2016年09月07日 公開
2023年05月16日 更新
思考が行き詰まったときや、新しい商品が必要なとき、大胆な発想の転換ができると、思いがけない角度から斬新なアイデアを生み出すことができる。それは一部のアイデアマンだけでなく、訓練次第で誰でも可能。ゼロベースで新たなアイデアを出す考え方についてうかがった。《取材・構成=杉山直隆》
世の中のスピードが速く、新しい商品や技術がすぐに陳腐化する時代。皆さんの会社でも、新しい商品や企画のアイデアを求められる場面が増えていることでしょう。そんな時、いくら考えても同じようなアイデアしか出てこない……と悩んでいる人も多いかもしれません。
柔軟にアイデアを生み出すためには、「ラテラルシンキング」が必要です。これは、どんな前提条件にも常識にも縛られずに、物事を異なる角度から見て考える思考法。ロジカルシンキングが一つの物事を深く垂直に考えていく思考法であるのに対し、横方向に、水平的に視点を広げようとすることから、「水平思考」とも呼ばれます。
この考え方の重要性は、誰でもなんとなくわかるはずです。しかし、実際にはできないという人がほとんどでしょう。
その理由は、多くのビジネスマンはロジカルシンキングしか使わないからです。仕事の八~九割は論理的に考えた方がうまくいきますから、普段はロジカルシンキングばかり使うのが当たり前です。しかし、使わない身体の機能は衰えていくように、使わない思考回路もまた衰えていきます。子供の発想が柔軟であるように、誰でも生まれつきラテラルシンキング的思考回路を持っていますが、普段使わないことで衰えてしまっているのです。
これを取り戻すためには、日頃からラテラルシンキングの思考回路を使うトレーニングをしておくことが大切です。その方法をいくつかお教えしましょう。これらは、思考に行き詰ったときの突破口としても使えるので、ぜひ覚えておいてください。
まず実践していただきたいのは、私が「NHK」と名づけたトレーニング法です。
NHKは国営放送(笑、正式には違いますが)なので、特定の企業の商品名を言うことができず、ニュースなどでは一般的な言葉で言い換えています。それと同じように、身の回りの商品やテレビで見た商品など、特定の商品名で呼んでいるものを、他の言葉で説明してみるのです。
たとえば、「セグウェイ」という言葉はなんと言い換えられるでしょうか。「立ち乗り自動走行車」「体の動きで操作する電気二輪車」「低速度スクーター」など、いろいろ考えられますね。
パッと言葉にできなかった人もいるかもしれませんが、それでOK。何度かやっていると、うまく言い表わせているかどうかはともかくとして、違う言葉で説明できるようになるでしょう。それこそが、思考が柔軟になってきた証拠です。特定の商品名だけでなく、外来語で呼んでいるものを別の言い方で言い換えることなども、良いトレーニングになります。
この「NHK」のような言い換えをさらに一歩進めると、新しいアイデアを生み出せます。できるだけたくさんの言葉に言い換えて、並べてみるのです。
たとえば、まったく新しいボールペンを考えるとしましょう。まずは、ボールペンをできるだけ多くの言葉に言い換えます。
たとえば、「半永久的に消えない文字を描く筆記用具」「プラスチックの棒状の道具」「入学祝いなどの贈り物」「かゆいところを掻くもの」など、さまざまな言い換え方ができるでしょう。
こうすると、「ボールペン」を多くの視点から眺めながら、新たなアイデアを考えることができます。
すると、「棒ではなく、球ではダメなのか」「掻くものなら、耳かきもくっつければいいのでは?」と、さまざまな発想が浮かんでくることでしょう。
一つのものを言い換えることは、そのものを「抽象化」する行為です。さまざまな言葉で抽象化すると、今まで見えていなかったその物の本質に気づきやすくなります。だから、新たな着想を得やすいのです。対象を抽象化することが大切です。
更新:11月22日 00:05