2018年05月12日 公開
2023年03月16日 更新
頭の中がごちゃごちゃで良いアイデアが浮かばない、考えがまとまらない、集中できない……そんな状態では仕事が進まない。頭の中すなわち思考の整理も、ビジネスマンにとっては必須のスキルだ。コンサルタントとして活躍する問題解決のプロ・井上龍司氏に、思考整理のコツについてうかがった。<取材・構成=内埜さくら>
現代の仕事はマルチタスクが当たり前。通常業務の他に、飛び込みで依頼が複数舞い込んでくることも珍しくありません。
通常業務を迅速にこなしつつイレギュラー業務にも柔軟に対処するために必要な要素こそが、思考整理の技術。と言うと難しく感じるかもしれませんが、特別な才能やセンスは不要です。頭の中をスッキリと整え仕事の無駄を省き、ミスや見落としをせず短時間で仕上げる、思考整理のテクニックを身につけることは誰にでも可能です。
思考=頭の中で思い浮かべている考えを整理整頓するときのステップは、たった二つ。
1 無駄な情報を捨てる
2 残った情報を秩序立てて整える
どれだけ膨大な情報であろうと、大原則はこの二つ。「着なくなった洋服は捨てる」「本は本棚へ」と、部屋を整理するときにすることを、頭の中でも同様に実行することが、思考整理です。
情報を選り分けるときのポイントは、考えていることすべてを紙に書き出すこと。頭の中だけで整理しようとするのではなく、一度可視化するのです。パソコンにたとえるなら、情報の倉庫であるハードディスク内で直接作業をするのではなく、メモリ=情報を処理する作業テーブルにいったん乗せて整理するということ。その際に脳だけでなく紙を使うことで、その作業テーブルを拡大させるのです。
情報を書き出す際は、頭によぎった内容を「すぐに」「全て」、要不要を判断せずに書き留めましょう。そのときは不要と思い書かなくても、のちに必要な情報だったと気づき後悔する可能性があるからです。連想ゲーム的に浮かんでは消えていく思考を出し切らないと、不安なままで仕事への集中力を欠くこともあり得ます。
文章にまとめるのではなく、言葉を細かい単位に分けて書き留めることもポイントの一つ。たとえば「売上げ減少の原因は競合の進出」という思考であれば、「売上げ」「減少」「原因」……と細分化した単語だけの記載にします。思考を文章でつなげてしまうと、書き出しに悩んだり、どこに分類すればいいのか判断できなくなり、整理に手間取ります。思考を書き留めた紙は他人に見せる機会がないので、「キレイに書こう」と考えなくてよいのです。
なお、思考を整理していると、雑念が浮かんだり、考えなければならない事柄以外のことが気になってしまうことがあるかもしれません。そういったときは、納得するまでそちらの思考に思い切って専念してしまうのも一案です。無意識に浮かぶそういった思考は、多くの場合は現実逃避かもしれませんが、意外と重要だからこそ浮かんでいる可能性もあるからです。いずれにせよ、紙に書き出しておきましょう。
その結果、重要な事柄ではなかった、ということも多々あります。しかし、書き留めることで頭からいったん外しておけるので、安心感を得られます。
体調が悪かったり、嫌な出来事が頭から離れないことは、誰にでもあると思います。そのようなときは、潔く諦めて、考える行為から離れてしまうのも一つの手です。仕事は「考える」ことばかりではありません。たとえば経費精算など単純な作業をする時間に充てましょう。
そしてそのぶん、脳をフル回転させる業務は集中力がみなぎっている「ゴールデンタイム」にやると決め、時間帯を振り分けるのです。たとえば、1日の中で朝をゴールデンタイムと位置づけ、毎日、始業時刻の1時間前までに出社している方を時々見かけます。他の人が出社していないうえに電話も鳴らないため、仕事がはかどるからです。このように、自分にとって集中力が高まる時間を見つけておくことも、思考整理に役立ちます。
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更新:11月22日 00:05