2017年06月27日 公開
2017年12月18日 更新
――今年から採用を大幅に増やしたということですが、ご苦労や秘訣はありますか?
瀧口 去年までは、採用担当を専任で設けていませんでした。しかしこれから成長を加速させていく中で、すべての原動力となるチーム作りに注力するため、年始から採用チームを作って活動を開始しました。採用についても、やはり「当たり前のことをどれだけ愚直に積み重ねられるか」が明暗を分けるのだと考えています。いいメンバーが集まっている会社は、たとえば採用ページを更新する頻度一つとっても非常に高い。一つ一つは細かいことかもしれませんが、それを丁寧に積み重ねているのです。
世界には年間1000人単位で人を増やし成長している企業もあるわけですし、これまで以上に目線を高くして、いいメンバーを採用していこうと思っています。
――今後の成長のため、経営者として大切にしていこうと思われることは?
瀧口 ビジネスを構成するのはヒト・モノ・カネだと言われますが、順番もまさしくこのとおり、大切だと思っています。先ほどもお話ししましたが、まずはいいメンバーを集めること。そしてその人たちがモチベーション高く働いてくれる会社であることをめざします。
次にモノ、つまりいいプロダクトを作っていく。私たちが参入する前、ネット医療業界はいいエンジニアが集まりにくく、いいプロダクトができにくいのが実情でした。しかし今は変わってきました。優秀な人材がどんどん入ってきています。
優れたメンバーを集め、優れたビジネスモデルを実行する。これも当たり前のことですが、やはり大切だと思います。エンジニアの人が、「ゲーム開発も面白かったけれど、メドレーの理念を知って働いてみたいなと思った」とか「子供の世代に残せる仕事をしてみたいと思った」と言って入社してくれるのは素直に嬉しいですし、そう言って参画してくれる仲間たちを心強く思います。
最後にカネ、つまり資本配分を規律をもって行なう。会社のお金の使い方には内部投資と外部投資含めて様々な選択肢がありますので、しっかりと短期、長期の時間軸で評価したうえで判断することが大切です。そして、これは会社の規模が大きくなるにつれて重要性を増していくことなのだなと感じています。なので自分でも勉強したり、機関投資家の方などにお話を伺ったり、役員陣でディスカッションする際に視点として取り入れたりしていますね。
――人材を重んじられるのは、最初からそうだったのですか?
瀧口 実はそうではなくて、私が人材の大切さに気づいたのは、最近なのです。30代になってから、変化があったように感じました。20代の頃は、「ビジネスモデルとプロダクトの時代」。優れたビジネスモデルと優れたプロダクトがあれば、それだけで突き進めると思っていました。私は社長という立場でありながら、従業員に対して「お互いプロなんだから、お互い頑張るのは当たり前」といったスタンスでいたように思います。
しかし、会社が拡大し、旧友や同世代のメンバーが増えていくたびに、そうではないと思うようになりました。当社の平均年齢は30歳。まさに私と同年代ですし、中には親の顔も知っているようなかつての同級生もいます。そのような環境で仕事をしていると、「お互いプロだからやることをやろう」という以上に、「『この仲間たちとならなんでも乗り越え、ゴールにたどりつけるはず』、そう思えるメンバーが重要だ」という思いが強くなったのです。今では社員と、職場で、居酒屋で(笑)、想いを伝え合う時間を大切にしています。
ただの仲良しグループということではなくて、理念を共有し、お互いに尊敬できる能力を持った人たちが集まったチームでありたい。今は、たくさんの諸先輩方がおっしゃるところの「企業は人だ」の意味がわかるようになりました。
――新しいサービスなどは考えられているのでしょうか?
瀧口 今、ようやく各サービスの最低限の輪郭や機能が整ってきたおかげで、研究開発を進められるようになってきました。たとえば「頭痛」一つとっても、細分化された情報から構築されます。頭痛というものを分解すると、まずは「頭」という部位と「痛み」という現象に分けられます。そこからさらに細分化していくと、「頭」にはいろいろな部位があるし、「痛み」にもさまざまな痛みがあります。これらをどんどん細かく分けて整理し、蓄積してきた情報が、かなりの量になってきました。そこから生まれた新しいサービスが、症状から可能性の高い病気を絞り込み、対応する医療機関を検索できる「症状チェッカー」です。
今後も膨大で細かなデータを集めることで、今までは実現できなかったサービスを提供していけると思います。
(参考)「症状チェッカー」https://medley.life/symptoms/
――10年後、日本の医療はどのようになっていると思いますか。
瀧口 病気の診断がついたら、「あとはMEDLEYを見てください」と医師が言うようになっている。限られた時間の中での医師と患者のコミュニケーションが、今よりも深いものになると思います。既にそういったクリニックはありますし、これからもっと増えるはずです。医療消費者は、自分や家族の病気について、ある程度まではネットで調べ、信頼できる情報を得られるのが当たり前になるでしょう。
そして、信頼できる情報を得た後の医療にアクセスする方法も大きく変わるでしょう。現在は、わざわざ病院に行かなくもいいけれど病院に行って待っている方、もしくは病院に行くべきだが放置してしまっている方などがたくさんいます。このような人たちは当たり前のように「CLINICS」を利用して、オンライン診療を受けているようになっていると思います。
医療消費者の医療に関する知識を底上げし、今よりもっと主体的に医療を受けられるようにする。また、医療機関と医療消費者との距離を近づけることで、そのような主体的な医療との関わりを実現する。医療は日本中あまねく行なわれているので、一度には成し得ないことですが、一歩一歩踏み固めていくことで、そうした未来を実現したいと思います。
また、個人的には、世界的な大きな流れとして、医師が介在しないセルフメディケーションを活用する方向に向かっていくのかなと思います。現在は医師や医療機関が不足していて十分な医療が受けられないような場所だとしても、自動診断技術などの進歩により、一定レベルの診断や治療が可能になっていくでしょう。「MEDLEY」の病気の情報や「症状チェッカー」、また遠隔診療のシステムが、このような世界でも活用できたらと思っています。
《写真撮影:山口結子》
更新:11月22日 00:05