2017年08月31日 公開
2022年10月25日 更新
――印刷のラクスル、運送のハコベル(ラクスル同様、ドライバーの空き時間を利用したシェアリングエコノミーサービス)など、サービス自体は海外展開されていますが、松本さん自身はシリコンバレーで一旗あげようとか、日本に見切りをつけて海外市場を求めようといったお考えはないのですか?
松本 私は絶対に日本でやります。なぜなら、日本が世界で最も「成功しやすい場所」だからです。海外で勝負するのは、本当に大変です。たとえば先日、インドのスタートアップのCEO(27歳)と話をしていたとき、ハコベルの同業他社数の話になりました。「日本ではこういったサービスを展開しているのはハコベルだけだけど、インドはどうなの?」と言うと、おそるべき返答がありました。「インドでは、まったく同じ内容だと106社、近しい領域だと1,500社ある」というのです。
これが世界です。中国では何万人もの天才たちが人生をかけてビジネスをやっていますし、シリコンバレーでは世界で最も優秀な人たちが集まって起業し、しのぎを削っています。「競争せずに勝つ」がコンセプトの私からすれば、そうしたところで戦うのは絶対にありえません(笑)
日本は、変革者やチャレンジャーが極端に少ない。それは一方で憂慮すべきことですが、私や当社、その他、挑戦しようとする人々にとっては無限の可能性があると言えます。だから今後も、この日本で、新たな業界に踏み込んでいくつもりです。
――今、変革しようとしている分野はどんなところか、教えていただけますか?
松本 企業に関することで言えば、なんといっても人事の高齢化が大きな問題だと捉えています。そのために私は指名委員会を強制化するべきだと考えており、それを国に対しても提言しています。
どういうことかと言うと、多くの企業では社長が人事権を持っているわけですが、これだと社内政治が発生します。社内政治は何も生み出しません。しかし、社長は過去に頑張った人や自分の気に入っている部下を評価しますから、社長が人事権を持っている以上、社内政治はなくならないでしょう。
そこで、指名委員会です。指名委員会というのは、社長を指名する第三者委員会のことです。先だって東証で「社外取締役を2名以上に」というガバナンスコードができ、これも悪くはないのですが、実効性はそう高くありません。なぜなら社外取締役には、友達を呼んでしまいがちだからです。
本当に企業を前進させるトップを選ぶのなら、指名委員会など第三者が社長や役員を決めたほうがいい。こうなると社長レースが一変します。社長に気に入られることではなく、新しいことをして、会社を前進させようとします。70歳の社長が60歳の社長を指名していては、企業も日本も変われません。
今後も、日本に数ある「課題を抱えた仕組み」に働きかけていきたいと思っています。「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」。このビジョンを掲げている以上、ラクスルの仕事がなくなることはないでしょう。
《写真撮影:山口結子》
更新:11月24日 00:05