2015年12月01日 公開
外資系コンサルティングファームで活躍する山口周氏。職業柄さまざまな情報を集めて思考する必要がある。また個人的にも、たくさんの本を読んでその中から気になる情報をストックしているという。その情報整理術について詳しくうかがった。<取材・構成=村上敬、写真撮影=まるやゆういち>
若手の頃から年に数百冊もの本を読んでいるという山口周氏。膨大な量の情報や本そのものを、どのように整理して仕事に活かしてきたのだろうか。
「読む本のジャンルはさまざまです。ビジネス書も読めば、小説も読む。ちなみに今日、電車の中で読んできたのはチャップリンの自伝です。私の中で自伝はビジネス書の位置づけ。私の専門は組織開発や人材育成なので、とてつもないことを成し遂げた人が何を考え、自らのキャリアをどう切り開いてきたのかということが仕事のヒントになるのです。
本を読んで気になるところがあればアンダーラインを引きます。どういうものに引くのか、ルールは決めていません。昆虫学者が新種の昆虫を発見したときのように、気づいたら手が出ていたという感じでしょうか。
アンダーラインを引いた箇所は、後日、メモに転記します。転記する習慣をつけたのは約十年前です。自分の本棚にある面白そうな本をひさしぶりに手に取ったら、ところどころにアンダーラインが引かれているのに、読み返すまで内容はすっかり忘れていたのです。
多くの本を読んで刺激を受けたはずなのに、それが自分の中に何も残っていなかったことに驚いて、それから心が動いた文章を転記することにしたのです。
気になったところは転記するので、本そのものはなるべく捨てるようにしています。残すのは、あとで参照すると確信を持っているものと、事典的な使い方をするものだけ。引っ越しのときにそれ以外のものを一気に捨てたら、従来の五分の一くらいになりました。それでも困ったことはないですよ。一年読まなかった本は五年読まないし、五年読まなかった本は一生読み返さないので。
本は、本棚を人文科学、社会科学、ビジネス書、小説の四つに分けて整理しています。本棚は自分の頭の中のアナロジーになっていて、本棚に置く本を時折入れ替えてあげないと、頭の中の情報もアップデートされません。
ジャンルに分けていると、『いまこの分野がいっぱいになっているからスペースを作ってあげよう』とか、『この分野は余裕があるから情報を追加しよう』と可視化できます」
山口氏は本を捨てるように、仕事の資料も次々に捨てている。「捨てることが最大の整理術」というが、支障はないのか。
「重要だと言われた資料も、躊躇せずにばっさり捨てます。今は大概のものは元のデータが保存されていますし、重要な資料は会社として保管されていることも多いものです。あ
とで必要になったらそのときだけ参照できればいい。使うかどうかわからないのに保管しておくのはムダです。
紙の資料を持たなくなれば、机も不要になります。私の場合、会社に人が増えて机が足りなくなり、『資料を持たないし、いつも動き回っているからいらないだろう』と判断されて以来、自分の机なしで仕事をしています。
バックパックにパソコンとノート、それに数冊の本を入れてさまよっていますが、仕事に支障はないです」
仕事のメモはA4サイズの方眼ノートに書いている。ポイントは、ページが切り取れるミシン目が入っていること。あとで切り取って案件ごとのファイルに入れることもできる。
更新:11月22日 00:05