の状態の分析は、ディープラーニングをさせた人工知能が行ないます。その人工知能もパートナー企業と一緒に開発中です。

 今のハイテクはかなり進化していますから、それを協和流に取り入れて、御用達経営を実現していきます。同様のことを考えている会社は他にもあるでしょうが、実際に取り組んでいる会社は、少なくとも「美と健康」のジャンルでは、まだそれほどないと思います。

 ――商品開発や売り方開発を一緒にする他社には、御社から企画を持ちかけているのでしょうか?

堀内 それは様々です。技術は持っていても、それを実際に使ってデータを蓄積する現場を持っていないため、多くのお客様を持っている当社に関心を持っていただく会社も多くあります。

 

著者紹介

堀内泰司(ほりうち・たいじ)

〔株〕協和代表取締役社長

1945年、長野県生まれ。一橋大学卒業後、68年に住友化学工業〔株〕に入社。77年、〔株〕協和に入社。97年、同社代表取締役社長に就任(現任)。98年、伊藤忠商事〔株〕、〔株〕ドールと合弁で〔株〕ケーアイ・フレッシュアクセスを設立し、同社代表取締役社長に就任。2004年、協和の通販事業『fracora』を本格始動。

THE21 購入

2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

麺食「『喜多方ラーメン 坂内』がニューヨークに出店する理由とは」

【経営トップに聞く】中原誠(麺食社長)

Readyfor「日本初・国内最大級の社会派クラウドファンディングサービス」 として誰もがやりたいことを実現する

【経営トップに聞く】米良はるか(READYFOR代表)

丸和繊維工業「海外生産・下請け体質から脱し、日本製の自社ブランドで高付加価値を」

【経営トップに聞く】深澤隆夫(丸和繊維工業社長)

<連載>経営トップに聞く