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邦訳が続々!「韓国文学」が人気の理由とは?

2019年04月17日 公開

金承福(クオン代表取締役)

 

古い作品やエッセイも幅広く日本に紹介

 クオンでは、今夏、「新しい韓国の文学」シリーズよりも前の時代の小説のシリーズを立ち上げる。第1弾は、1960年に発表された崔仁勲(チェ・インフン)氏の『広場』だ。

「単に古い作品を紹介するのではなく、今読んでも刺激的なものを選んで出していきます。

 韓国人に好きな日本の作家を聞くと、村上春樹さんなどの同時代の作家だけではなく、太宰治や志賀直哉などの名前も出てきます。日本人にも、現代だけでなく、もっと幅広い時代の韓国の小説を読んでいただければと思っています」

 また、小説だけでなく、エッセイなども多く出版していくという。

「昨年、『新しい韓国の文学』シリーズの1冊として、『そっと 静かに』というハン・ガンさんのエッセイを出版しました。小説を読んで、その作家が好きになれば、エッセイも読みたいと思うものですから。村上春樹さんが好きな人は、村上さんの小説だけでなく、エッセイも読みますよね。

 イ・ランさんの『悲しくてかっこいい人』をリトル・モアが出したり、キム・スヒョンさんの『私は私のままで生きることにした』をワニブックスが出したりと、他の出版社からも韓国のエッセイの翻訳が次々と出ています」

 クオンでは、「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」の開催も、一昨年から毎年行なっている。

「韓国文学を紹介するためにも優秀な翻訳者を発掘して応援していきたいと思い、韓国文学翻訳院の支援も得て開催しました。優秀作はクオンから出版する、というものです。翻訳コンクールはいくつかあるのですが、本として出版されるものは他にありません。そのおかげか、第1回は200名以上の応募があり、その中から選ばれた最優秀賞と優秀賞の計3名の翻訳で、昨年12月に『ショウコの微笑』を出版しました。

 第2回も、応募を締め切ったばかりですが、167名のエントリーがありました。最優秀賞の翻訳が年内に刊行される予定です」

 韓国文学が特別視されず、「読んでみて面白かった小説が、たまたま韓国のものだった」という状況になればいい、と金氏。その実現に向かって、韓国文学は着実に日本に根づきつつある。

《『THE21』2019年4月号より》

著者紹介

金 承福(キム・スンボク)

〔株〕クオン代表取締役

1969年、韓国生まれ。91年、留学のために来日。93年、日本大学芸術学部に入学し、文芸評論を専攻する。卒業後、広告会社を経て、2001年に独立。07年、〔株〕クオンを設立。K-BOOK振興会を立ち上げ、その事務局長も務めている。15年には神保町に韓国語原書・韓国関連本を専門に扱うブックカフェ「CHEKCCORI(チェッコリ)」をオープン。

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