2016年10月22日 公開
2023年05月16日 更新
さらに、コミュニケーションのレベルだけでなく、本当の意味での「得意技」も大事だと夏野氏はいう。
夏野 もう少し長いレンジで、10年、20年とこの世界で生きていくことを考えてみましょう。そうなると、本当の意味の得意技を作ったほうがいい。
今、お二人は……。
太野・奈良 18歳です。(※取材当時)
夏野 一般に、25歳くらいになるとアイドルとして仕事をしていくのは難しくなるとされています。その時に、料理がすごくうまいとか、ピアノがプロ並みに弾けるとか。20歳を過ぎてからなら、ワインエキスパートの資格をとるとか。そういった得意技があると強い。その場のコミュニケーション用の得意技だけでなくて、本当の意味での得意技も持っておくということ。
たとえば中江有里さんは女優なのに読書がとても好きで、今や書評家として認められている。「とくダネ!」のコメンテーターに呼ばれるのも、女優さんとしてというよりは書評家としての評価なわけです。
太野 なるほど。特技ってことですよね。
夏野 特技と言ってもいいけど、上手、下手よりも「好きなことを見つける」という考え方のほうがいい。無理に「これなら受けるかも」「珍しい特技を」なんて考えて、好きでもないことを勉強しても身が入らないですから。もともと好きなことを深めるほうがいい。ちなみに好きなことはありますか?
奈良 好きなこと……(考えこむ)。
太野 私は8年間クラシックバレエをしていました。
夏野 いいですね。今でも好き?
太野 好きですね。観るのも、踊るのも好きです。
夏野 それなら、たとえばね。バレエにちょっと興味がある、観てみたいという人は多い。でも、バレエを観るって、普通の人にとってはすごく大変なことなんですよ。今でもバレエのDVDはいっぱい出ているけれども、どれをどう観たらいいのかもわからない。そこで、おすすめのDVDを紹介しながら「シルヴィ・ギエムはどこがどうすごいのか」を話せたら、ちょっとバレエを見てみたい人にとっては興味深いでしょう。「NGT48の、バレエにやたら詳しいあの子」と覚えてもらえる。
太野 いいですね、それ!
夏野 そういうふうに自分の得意なところをどんどん出していく。今までの日本人は「能ある鷹は爪を隠す」だった。でも、爪は隠していると尖らないんだよ。爪を尖らすためには使わないと。奈良さんはどうですか?
奈良 私、中学生のときに剣道をやってました。
夏野 剣道、それはいい。まず、競技団体のイメージキャラクターの仕事の声がかかるかもしれない。それと、剣道マンガってたくさんあるじゃないですか。『龍-RON-』(村上もとか、小学館)なんてめちゃくちゃ面白い。そこで、経験者の目で剣道マンガを読んで、感想を発信していったらどうだろう。剣道をやっている人だけでなく、作品のファンも「こんなアイドルがいるんだ」とあなたのことを知ってくれるでしょう。
奈良 それはできたら面白そうです。
太野 やっぱり、好きなことから掘り下げていくんですね。
夏野 そこが大事。好きだったら苦にならない。やらなければいけないことは仕事で沢山あります。ダンスの振り付けや、台詞は憶えなければいけないでしょう。それはそれとして、自分を表現するのには好きなことをするのが一番いい。無理をするのではなくて、自分をそのまま出していく。それが個性になると思うんです。
太野 好きなことを極める。
夏野 極める、というと努力する感じがするでしょ。好きなことだからやってて苦になりません、ということを見つけたらいい。
太野 なるほど。極めるというと、「やらなければ」になってしまいますね。
夏野 受験勉強だって、ある一定のレベルを超えて高得点を取れる人は楽しくて仕方がない。ゲームになってるんだよ。極めるにしても、極めたくて極めるんじゃなくて、好きだからやってたら極まっちゃった、ということなんです。
今はインターネットの時代なので、好きなことを外に向って発信すると必ずフィードバックがある。それが炎上という形をとることだってあります。でも、好きなことについて発言していれば、大方の場合は「私も好きなんです」とか「ぼくも大好きなんですよね」「私はこっちがお勧めです」といったポジティブな反応が返ってくる。それをどんどんやったら、人のアイデアも貰えるようになるということ。だからどんどん極まって行っちゃう。
更新:11月22日 00:05