2016年08月31日 公開
2023年01月16日 更新
思考力について書かれた「名著」と呼ばれるビジネス書は多数ある。しかし、それらすべてを読むのは大変だし、「難しそう」と敬遠している人もいるかもしれない。そこで、読書家としても名高い経営コンサルタント・藤井孝一氏に、とくにお勧めの名著をピックアップしていただいた。まずは、ここで紹介している本から読んでみてはいかがだろうか。
(1)大前研一著『[新装版]企業参謀』プレジデント社
大前研一氏による名著中の名著。「ロジカルシンキング」という言葉が普及するはるか前の1970年代に、ここまで明確な「考え方の技術」が示されていることに驚かされます。
大前氏が説くのは、人が日頃あいまいな基準で答えを出している問題について、要素分解によって、体系的に、根拠を持って判断するノウハウ。「パッケージツアーは高いか、安いか」という身近なケースを皮切りに、さまざまな事例が挙げられています。
この本に則れば、ビジネスシーンにおける議論が、俄然、精度を増すでしょう。たとえば売上げアップの方法を議論するとき、各々がなんとなく良いと思う案を出しあうだけでは、正しい判断はできません。本書に書かれているように、「売上げ」を「シェア」と「マーケットサイズ」という要素に分解し、売り手の工夫で拡張し得る「シェア」に焦点を当てよう、といった具合に考えていけば、効率的かつ論理的にやるべきことが判断できます。最適解に早くたどりつく道筋を我々に教えてくれる1冊です。
(2)守屋 淳著『最高の戦略教科書 孫子』日本経済新聞出版社
『孫子』は、2,500年も前の書物でありながら、現代にも適用できる普遍性を備えています。著名な経営者たちがこぞって愛読書に挙げていることからも、この兵法書がビジネスの戦略を学ぶうえできわめて有用であることがわかるでしょう。しかし、原書に当たるとなると、現代日本人には難解であることもまた事実。そこで役に立つのが、一昨年にベストセラーとなった本書です。
前半では『孫子』の思想の骨子が紹介されます。有名な「彼を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」をはじめ、数々の言葉が現代語訳とともに紹介され、それを「どう読むべきか」が解説されています。この解説があることで、ビジネスと戦争とを同一に語ることにリアリティを覚えられない読者にも、『孫子』を読むことの意義が伝わるでしょう。そして後半では、現代のビジネスマンが『孫子』を「どう応用すべきか」が解説されています。
全編を通して、語り口が非常に平易で読みやすい。基礎を理解し、実用にまでつなげられる、優れた入門書と言えるでしょう。
(3)アレックス・オスターワルダー+イヴ・ピニュール著
45カ国の470人の実践者 共著/小山龍介訳
『ビジネスモデル・ジェネレーション』翔泳社
あらゆる商品が飽和している現代では、「何を売るか」よりも「どう売るか」が勝負。したがって、ビジネスモデルを構築する思考力はビジネスマンにとって必須と言えますが、会議の場で目覚ましいアイデアが出ることは、実際のところ少ないでしょう。
本書は、その壁を打破する手法を我々に示してくれます。ビジネスモデルを「顧客」「与える価値」「販売チャネル」などの9要素に分解したフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」がそれです。現時点でのビジネスをこのフレームワークに書き込み、いずれかの要素に変更を加えると、新たなビジネスモデルが見えてくる、というもの。ビジネスモデルを構築するというと、とかく大変な仕事だと思いがちですが、小さなアレンジを加えるだけで新規性あふれるビジネスモデルが生み出せることに気がつくはずです。
「ビジネスモデルキャンバス」は、皆で囲んで話しあいながら使えるよう作られているのも特長。一人のカリスマが主導するのではなく、多数の知恵が集まってこそ、良いアイデアが生まれる、という思想も、本書の力強いメッセージです。
更新:11月23日 00:05