2019年04月17日 公開
最近、書店で韓国の小説の邦訳を見かけることが多くなった。その背景には、何があるのか? 韓国関連コンテンツ専門の出版社・クオンを創業し、経営している金承福氏に、話を聞いた。
テレビドラマ『冬のソナタ』が初めて日本で放送されたのが2003年。翌年頃から韓流ブームが巻き起こった。
しかし、金承福氏がクオンを創業した07年の時点では、日本の書店に韓国の小説はほとんど並んでいなかったという。
「1990年代から日韓文学者会議(現在は中国も含めた東アジア文学フォーラム)が開催されていて、作家同士の交流はありました。この会議に参加した韓国の作家の作品が日本語に訳されて文芸誌に掲載されることはありましたが、本になっているものは少なかったですね。
韓国語に訳されている日本の小説は当時から多かったので、韓国の作家はそれを読んで会議に参加するのですが、日本の作家は韓国の作家の作品を読むことができず、いつも困っていました。『あなたの作品を読んでいなくて申し訳ないのですが……』という言葉が枕詞のようになっていたくらいです。この会議のために、わざわざ仮訳をすることもありました」
また、数は少ないながらも日本語訳されていた作品も、広い読者層を獲得できてはいなかったという。
「南北分断をテーマにしたものや民族主義的なものが日本語訳されて、一部の政治に関心がある人たちに読まれていました。
けれども、人間の普遍的なものを描いていて、日本人にも共感できる作品もたくさんあるのに、それらが翻訳されていないのはもったいないと思っていました」
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更新:11月22日 00:05