2018年02月17日 公開
2023年03月23日 更新
私が小学生にロジカルシンキングを教えるとき、よく出す例題があります。
「今日はとても暑い。だから半袖のTシャツを着る」
さて、これは論理的な文章でしょうか。
確かに筋は通るし、論理的です。ところが沖縄の人は、同じ文脈でこんな文章を作ります。
「今日はとても暑い。だから長袖を着る」
日差しが強い南の地域では、暑い日ほど日焼けを防ぐために長袖を着るという「前提」がある。だから沖縄の人には、これが論理的な文章になるわけです。
つまり、その考えが論理的であるかどうかは、「前提」によるということ。お互いが自分の価値観を前提に話しているうちは、いくらロジカルに話したところで理解し合えないし、問題解決もできません。その場その場で全員の前提を擦り合わせ、論理というルールを生かすための土俵作りをする。これがロジカルシンキングの第1ステップです。
この「前提」には、「ゴール」も含まれます。「そもそも何を目指すのか」という前提を確認しなければ、やはり誤解やすれ違いが生じます。
たとえば、あなたがコンサルタントで、クライアントから「会社の売上げを増やしたい」と相談されたとします。そこで、フレームワークを駆使して売上げアップの戦略を立て、実行した結果、売上げを伸ばすことができました。
ところがクライアントから、「売上げは増えたが、コストも増えたじゃないか」とクレームが入りました。つまり、「売上げを増やしたい」という言葉の裏には「コストは上げずに」という前提が隠れていたということ。すると、そもそもクライアントが目指すゴールは「売上げを増やす」ではなく「利益を増やす」ではないのか、あるいは「売上げも利益も増やす」ではないのか、といった可能性が出てきます。
また、「売上げを増やしたい」という要望に対し、「ブランドを一新しましょう」と提案したら、「今の社長は創業家でブランドに強いこだわりがあるので、そこは変えられない」と拒否された、といったケースもよくあります。このように、ビジネスでは「相手は言葉にしないが、実は譲れない感情や社内的な事情」を“隠れた前提”として持っているケースが多いもの。だからこそ、まずは「ゴールを含む前提の共有」が欠かせないのです。
加えてもう一つ、やるべきことがあります。それは「例外」の把握です。
先ほどの「暑い日に何を着るか」という問題なら、東京に住んでいる人は「Tシャツ」「タンクトップ」「短パン」といった回答が浮かぶでしょう。そこで「例外はないのか」と考えてみるのです。「東京より日差しが強い地域ならどうだろう?」「東京より湿度が高い地域ならどうだろう?」など、さまざまな例外が考えられるはずです。
例外を考えると、第1ステップで「隠れた前提」の見落としがないかのチェックにもなります。この「例外の把握」がロジカルシンキングの第2ステップです。
これらのステップで、論理的な思考法やフレームワークを使うのは非常に有効です。
例外を洗い出すために、「MECE(ミッシー)」で考え漏れや抜けがないかをチェックしたり、「帰納法」を使って「過去にはこんな例外があったから、今回も同じような例外があるかもしれない」と類推したりできます。また、「Bad Case Thinking」といって、わざと意地悪な立場から反論を考えるという手法を使い、前提を疑ってみることもできます。
フレームワークという「思考の型」として残っているものは、多くの人が納得した実績があり、それだけ精度の高い仮説を立てられるツールだということ。うまく使いこなして、その場に関わる人たちが納得感を得られる仮説が立てば、意思決定もしやすくなり、素早く実行に移れます。
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更新:11月22日 00:05