2017年08月31日 公開
2022年10月25日 更新
――50年前、100年前にできたビジネスモデルや産業を変革する主役は、若者であるということですね。
松本 企業のITシステムひとつとっても、20年も前に投資して作られた基幹システムに今、手を焼いている会社は少なくないはず。今となっては非効率のかたまりだから、当然です。でも、「ずっとこれでやってきた」「自分たちはこのやり方なんだ」という歴史を背負ってしまっているため、簡単には捨てられないし、変えられない。
キツい言い方になりますが、これは会社の社長や国のリーダーについても同じことが言えます。日本の社長の平均年齢は昨年、61.9歳。少なくとも5年連続で上昇しています。ちなみに30代以下の社長の割合は5年連続で減少しています。しかし、60代の社長が過去の10~30年をどれだけ上手く舵取りできていたとしても、次の10~30年を描き導けるかはまったく別の話です。
今の時代、60代の人々もユーザーとしての行動は変わっているはず。スマホもタブレットも使うでしょう。しかし、経営者としてはなかなかそうできていないのが現実です。産業の仕組みそのものを変えていくためには、百戦錬磨の60代ではなく、デジタルネイティブの30代、あるいは20代でなければ実現できないと、私は思っています。
私たち30代の“過去”は、ミクシィであり、FBであり、セカンドライフです。今、迎えている未来はこうした過去の先にあるものなので、自分たちの世代にしか描けない部分は多くあると思います。
――そのとおり、と膝を打つ人が多い一方で、当事者の60代や50代の人たちからは悲鳴や怒りの声が聞こえてきそうです。普段、そうした世代の人々とお話しされるときは、どのように表現されているのですか?
松本 このまま話しています。経営者であっても、大企業トップ相手のセミナーでも、同じように話します。生意気だと思われているでしょうが、皆さん行き詰まりを感じているのは事実なので、多くの方はこれが現実であることを受け入れられます。
現在、会社では、過去頑張った人が功労賞的に上に行くところが多いと思います。しかし、50代、60代にならないと経営できないなどという事実はありませんから、これがベストのリーダーの選び方とは言えないはずです。むしろ、年齢を重ねすぎては経営できなくなるのが、今という時代だと思います。
ITビッグ5、すなわちマイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグル、そしてフェイスブック、5社の時価総額を足し合わせると英国のGDPをも超えるという報道は耳に新しいですが、これらの企業の社長を見てみると、30~40代は当たり前、一番年上でも57歳です。前述のとおり、日本の企業トップの平均年齢は60代。70代以上も増加しています。これで20年後が描けるでしょうか? 渋沢栄一が33歳で第一銀行の頭取になったように、かつては日本も30代が活躍していました。
一概に年齢ですべてが決まるなどとは言いませんし、年を重ねても若い発想を持っているかたはたくさんいます。しかしそれ以前に、「新しい時代は若い人が創る」というのは、ごく自然なことではないでしょうか。若い人たちが自分の感性で新しい世界を描き、創っていかないと、今きしみを生じている産業や組織は、音を立てて崩れてしまうかもしれません。日本は今、そんな危機的状況にあるのです。
だからラクスルは、その一端を担うため、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を掲げ、新しい世界観やテクノロジーの浸透、人事の仕組み、ITの仕組み、ビジネスの仕組みなど、あらゆる構造を変えていこうとしています。私たちは、義務感を持ってそこに取り組んでいます。
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更新:11月24日 00:05