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医療×ITで、「納得できる医療」の実現をめざす

2017年06月27日 公開
2017年12月18日 更新

瀧口浩平(メドレー代表取締役社長)

500人を超える医師たちがつくる
オンライン医療事典

――そうした課題を解決するため、起業後に生まれたサービスはどんなものですか。

瀧口 創業して最初に医療介護の求人サイト「ジョブメドレー」を開始しました。その後は、2015年にオンライン医療事典「MEDLEY」、2016年にオンライン診療アプリ「CLINICS(クリニクス)」をリリースしています。また、2015年にグリー株式会社から、口コミで探せる介護施設の検索サイト「介護のほんね」の事業譲渡を受けました。本当はもっと早くから広く医療消費者に向けたサービスをやりたかったのですが、その基盤を作るための事業の構築と安定化に思いのほか時間がかかったというのが正直なところです。

――「ジョブメドレー」を開始したきっかけはなんだったのでしょう?

瀧口 創業前後、医療の実態を把握するために病院で働かせてもらいながら、各地の医療事情を調査しました。すると、特に地方では、医療現場の人材不足が深刻な問題だということがわかりました。正確に言えば、資格を持っている方など医療現場で働ける「人材はいる」のですが、「現場と人材が出会えていない」状態だったのです。ここをマッチングをするのが「ジョブメドレー」で、ある病院では「ジョブメドレー」をきっかけに24時間稼働が実現したというような事例も生まれました。いまでは約10万件の事業所が登録し求人を掲載するサービスに成長していて、これは医療介護業界でトップクラスです。

――短期間で業界トップクラスまで来られた理由はどこにあったのでしょうか。

瀧口 「ジョブメドレー」に関して言えば、事業所様からいただく費用が業界平均の5~7割と安いことが一つの大きな理由です。求職者から見れば求人情報は“量が価値”ですから、価格を下げ、その分、求人掲載数を増やすことに注力しました。もちろん安い料金でも高品質のサービスを実現できるよう、社内のオペレーションの効率化を徹底し、求職者・事業所に向けたサービス品質にもこだわりました。求人サイトというサービスの性質を考えれば当たり前のことですが、これだけ安いにも関わらず採用に向けたサポートが手厚いところは他になく、掲載数は増加していきました。
経営してきてつくづく思うのは、「当たり前のことをどれだけ愚直に積み重ねられるか」が明暗を分けるということです。当然、最初は赤字で、累積赤字は10億円ほどまで至りましたが、今は他事業を支える大黒柱です。不安がなかったと言えば嘘になりますが、それでもやっぱり、「当たり前のこと」をきちんとやり続けられていたら結果はついてくるのだと、今は実感しています。

――個人向けサービスであるオンライン医療事典「MEDLEY」について教えてください。

瀧口 「MEDLEY」は、500人以上の医師たちがつくるオンライン医療事典です。1400以上の病気情報、約3万の医薬品、さらに16万件近い医療機関の情報など、医療ヘルスケアにまつわる情報が集約されています。掲載情報は医師たちにより日々、改訂されており、いつでも最新の情報に手が届く状態になっています。こうして実現された情報の正しさやわかりやすさが評価され、既に100以上の病院が、患者さんへの説明に「MEDLEY」の情報を活用しています。
自分や家族の体調が悪いとき、みなさんネットで検索してみたことがあると思います。しかしネットにはさまざまな情報が入り乱れているので、こと医療に関することとなれば、たまたま出合った情報を頭から鵜呑みにするのは非常に危険です。しなくていい心配をしてしまうこともあるでしょう。そんなとき、「MEDLEY」ならば信頼できる、という拠り所になれるよう、常に進化し続ける事典を目指しています。

――心強いサービスですね。メディア事業は収益化しづらいという見方もありますが、ビジネスとして成功させる目処はどう立てられたのですか?

瀧口 高校3年生で初めて起業したときから、「自分ができることの中に、お金が払われるものとそうでないものがある」ということはわかっていました。何せ高校生ですから、「こんなサービスがあったら便利だろう!」と思って開発して提案したものが、「そんなものはいいから、もっとこういうことやってよ!」と言われてしまう経験もありました。
今でもこの経験は活きていて、「医療ヘルスケア分野の課題を解決する」というミッションは常に掲げていても、「ではどんな商品を提供するか」という点については、営業しながら決めている部分があります。つまり、「根底の課題さえ見誤っていなければ、商品は相手が求めるものを聞きながら作ればいい」と。
自分1人で考えるよりも、「こんなことに困っている」「こんなものが欲しい」と率直に語られることの中にこそ正解はあるので、このやり方で行けば失敗することはないだろう、と考えています。「MEDLEY」も、患者さんと医師の両方のニーズを考えて生まれたサイトです。

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著者紹介

瀧口浩平(たきぐち・こうへい)

[株]メドレー代表取締役社長

1984年生まれ。2002年、東京学芸大学附属高校在学時に米国法人Gemeinschaft,Inc.を創業。国内外の事業会社および調査会社・コンサルティング会社の依頼を受けての市場調査/統計調査、新商品のコンセプト開発や市場参入の支援に携わる。個人的な医療体験をきっかけに医療の在り方への課題意識を強め、事業譲渡後、2009年6月、メドレーを創業。最高経営責任者。

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