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急増する「シニア社員」問題への処方箋

2018年01月31日 公開
2018年01月31日 更新

見波利幸(シニア産業カウンセラー)

 

個人と仕事の連動が「役割意識」を育てる

 さて「消極的なメンタリティ」と言いましたが、その消極性の萌芽は、現時点でのメンタルの中にすでにあります。前述したとおり、お荷物社員の6タイプに共通するのは「自分の役割」を正しく認識していないこと。

 今の社会は基本的に「上が管理し、下が従う」システムなので、各自が自発的に考える姿勢が薄れがち。その意味で、こうした状態に陥る可能性はどの世代にもあるのです。

 それを防ぐには、自分ならではの「仕事の価値観」を今から確立しておくことです。上司が「管理」をしなくなる社会に備えるうえでもこの姿勢は不可欠。これからは、社員一人ひとりが自分のミッションを持つことが求められるでしょう。

 では具体的に何をすべきかというと、一見遠回りのようですが、「個人の幸せと仕事とを連動させる」、という心の作業を行なうことです。

 人は得てして「職場」と「プライベート」を分け、どちらかだけに幸せを見出そうとします。その結果、家庭を顧みなかったり、逆にプライベート偏重で職務怠慢になったり……といったアンバランスが生まれます。

 人の幸福はもっとトータルなもの。仕事で社会的責任を果たし、その流れの先で自分自身も幸せになるのが理想的ではないでしょうか。この考え方に立つことで、初めて自分の仕事の価値を高める意欲が湧いてきます。職場・家庭・友人関係、すべての社会における自分の役割を考えられるようになるのです。

 個人の幸福と、社会人としての幸福を重ねる道筋は百人百様でしょう。しかしこれを考えることが、歳を重ねても生き生きと働くための最良の方策です。自らの人生をトータルに見据えながら、ぜひ新しいトライへと踏み出してください。

≪『THE21』2018年1月号より≫
≪取材・構成:林 加愛≫

著者紹介

見波 利幸(みなみ・としゆき)

〔一社〕日本メンタルヘルス講師認定協会代表理事

1961年生まれ。大学卒業後、外資系コンピュータメーカーなどを経て、98年野村総合研究所に入社。メンタルヘルスの黎明期より管理職向け1日研修を提唱するなど、日本のメンタルヘルス研修の草分け的存在。現在はエディフィストラーニング㈱(キヤノングループ)の主席研究員として、研修や講演、カウンセリングや職場復帰支援を行なう。著書に、『劣化するシニア社員』(日経プレミアシリーズ)など。

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