2016年08月31日 公開
2023年01月16日 更新
(7)ジェームズ・W・ヤング著/今井茂雄訳
『アイデアのつくり方』CCCメディアハウス
発想法の指南書としては「古典」と言える1冊。100ページ程度のわずかな紙数ですが、その中でアイデア創出の本質が明確に示されています。世の中に数々の「発想本」がひしめく中で、本書の説得力はいまだに衰えていません。
著者によると、アイデアの生まれるプロセスには「資料の収集」「資料の加工」「孵化」「アイデアの実際上の誕生」「具体化」という5 段階があります。そして、インプットが何よりも不可欠であり、頭の中に数多くの情報や知識を蓄積せよと言います。
新しいアイデアは、決してゼロから生まれるものではありません。既存のアイデアをアレンジする、または既存の複数のアイデアを組み合わせる、といった方法を通してこそ、新たなひらめきが降りてくる。多くの本や人に触れることの大切さや、自らが培ってきた経験や知識を振り返ることの重要性に気づかせてくれる本でもあります。
(8)チップ・ハース+ダン・ハース共著/飯岡美紀訳
『アイデアのちから』日経BP社
(7)がアイデア創出に有効なのに対して、こちらはアイデアの検討やブラッシュアップに役立つ本です。
本書には、人を動かす力を持つアイデアの六つの条件が挙げられています。「単純明快である」「意外性がある」「具体的である」「信頼性がある」「感情に訴える」「物語性」の六つです。これらの条件を満たしたアイデアが、ヒットにつながるというわけです。
この六つの条件は、アイデアの力を確認するためのチェックリストとして使えます。六つの条件を記した採点表を用意し、「このアイデアの『単純明快さ』は8点」などと採点するのです。「○・×」よりも数字で採点するのがお勧め。6項目それぞれを10段階評価で採点し、60点満点で点数化することで、そのアイデアを採用するかどうかを判断する基準となる点数を決めやすくなります。
(9)バーバラ・ミント著
グロービス・マネジメント・インスティテュート監修/山﨑康司訳
『[新版]考える技術・書く技術』ダイヤモンド社
良い文章を書くには、その基盤となる思考が破綻なく組み上げられていなくてはならない、という考えのもとに書かれた、思考法と文章技術の指南書。ロジカルシンキングのバイブルとも言える名著です。
確かな論理を組み上げる方法として著者が提唱するのが「ピラミッド構造」。ある事象について「なぜ」と問いかけることを何段階にもわたって行なうことで、思考がピラミッド状に裾野を広げていき、細かい要素まで検討・分析できる。それが論理に正確さと緻密さをもたらし、言葉に説得力を持たせるのです。
本書で解説されているノウハウを身につければ、強靭な思考力と、それを表現する文章技術が磨かれるでしょう。
(10)ジーン・ゼラズニー著/数江良一・菅野誠二・大崎朋子共訳
『マッキンゼー流 図解の技術』東洋経済新報社
考えていることを他の人と共有するときに欠かせないのが図解です。文章だけでは伝わりにくい話でも、図解にすれば伝わりやすい。その効果は、ビジネスマンなら幾度も実感していることでしょう。しかし、図解の技術を存分に使いこなせている人は、決して多くはありません。
この本は、マッキンゼーに長年在籍し、図解のプロとして活躍してきた著者が、その技術の一端をわかりやすく伝授したもの。基礎となる五つのフォーマットを皮切りに、いくつもの例が紹介されています。どのような場面でどんなフォーマットを使えばいいかについてもわかりやすく解説されているので、すぐに実践できるのが嬉しいところ。
とくに、図解は複雑にしないことが重要だということは、ぜひ心に留めていただきたいと思います。カッコいい図を書こうとして、煩雑になったり、事実とズレたりしては、本末転倒。本書で紹介されているようなシンプルな図解を身につけたいところです。
《取材・構成:林 加愛》
《『THE21』2016年8月号より》
更新:11月23日 00:05