2015年04月23日 公開
2023年02月01日 更新
30歳までまったく英語ができなかったにもかかわらず、一念発起して勉強を始めたことで、今では全世界に向けて小説の英訳を……。そんな驚きの経歴を持つのが、ミステリー作家の清涼院流水氏だ。その英語学習法をまとめた『努力したぶんだけ魔法のように成果が出る英語勉強法』が4月23日に発刊される。そこで今回、その英語勉強法及び氏が手掛けている「小説の英訳プロジェクト」についてお話をうかがった。
<インタビュー:本誌編集長>
――流水さんはミステリー作家として活躍されるとともに、「日本語の小説の英訳」を手掛けられているそうですね。こうした「日本語文学の英訳」というのは、「日本語を学んだ英語ネイティブ」がやるのが普通で、日本人が英語に訳すというのは珍しいと思います。
「ええ、おそらく私くらいではないでしょうか。具体的には、私が編集長を務める「TheBBB」というサイトにおいて、短編小説を中心に無料版と有料版の二種類の電子書籍を毎月発刊しています。「TheBBB」には現在174の国と地域からアクセスがあり、作家へのファンレターが英語で届くなど、大きな反響を呼んでいます」
――いったい、どんなきっかけで始めたのですか?
「2008年のことですが、カイ・チェンバレンというカナダ人のマンガ家と知り合いになり、一緒に作品を作ろうという話になったんです。私が英語でセリフを書き、彼がマンガにする。『テリヤキ・ガールズ』という作品です。これは多くの海外読者を獲得することに成功し、英語で発信することの魅力を初めて感じました。
そこで今度は「小説を」と思ったわけです。そして「TheBBB」を立ち上げたのが2012年のことです」
――ビジネス文書や日常会話と違い、小説に使われる英語は特殊なイメージがあり、ネイティブでないとなかなか難しいというイメージがあります。
「確かにそうです。漫画のセリフは日常会話が多いので比較的やりやすかったのですが、小説はやはり別。私も英語のペーパーバックを読んでいろいろと勉強したのですが、やはりスティーブン・キングのような世界でトップの作家は独特の文体を持っていて、とても真似できない。特に語彙力は圧倒的で、あそこまでのレベルに達するには、ネイティブでなくてはとても無理かもしれません。
ただ、そこで勇気を与えてくれたのが、実は村上春樹さんの小説の英訳版だったんです。もともとわかりやすい日本語で書かれているということもあって、英語版も実に平易でわかりやすい。それでも、ご存じのとおり村上さんの作品は世界的に人気がある。『この語彙レベルなら自分でも英訳できる』と思ったわけです」
――村上さんの小説が世界中に受け入れられているのは、そういう理由もあるのでしょうか。
「あると思いますね。考えてみれば、世界の英語話者20億人のうち、ネイティブは3億人程度。つまり残り17億人は非ネイティブなのです。仮にネイティブにバカにされても、非ネイティブに受ければいいじゃないか。そう考えれば一気にラクになれました。
実際、「TheBBB」の電子書籍、とくに有料版はフランスやドイツなど、ヨーロッパで人気です。日本人が英語に訳した小説をドイツ人やフランス人が読んでいるのですから、面白いですよね」
更新:10月14日 00:05